転生
俺は柳雪。社畜だ。
「先輩、大丈夫ですか?」
今話しかけてきたのは俺の後輩の小林静香。今年入社した新人だ。
「あ、あぁ大丈夫だ。」
「先輩って今何連勤目ですか?」
「覚えてねぇ…今年に入って休みもらった記憶がねぇな。」
「今年入ってからって…もう4月ですよ?労基に言ったらどうですか?」
「めんどくさい。俺がめんどくさがりなのは知ってるだろ?」
「知ってますけどここまで来たら異常ですよ。そのうち死にますよ?」
「その時はその時だ。諦めるよ。」
「私、先輩のこと好きなので死なないでほしいです。」
「それは告白か?」
「そうですよ。」
「はは、この年で告白されるとはな。」
「で、答えはどうなんですか?」
「答えは出せない。出したところでお前を幸せにできる自信がないからな。」
「そう…ですか。でも待ってますので。じゃあ私は帰りますね。」
「ああ、気をつけて帰れよ。」
そして静香は帰って行った。
「俺も帰るか…」
俺もふらふらとしながら帰って行った。帰る途中強い光にあてられ、瞬間激痛が走った。車にひかれたのだ。
「クソ…が…」
幸せなことの後には不幸が来るようにこの世界は出来ている。俺は告白をされ幸せだった。だからそれに対する不幸なのだ。そんなことを思いながら俺は死んだ。
……
私が会社に行くと先輩がいなかった。先輩の席には花瓶に花が添えられていた。それを見て悟ってしまった。先輩が死んだことを…その後いろんな人に聞いた。先輩は帰り道で車にひかれたらしい。原因は運転手の居眠り運転、しかも運転手はかなりの量飲酒していたらしい。私はそれを聞いてとてつもない怒りを覚えた。たったひと月程度の付き合い。でも私にとっては最愛の人だった。顔がいいわけでも性格がいいわけでもお金持ちというわけでもない。でもそんな先輩にひかれていた。そんな先輩をゴミのような人種に奪われたのだ。怒りと自分の無力さにどうにかなりそうだった。その日は心が空っぽになったような状態で家に帰った。家に帰って私は…自殺した。
……
俺は目を覚ますと知らない天井だった。肺が広がっているのを感じる。何故?理由はすぐわかった。俺が赤ん坊になっていたのだ。何を話しているかは分からないが複数名の声が聞こえる。ナースや医者、父親などの声だろうか?そんなことを考えていると俺は眠ってしまった。赤ん坊の体力のなさを痛感した。
……
俺が生まれてから5年が経った。この5年間でいろんなことを知ることができた。まずこの世界での俺の名前はスーク・ディフール。この世界には魔法が存在している。前世とは全く違う世界になっている。魔物なども存在しており、いわゆるファンタジーの世界になっている。
「おにーちゃーん」
そんな声が聞こえてくる。俺は声の方向を振り向く。そこにいたのは俺の妹、ミファー・ディフール。年齢は俺の一つ下で、顔立ちがいいため同い年の男子からはかなりモテている。なのになぜか俺にばかり構ってくる。
「ミファー。どうしたんだ?」
「今日も魔法を教えてほしくて…」
「そうか。いいぞ。」
俺はこの世界で生きていくために大量の本を読んで知識を集めた。本に書かれていないことは自分で実験をしたりしている。それを親に見られて天才と言われるようになって、たまに論文を書いたりもしている。
「まずは昨日の振り返りからだ。」
「はーい。」
「まず昨日の勉強では魔力について教えたな。魔力は大きく分けて三種類ある。体内魔力と自然魔力、無魔力の三種類。魔法は脳で想像したものを体内魔力を通して自然魔力に反応させて魔法を放つ。そして使用した体内魔力と自然魔力は無魔力となる。無魔力は人間には使うことができない。たが妖精や精霊は無魔力を自然魔力に帰ることができる。ここまでは覚えているか?」
「うん!」
「じゃあ次は魔法の属性についてだ。魔法の属性も大きなくくりで分けられている。まずは自然の力を扱う自然魔法。相手に対して魅了や催眠などをする対生物魔法。そして神が作りだしたとされている世界に干渉できる干渉魔法。この三種類だ。大体の人が得意なのは自然魔法だ。ではどうやって属性の付与がされているのかだが、生物の身体には魔力循環器官というものが通っている。その中に属性付与器官というものが存在する。そこで魔力に属性が付与される。得意不得意があるのは意識して使いたい属性を付与させるのが難しいからだ。得意な属性は無意識の内に付与ができる属性なんだ。」
「質問!」
「なんだ?」
「なんで無属性しか使えない人はどうなんですか?」
「無属性か。」
無属性は自然魔法に含まれる全人類が使える魔法と言われている。
「無属性しか使えない人は無意識の内に付与できる属性が無属性に偏りすぎているからだ。ちゃんと訓練すれば使うことは多分可能だ。だが、そんな可能性だけで鍛えるより、もとからいろんな属性を使える奴を鍛えた方が効率がいいため、無属性しか使えない人は蔑まれている。」
「そうなんですね。」
「いい質問だったぞ。じゃあ続きいくぞ。自然魔法と対生物魔法、干渉魔法はそれぞれ必要魔力が異なる。自然魔法が一番必要魔力が少なく、干渉魔法が一番多い。だがら干渉魔法を好んで使う人は少ない。そもそも干渉魔法が使える人が少ないんだがな。」
「でもおにーちゃんは干渉魔法よく使ってるよね?なんでなの?」
「魔法は使えば使うほど必要魔力が減っていく。無意識の内に効率的な魔力の使い方を学ぶからだ。俺は干渉魔法をたくさん使えば干渉魔法も必要魔力が減るのではないかと考えて続けている。それに体内に貯められる魔力は使った魔力量に比例して増えていく。だから消費の激しい干渉魔法を使っている。」
「そうなんだー」
「と、もう終わるか。また魔法の勉強をしたくなったらいつでも言っていいぞ。」
「うん!ありがとう、おにーちゃん。」
そういってミファーは自分の部屋に帰って行った。