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遊者ぺんぎん物語

作者: ぺんぎん3号

僕は平凡な両親の元に生まれ、普通のペンギンとして育った。


これからも退屈な日々が続くものだと疑わなかったある日のこと、突然冒険に出ることになったんだ。

なんと世界を救う遊者ゆうしゃに選ばれたのだ。


旅先では仲間たちの助けを借りながら、数々のトラブルを乗り越えてきた。


誰も足を踏み入れたことのない洞窟にも果敢に挑む。地下30階に眠る伝説の剣を手に入れるために。


しかし、その剣を守るドラゴンは思いのほか強敵だった。


僕は命を落としてしまう…

いや、遊者は何度でも復活できるのだ!

次こそは絶対に勝つ!



壮絶な戦いの末、ついに伝説の剣を手に入れたんだ。


そして今、僕は大魔王ラスボースと対峙している。


外は滝のような雨。

つらい旅も終わりが見えてきた時、激しい稲光とともに雷鳴が鳴り響く。


次の瞬間、すべてが暗闇に包まれた。



………?



停電だ!




部屋に明かりが戻ると、ゲームはオープニング画面に戻っていた。


セーブデータは綺麗に消えてしまっていた。


再び一からのスタート。

徹夜で攻略した洞窟も、何度も挑戦して倒したドラゴンも、すべてが水の泡。


おわり




いや終わらせない!


◆◆


何もかも忘れてしまった遊者ぺんぎんは、小さな村で平和に暮らしていた。


かつての冒険の記憶はセーブデータと共に失われ、ただの日常が続く日々。


そんなある日、村が魔物に襲われた。


魔物の襲撃で村は混乱に陥るが、ぺんぎんと村人たちは協力して何とか窮地を脱する。しかし、再び魔物が襲ってくるかもしれないという恐怖が村人たちを脅かしていた。


あの日のように、僕の大好きな村が、家族が、友達が…嫌だ!

その時、ぺんぎんの中で何かが蘇ってきた。


そうだ、僕は遊者だ!


現実から逃げていても何も変わらない。僕は村の長老からペンギン族に伝わる秘められた力を解放する方法を教わる。


「魔王の持つ時を操るチカラは、すべてを元に戻すチカラ。だが、過ぎ去った時は変えてはいけない。未来を手にするためには過去のあやまちを含めてすべてを受け入れる勇気が必要なのじゃ。ペンギン族は空を飛ぶことはできないが、そのツバサには時を越えるチカラがあるのじゃ」


長老の言葉に導かれて、僕は過去の世界へと旅立つのだった。


ぺんぎんには過去にどうしても向き合わなければないものがあったのだ。


◆◆


過去の世界で、遊者ぺんぎんは子どもの頃の自分と再会する。

ぺんぎんの脳裏に過去の悲劇と恐怖が徐々に蘇っていく。


小さな村で暮らす少年ぺんぎんは、無邪気な日々を過ごしていた。


しかしある日、森で遊ぶ子どもたちを魔物が襲う。

親友を目の前で失ってしまった少年ぺんぎん…。


あの時、僕が森で遊ぼうだなんて言わなかったら…。


言わなかったら…。

言わなかったら…。

言わなかったら…。


何度も何度も何度も何度も何度も少年は自分の過去を悔やみ続けた。


失ったものの大きさに耐えきれず、少年はとうとう心を閉ざしてしまう。

無力感と悲しみが心を蝕んでいったのだ。



僕は少年に向かって優しく語りかける。

「時には悲しい別れもあるかもしれない。だけど君は一人じゃない。今も、これからもずっとね」


楽しみを共有するのは簡単だけど、苦しみや悲しみを共有するには勇気がいる。


隣で一緒に笑ってくれる人たちも大切。

でも、苦しい時にただそっと隣で寄り添ってくれる人がいるだけで心が軽くなる気がするのは僕だけだろうか。


少年のまわりには心から心配そうに見つめる家族や友人たちがいた。


その姿は少年に勇気を与え、彼は心の奥に抱えていた恐怖と向き合う決意をする。


ぺんぎん少年は魔物が現れた森に行くことにした。

彼は、過去の恐怖と向き合い、完全に克服するために、その場所に行く必要があると感じたのだ。


現場に立つ少年は、かつての恐怖を思い出しながらも、心の中で何かが変わっていくことを感じる。


あの日から僕の生活は大きく変わってしまった。大きく変わるって大変なことだけど、それは同時に自分が大きく変われるチャンスでもあるんだ。


過去の恐怖を受け入れ、それを乗り越えてこそ、僕はあの遊者のような強いペンギンに生まれ変わるんだ。


「ありがとう、そしてさよなら…」


少年は静かにつぶやき、過去のトラウマに別れを告げた。


こうして過去の出来事を受け入れ、ぺんぎんは内側から湧き上がる「勇気」を手に入れたんだ。


ペンギン族の足は短い。だけどその一歩が無駄になることは絶対にない。


過去の自分を許し、ゆっくりと未来への一歩を踏み出す遊者ぺんぎんだった。


◆◆


遊者ぺんぎんが次に向かったのは大魔王ラスボースが力を増し、支配している未来の世界…。


強大化した魔王軍に太刀打ちすることは容易ではなかった。


しかし未来のぺんぎんやその仲間たちは、その支配下で苦しみながらも希望を捨てていなかった。


老いたペンギンはゆっくりと笑いながら、だけど力強く語る。


「最後まで諦めずに希望を持ち続けていれば、どんな逆境も乗り越えられると私は信じている。強大な敵に勝つことはできなくても諦めるまで負けることはない。人生には多くの困難や苦難があるが、難があることを人は有難い(ありがたい)というんだ。そのおかげで私たちはこれまで以上に結束し、強く生きてこられた」


誰もがすべてを諦めてしまいそうな逆境の中でも笑顔を絶やさずに話す老人の言葉には紛れもなく「希望」が存在していた。



若き日の老人ペンギンは、仲間たちと共に数々の冒険を繰り広げていた。

彼らは魔物との戦いに身を投じ、世界を守り続けていた。


ある日、最愛の妻を魔物との戦いで命を落とす。

深い深い悲しみが彼の心に刻まれたが、その仲間の最後の言葉が彼に希望を与え続けた。


「どんな時も希望を捨てないで、いつか必ずこの闇を切り裂く光が来るから」


その言葉を胸に、老人ペンギンはずっと戦い続けていた。

今では若い頃のように身体は動かなくなっていたが、その心は燃え盛る炎のように熱かった。


「どんな時も希望を捨てないで」


その言葉はこだまのように遊者ぺんぎんの心の中で響き続けるのだった。


◆◆


過去と未来の旅を通じて「勇気」と「希望」を手にした遊者ぺんぎんは再び大魔王ラスボースとの最終決戦に挑む。


セーブデータは消えたとしても冒険の中で得たすべての経験と仲間が、そして過去と未来がぺんぎんを支えてくれている。


「ラスボース、お前は時間を軽視しすぎた。過去、現在、未来…すべてが繋がっている。過ぎ去った時間は元に戻らないからこそ、この一瞬に大きな価値があるんだ!」


「こざかしいペンギンめ、セーブデータとともに絶望の底で永遠に苦しみ続けるがいい」


僕らは何時間にもわたって激闘を繰り広げた。それはぺんぎんにとっては孤独との闘いでもあった。


うっ!


ほんの一瞬だった。

ぺんぎんは大魔王の強烈な攻撃を喰らってしまう。


薄れゆく視界の中で、もしかすると…わずかな諦めがぺんぎんの脳裏をかすめた時、どこからともなくあの言葉が蘇る。


「どんな時も希望を捨てないで、必ずこの闇を切り裂く光が来るから』


それに僕は一人じゃない!

僕には仲間が、村の家族や友達たちがいる!


最後のチカラを振り絞って、再び立ち上がるぺんぎん。


そして遊者ぺんぎんの渾身の一撃が魔王の脳天にヒットする!


崩れ落ちていく魔王。


遊者ぺんぎんは大魔王ラスボースを打ち破り、ついに未来に光を取り戻したのだった。


◆◆


遊者ぺんぎんの冒険を通じて僕たちは学んだ。

時間の、いや一瞬の積み重ねがいかに大切なのかを。


時の流れは過去から未来の順へと流れていく。

けれど時系列と違って、僕らは過去、未来、現在の順に生きなければいけない。


過去の失敗を活かしながら、輝かしい未来のために、今を生きていくんだ。

目指す未来がなければ、今という瞬間は色褪せたものになってしまう。


冒険は終わった。だけど未来への物語はこれからも続いていく。


そう、誰もが人生という物語の主人公なんだ。物語はまだまだ道なかば。

あなた次第で物語の結末は喜劇にも悲劇にも変わる。


そして僕たちの新たな伝説が始まる…。



THE END

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