メリアさんのカタキなの……!
「メリアぁぁぁぁぁ!」
叫びながらも、イリスは打開策を冷静に探っていた。指揮官として二度の世界チャンピオンとなったプロゲーマーの悲しい性である。
「よくもメリアさんを……許せないの……!」
普段魔法を使いたがらないデルフィニウムが魔法の体勢に入っている。
それは、魔法が全く使えないイリスから見てもヤバい代物だとわかった。デルフィニウムが周囲から集めているマナが濃すぎて風景が歪んで見えるほどだ。
あのバケモノを倒し、無事に帰還するためにはそれが最善手というよりも唯一の手に思える。
しかしそれでいいのかとイリスの経験が警鐘を鳴らしている。
もしも――
敵味方の位置関係、考えられる行動、それぞれの戦闘力。すべての可能性を瞬時に計算する。そして最良の結果へ導くための策を組み立て、瞬時に味方への指示として出力する。
「待て、デルフィ! 今ここでお前の魔法を使うわけにはいかない」
「で、でも……あいつは倒さないとダメなの。メリアさんのカタキなの……!」
「いいから、オレの言うとおりにしろ!」
イリスが怒鳴りつけると、デルフィは一瞬びくりと身体を震わせて、「わ、わかったの……」と魔法の行使を中断した。
悠然と天を仰いでいた巨大なカメは、腹の中に得物が入ったことに満足したのか、もとの岩山の形に戻っていった。今こうしてみてもその姿は岩山にぽっかり空いた洞窟にしか見えない。
「どうするにゃ? このまま見ててもミャリアは助けられないにゃ」
いつもは底抜けに明るいミャーリーだが、メリアが飲み込まれてしまった今となってはさすがに動揺を隠せないようだ。
そんな状況にもかかわらず、イリスは冷静に事態を見守っている。
「いや。オレの予想が正しければ、もうすぐのはずだ……」
「もうすぐ? 何がにゃ?」
「いいから、見てろ。すぐにわかる」




