問題はこの子だな
結局、女の子は荷台で目覚めることなく、一行はその日の日暮れ頃に最寄りの村に到着した。
バリーというらしい家が三十戸ほどしかない本当に小さな村には宿屋はなく、出迎えた村長とメリアが交渉した結果、村長の部屋の一部を提供してもらえることになった。
「ありがとうございます」
メリアが丁寧に頭を下げると、初老の村長は人の良さそうな笑顔を浮かべた。
「いえいえ、困ったときはお互い様です。何かありましたら遠慮なく申しつけください」
そう言い残して去って行った。
あんなことを言ってるが礼金目当てだぜと言ったら「そんなこと言うものではありませんよ」とメリアに怒られた。
「たいくつー! ねえ勇ミャ、ミャーは村の探検に行ってもいいにゃ?」
部屋に通され、ベッドを整えたり窓を開けて換気したりというメイドらしい仕事をしたかと思えば、それらが一通り住んだ瞬間にこの有様である。面倒くさくなったイリスはミャーリーのやりたいようにさせた。
「問題はこの子だな。どうするか……」
静かになった部屋でイリスはベッドに横たわる女の子を見た。ちなみに、部屋にはベッドが四個あるので寝る場所には困らない。久々のベッドである。
「目が覚めるまではこのままにするしかないでしょうね」
「やれやれ。また到着が遅れちまう」
ただでさえ遠回りしている上に聖都では思わぬ足止めを食らい、次いでこの有様である。着いた頃には戦いが終わってるんじゃないかと心配になってきた。
と心配したイリスであったが、不幸中の幸い、とでもいうべきだろうか。
次の日の夕方、イリスが壺から取り出した材料でメリアが作った夕食をとりおえた――ミャーリーはメイドのくせに料理ができないとのたまった――頃、少女は目を覚ました。




