運命
「先輩、ここ教えてくださーい。」
「はあ…なんでいつも俺を呼ぶんだ?」
「だって女性の先輩は色仕掛けをしているって言ってくるし、男性の先輩は胸とかお尻を見てくるし…」
「俺も男性なんだが?」
「先輩は胸とか見てこないじゃないですかぁ」
「そりゃあな。仕事に関係ないし…」
「そういうところが…」
……
俺は目を覚ました。珍しく前世の夢を見た。
「あ、スーク君、起きたんだ。もうすぐ夜ご飯の時間だよ。食堂行こ。」
「ああ、分かった。行くか。」
俺とノールは寮内の食堂に向かう。食堂にはすでに多くの生徒が座っており席がほとんど開いていなかった。
「はあ…どうする?ノール」
「そうですね…席空いてなさげですし…お持ち帰りとか出来ないんでしょうか…」
「聞いてみるか。」
俺は食堂のおばちゃんに話しかける。
「あのぉ…席空いてなさげですし部屋に持ち帰ることできますか?」
「出来ないよ。席が空いてないなら空くまで待ちな。」
「なんでなんですか!?」
「これは学園側が決めたことだよ。なんでも動きの遅い魔法使いはいらないとかなんとか。」
「はあ…これで何が判断できるんだか…それじゃあ自分でどうにかする。」
「外で食べてくるのはダメだからね?」
「わかってる。」
学園の規則で休みの日以外は学園内の食堂または寮内の食堂でしか食べられないのだ。
「自分で席を作ればいいんだろ?《創造》」
俺は魔法を発動する。すると目の前に透明な空気の塊のような机と椅子ができる。
「これで席ができた。」
「あのね?寮での魔法の使用は禁止されて…」
「違うな。人に危害を与える魔法が禁止されているだけだ。今回のような魔法は禁止されていない。てことでノール、料理取るぞ。」
「う、うん。」
俺たちは周りから見られながら料理を取り席に座る。
「なんか透明だと違和感あるよね…」
「そうか?じゃあ《着色》」
俺はさらに魔法を使って椅子と机に色を付ける。
「これで違和感ないだろ?」
「う、うん。スーク君が凄いのはわかってたけどこんなことまで出来るなんて…」
「買いかぶりすぎだ。干渉魔法がある程度できる奴ならこれくらいできる。」
「そう…なのかな?」
「そう言うもんだ。さっさと食べて部屋に帰るぞ。見られながら食べるのは嫌だし。」
「そうだね。僕も見られながら食べるのは苦手だし…」
そう言って俺たちは食事を済ませて食器をおばちゃんに渡して魔法を解除する。その瞬間、机も椅子も消え去る。他の生徒たちは食べる手を止めて俺たちが座っていたところを調べる。魔法の研究に熱心なのはいいことだ。俺たちは部屋に帰ってくる。
「何しようか?」
「俺は少し論文の続き書くから静かにしといてくれ。」
「論文?卒業論文には早すぎるよ?」
「そんなわけないだろ。この論文は魔法研究会に出す論文だ。」
「え!魔法研究会ってかなり凄い人が多いところだよね!そこに論文出すの!?」
「ああ、そもそも前から出してたしな。」
「そうなんだ!なんて名前で出してるの?僕も知ってるかも!」
「ユキ・ヤナギだ。」
「知ってるよ!超有名人じゃん!魔法使いなら知らない人はいないよ!スーク君が居なかったら今もまだ1世代以上前の魔法技術しかないって言われてるレベルだよ!」
「そうかい…」
「今は何の論文を出してるの?」
「新作魔法についての論文だ。」
「新作魔法!?どんな魔法なの?」
「教えられない。論文はどうせ出す。買って見ればいいだろ?」
「ええ、ケチぃ」
「まあ。そう言うことだから静かにしといてくれ。」
「わかったよ…」
俺は論文に集中する。今回作りだした魔法は干渉魔法を使った魔法で簡単に言うと人の運命を操るものだ。だがこの魔法にはかなり条件が多い。まず抵抗されたら魔法が発動しないこと。一度操っても別の誰かから上書きできてしまうこと。消費魔力がバカみたい高いこと。また運命を大きく変えようもしくはずっと後の未来を変えようとすると消費魔力が増えることなどなど。発動できる状況と発動できる人物がかなり限られる。魔法を選ぶのは人間と考えられているが、この魔法はかなり人を選ぶ魔法なのだ。さらにこの魔法はまだ使っていないため発動させたあと世界がどう変わるのか分からないのだ。運命とは過去が原因で起きる事象でもある。それに干渉すると過去までが変わってしまう可能性がある。そうなるとこの世界自体が大きく変わってしまう。この魔法はそれほど危険な魔法なのだ。発表していいものか迷っていたが学園に入るので論文が書けなくなるので最後に爆弾を投下するのも面白いと考えた。
「さて、"あいつ"はどう出るかな?なあ、『隻眼の魔法使い』アリス・ミント」