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騒がせて済まんかったなぁ

「いやぁ、洞窟の中に変な煙が立ちこめたから念のために外に出てきたら山がいきなり崩れたもんだから、あわてたべ」


 山の洞窟から出てきたドワーフはイリス達にそう話した。間違いなく、村で騒ぎになっていたモンスターらしき存在とは彼のことだろう。


「この山、火山でもないし、何が起こったんだべな?」

「さ、さぁ……」


 ドワーフの疑問にイリスは曖昧な返事をした。真相を知るイリスの額から冷や汗がダラダラ出たが幸いにして内心の動揺を悟られることはなかった。


「で、オッサンはあんなところで何をしてたんだ?」

「オラか? オラは国から依頼されてこの辺りの山を調べてただよ。良質な鉱石が採れるかもしれないって話があるでな、そのための予備調査に来ただ」


「娘っ子にこんな話は面白くないかもしれんな」と豪快に笑うドワーフ。どうやら、悪い男ではなさそうだ。


「娘っ子らはこんな所で何してただ? 子供だけで来るにはちょっと危ない所はねえべか?」

 だから、ドワーフのこんな問いにも正直に答えることにした。


「なんと! こんな所に村があったのか! そうとは知らず、騒がせて済まんかったなぁ」

 と、ドワーフは村に挨拶に行きたいから案内してくれと言い出した。


「もちろんだ。説明するのにちょうどいい」

 そして、一行は元来た道を引き返して村へと戻ることになった。


 山を消し飛ばした瞬間に眠ってしまい、まだ目覚めないデルフィニウムをドワーフがおぶって移動を始めたが、イリスのあまりにも遅い歩みに業を煮やした男がデルフィニウムに加えてイリスもおぶるようになった。


 背丈はイリスと大して変わらないが、とんだ力持ちである。その樽のような横幅の身体には筋肉が詰まっているに違いなかった。ミャーリーがその腹をぽんぽん叩いていたがドワーフは豪快に笑っていた。


 そうして軽快に山道を下っていった結果、ほんの三十分ほどで村まで帰ることができた。行きに半日掛けたイリスが不機嫌になったのはまた別の話だ。


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