まずは一匹!
「オラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
メリアは先頭に立って襲いかかってきた人間の女相手に怒濤のラッシュを行うが、女はその攻撃を手に持ったロングドードですべてはじき返した。かなりの手練れだ。
そうしている間にもう一人が加勢してきた。身体の大きさに似合わず素早い動きで女と同じようなロングソードを振り下ろしてくる、リザードマンの男だ。
「キシャァァッ!!」
人間の女とリザードマンの男、二人の息の合った連携にさすがのメリアも劣勢になる。二人の連続攻撃を受けるだけで精一杯の様子だ。
「わ、わたしが……」
イリスの隣に発つデルフィニウムがイリスの方を見る。
デルフィニウムはさまざまな種類の魔法を使うことができるが、威力を加減できないという大問題を抱えており、一日に一回しか魔法を使えない。それはつまり、使いどころは戦術的に極めて重要なファクターとなるということだ。
「ダメだ。今使ったらメリアも巻き込んでしまう。ここはメリアに頑張ってもらうしか……」
その時、リザードマンの背後に音もなく影が現れた。白と黒を基調としたひらひらのエプロンドレスを身にまとったねこ娘、ミャーリーだ。
素早く、音もなく走ることができるミャーリーにイリスはもうひとつの役割を期待していた。すなわち、ニンジャのように背後から不意打ちで大ダメージを与える役割だ。
だが、今のミャーリーには大きな弱点があった。それは――
「みゃぁぁぁっ!」
攻撃の際にどうしても声が出てしまうのだ。
その声にリザードマンは素早く反応した。リザードマンは身体を捻って攻撃をかわすと、その勢いを利用してトカゲの尾を鞭のようにしならせ、ミャーリーに反撃した。
「みゃ――――っ!」
ミャーリーは大きく吹き飛ばされた。空中でくるりと回転して音もなく草むらの上に着地したが、そのままうずくまってしまった。思ったよりもダメージが大きかったようだ。
「ミャーリー!」
しかし、そのミャーリーの貢献は大きかった。リザードマンがミャーリーに気を取られた隙にメリアは人間の女を蹴飛ばして引き離すと、返す刀でリザードマンを一刀の下斬り捨てる。
「ぐは……っ」
リザードマンは倒れると動かなくなった。
「まずは一匹!」
メリアは高らかに戦果を宣言すると、次の得物を探す。




