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兵隊や冒険者はいらん。勇者もいらん

「あんたの顔なんてどうでもいいが、何でも協力するってのは本当だろうな?」

 止まっていた揉み手を再開するカーン。早口でまくし立てる。


「も、もちろんです! 限度はありますが、常識的な範囲での資金と兵力の準備はできておりますので……」


「無理難題をふっかけるつもりはねえよ。あんたらと違ってな」

 棘の含まれたイリスの言葉にカーンは一瞬揉み手を止めるが、すぐに再開し、わざとらしい愛想を振りまく。


「さ、さすが勇者さま。すべてお見通しで。それで、どのようなお手伝いをしましょうか?」


 揉み手にわざとらしい笑顔。まるで悪徳商人か詐欺師だなと思いながらもイリスは思い浮かんだ作戦に必要なものを素早く脳内でリストアップした。


「そうだな……。とにもかくにも人員だ。兵隊や冒険者はいらん。勇者もいらん。当日、この市庁舎の人間を三十人ほど動員させてくれればいい。もちろん、戦いに動員するわけじゃない。安全な仕事だ」


「そ、それだけでよろしいのですか?」


「もちろん、それだけじゃない」

「ほ、他に何か……?」

「ギルドだ」

「へ?」


 どんな要求が来るのかと戦々恐々としていたカーンだったが、思わぬ単語が出てきたことに拍子抜けしてしまった。


「ああ。カールトンの商人ギルド、それと職人ギルドとの関係を築きたい。繋いでくれるよな?」

「も、もちろんです……!」


 見た目も体力も十歳の少女に終始圧倒されていた王都の文官は、まるで逃げ出すように執務室から飛び出していった。


「さて、次は……」

 残されたイリスは執務机の上の書類に目を落としながら、次の展開に思いを巡らせていた。


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