このままだとミャー達も木っ端微塵にゃ!
「いいから、見てろ。すぐにわかる」
そうつぶやいた直後、動きがあった。
完全に岩山に擬態したはずのリクガメがびくん、と身体を跳ねさせたかと思うと、突如暴れ出した。
「にゃー! にゃにゃにゃ! 何なのにゃ!」
カメは短い手足をばたつかせ、首を目一杯伸ばして雄叫び――いや、叫び声を上げている。文字通り山のように泰然としていたカメが我を失ったかのように暴れているのだ。
周囲の木々や岩はまるで羽毛のように軽々と吹き飛ばされている。竜巻が周囲を駆け回ってもこうはならないだろうという有様だ。
「きた! デルフィ、防御魔法用意。オレのタイミングで発動できるように準備しておけ」
「わ、わかったの!」
デルフィニウムは神妙な面持ちで頷き、精神を集中させ始めた。
そうしている間もカメは暴れ回り、周囲の地形を破壊している。
ミャーリーはカメを見てぶるぶると震えながらイリスの後ろで服を掴んでしがみついていた。
「は、早く逃げるにゃ! このままだとミャー達も木っ端微塵にゃ!」
ミャーリーが訴えかけるがイリスは取り合わない。
そうしている間にもカメは大暴れしている。カメの短い手足が地面に叩きつけられるたびに大きな音とともに大地が揺れ、周囲の地面が抉れて周囲に飛び散っていく。
「いいから黙って見てろ。そのうち変化が起こるはずだ」
「にゃ、にゃにを言ってるのかわからないにゃー!」
「わからなきゃ黙って見てろ!」
「そんなのミャーにはムリにゃー!」
そんなやりとりをしていると、ドカン、ドカンという、カメが大地に手足を叩きつけた時の音とは明らかに異なる大きな音が響いた。
「な、なんにゃ!?」
「来たか!」
リクガメの方を見ると、明らかに異変が生じていた。カメの身体の内部から衝撃音が聞こえてくる。それと同時にカメの巨体が少しずつ浮き上がっているのが見えた。
「な、何が起こってるにゃ!? 早く逃げるにゃ!」
「いいや、これでいい。デルフィ、魔法の準備は?」
「い、いつでもいいの!」
デルフィニウムの答えにイリスは満足そうに頷いた。
カメの体内から響いてくる衝撃音は断続的に続いている。そのたびにカメの身体が浮かび上がり、その高さは少しずつ大きくなっていた。
そして一際大きな衝撃音とともにカメが大きく飛び上がった。
カメは空中でゆっくりと半回転すると、木を生やした甲羅を下にこちら目がけて落下してくるではないか。
「にゃにゃにゃー! 逃げるにゃ! 逃げないとぺしゃんこにゃ!」




