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さすがは勇者さまです!

「こんなところに村があるとは知らず、おさわがせした。すまんかった」

「いえいえ。こちらとしても不安の種がひとつなくなってよかったです」

 ドワーフの鉱山技師と村長はがっちり握手した。


 村に戻ったイリス達はドワーフの男と村長を引き合わせ、そこで事情説明が行われた。どうやらこの件については穏便に納まりそうだ。


「メリア!」

 村の奥から歩いてきたこの場に不釣り合いなドレス姿を見かけ手を振ると、メリアは笑顔で駆け寄ってきた。


「勇者さま! お早いお帰りで。村を脅かす魔物は退治できたのですか?」

「さすが正義バカ。最初にそれを気にするか」


 イリスは村の入り口で村長と話すドワーフを指さしながらことの顛末を説明すると、「それは何よりです」と我がことのように喜んだ。

 正義バカだがこういうのはメリアの美点であるといえるだろう。


「進捗はどうだ?」

「それなんですが……」


 メリアはイリスに命じられて破壊された村長の家を再建するために村に残っていた。イリスはメリアとともに村長宅の跡地に向かうと、わずか半日しか経っていないにもかかわらず、すでに巨大な岩塊は撤去されていた。


 しかしそれだけだ。


「あー、なるほど」

「申し訳ありません! 家など建てたことがなく、どうすれば良いのか皆目見当もつかず……」


 どうやらメリアは今日中に家を建て直さなければならないと思っていたらしい。しかしイリスとて鬼ではない。


「いや、岩の撤去だけを頼んだつもりだったんだが……」

「えっ!? そうだったんですか? あれなら村はずれに持って行って砕いただけだから、ほんの一時間くらいで終わりましたよ」


「マジかよ……。相変わらず非常識なパワーだな」

「お褒めに与り恐悦です」


「それで家なんですが……」

「それなら当てはある。任せておけ」

「さすがは勇者さまです!」


 メリアはイリスを抱きしめて頭を撫でまくる。イリスはそれに抵抗しようと必死にもがくが、パワーに差がありすぎて全く動かない。


「だー! やめろ! オレを子供扱いするな! 息ができな……い……」

「きゃー、勇者さま! しっかり! お気を確かに!」

 イリスはメリアの豊かすぎる胸の中で意識を手放した。

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