表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者10歳~戦闘力ゼロの幼女勇者、最強魔王を倒さんとす  作者: 雪見桜
魔物など物の数ではありません
71/269

新しい剣を調達しようかと

「勇者さま」

「なんだ」


 六畳ほどの部屋、その部屋の主の小ささにそぐわないほど大きな机にイリスは半ば埋もれるように座っている。幼女勇者はそこで羊皮紙に文字を書き込み、傍らに置かれていた判をぽんと押す。そのまま次の書類を取りだしてふたたびまた何事か書き込んでいく。


「剣がありません」

「お前が投げるからだろ。オレは悪くない」


 先の帝国との戦いの最中、メリアは逃走する敵の足止めのため、愛剣を投げつけた。

 その後、デルフィニウムの放った水魔法によってその剣は流され、剣は失われてしまったのだ。


「いえ。それはいいんですが、新しい剣を調達しようかと」

「いや、いいのかよ!」

 思わず突っ込んだ後、その後ろの言葉のことが気になり、書き物の手を止めてメリアの方を見た。


「ん……? 新しい剣?」

「はい。このカールトンの街は前戦の街とも言われていることから、腕の良い鍛冶屋が多いのです」


「鍛冶屋? お前店売りの武器使うの?」

「といいますと?」


「いや、てっきり伝説の剣とか使ってるのかと思ってた。ほらお前強いし、お姫様だし」

「前の剣はそうだったんです。エルフの族長から献上された剣で、『枯れた妖精王の腕』という名前でした」


「おまえ、そんな剣をなくしたのかよ……。というか、その名前なんなの?」

「過ぎたことです。それに、剣を惜しんで勇者さまを失っては本末転倒です。あと、剣の名前は私が付けました」


「どういうセンスだよ……。まあ、それはともかく……ありがとな」

 イリスは照れを隠すかのように再び机の上の書物に目を通して書き物を再開した。


「うーん、次の剣が見つかるまでの代役ならいいか。で、いくらだ? それくらいなら街の予算から捻出できるぞ」


 先の戦いから二週間。帝国軍の奇襲を見事切り抜けたイリス達だったが、戦いの最中で川を氾濫させてしまい、少なからず街に被害を出してしまった。

 戦争で疲弊しきっている街に復興の予算など捻出できない……と泣きついてきた市長に代わり、どういうわけかイリスが街の予算や復興計画の作成など、街の運営を担うことになってしまった。街に被害をもたらしたという負い目もあった。


「都市経営シミュレーションゲームの経験が生きた」とはイリスの談である。


 その効果があったのかは不明だが、イリスは行政上のムダをことごとく指摘し、街の財政は戦前よりもむしろ健全化したほどであった。どういうわけか今では街の予算執行権はイリスの手にある。


「いえ、それには及びません。お金は十分持っておりますので」

「さすがお姫様。オレも人生で一度は言ってみたい台詞だぜ」

 庶民であるイリスが本音を漏らした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ