山口の秘密
月曜日。
時刻は午前7時50分。
正樹と学校に投稿したら「伊崎ちょっとこっち来い。」とクラスの男子の山口に手を引かれて人気のない屋上に出る扉の前に連れていかれた。屋上は立ち入り禁止なためここには誰も来ないからと思われる。
「おい、山口急になんだよ。」
「すまん。」
「なんか人に聞かれたくない話か?」
「実はそうなんだ。伊崎あのさ俺、男が好きって言ったら引くか?」
「そうなんだ、別に引かねぇが?」
だって俺腐男子ですからそう言う話は大好きですし……。
それにしても山口に手を引かれた時は何言われるかビクビクしていたけど、身構える内容じゃあ無かったから一安心だ。いやここでこいつに告白される事もあるかもだがそれは無いだろう。
「ありがとう、伊崎ならそう言ってくれると思ったぜ。」
「どういたしましてって、違うなんでそんな話を俺にしてきたんだ?」
俺の疑問は当然のものだろう。俺と山口はあまり話したことは無い、だからこの様なカミングアウトされるのが不思議だった。
「それはこの間本屋で伊崎を見かけたんだ、その時にいた棚がよく見たら男同士で抱き合っている漫画があるところだったから、偏見ないのかなと思ってな。」
あっ見られていたなんて………。
「山口、俺を殺してくれ、腐男子ってクラスメイトにバレたなんて生きていけない……。」
「殺さねぇし、バラさねぇよ!伊崎落ち着け!」
「はっ危うく我を忘れて学校を破壊するところだった。」
「学校壊すんじゃねぇよ!」
「半分冗談だ。」
「半分は本気かよ!」
そんな冗談を挟みつつ山口の話を聞いた。山口が男が好きだと自覚したのは小学3年生の時だったらしい。
そのタイミングと言うのが「水泳の授業の時なんだな?」そう聞き返すと山口は頷いた。
「みんなは女子の着替えがどうとか言っていたけど、俺は興味が持てなかったんだ。だけど男子の着替えているところを見ると………な。」
「なるほど。股間の大きさとかが気になりだしたのか!」
「その時はそこまで考えてねぇよ!ちょっとドキドキするくらいだったわ!」
「その時はって事は今は気になってたりするんだ!」
俺がニヤついた顔で言うと山口は恥ずかしそうに「………悪いかよ………。」と言っていた。この子絶対受けだわ。
体育の授業の時の着替え中に他の男子の下着とかを見るとドキドキする様になった山口は、家に帰りインターネットで『着替え ドキドキ』と検索すると、出てきたのが『それは恋かも』と言うホームページが多かったと言う。
「そこで男が好きって自覚したんだな。」
「まぁ、そうだな。とりあえずは子供心ながら公にはしない方がいいって今日まで隠していたのだが……。」
「ん?どうした?」
「隠すのにも疲れたんだ、だから伊崎を本屋で見かけた時はもしかしてって思ったんだ。見かけた棚が棚だったからな。」
「まさか見られていたとは思わなかったたがな、まぁ俺は腐男子であって男が好きな訳では無いけどな。」
「もちろんわかってる。話を聞いてくれるだけでも嬉しいんだ。」
「話ならいくらでも聞くぜ!」
「ありがとう伊崎。あと関口ってこう言う事に偏見は……?」
「正樹なら大丈夫だ。俺が腐男子って事も知ってるしな!なんなら昼休みに話してみるか?」
「そうする。本当にありがとうな!」
そして教室に戻ると正樹が「山口なんだったんだ?」と聞いてきたから「昼休みに分かるぜ。」その返事に不思議そうな顔をしていた正樹だった。