何って、お前が犯人だろうが
「お待たせしました、勇者さま。例の男を捕獲してきました」
そう言ってメリアは魚屋に戻ってきた。
メリアは一人の男を連れている。連れているというよりは連行していると言った方が正しいかもしれない。
メリアはその狼の獣人の手を背後でがっちりと極めて逃げ出さないように連れてきたからだ。
「放せ! 俺が何しやがったんだ、クソ!」
青い髪の狼男はメリアを鋭く睨みながら身体をよじるが、自分よりも小柄な女騎士の戒めは一向に緩む様子はない。それどころかメリアが少し力を加えただけで関節に痛みが走り、おとなしくなる。
「何って、お前が犯人だろうが」
「何だと、クソガキ! 何の証拠があって……イデデデデッ!」
暴れてはメリアに戒められるのを繰り返す狼を無視して、イリスは店主に向き直った。
「オッサン。この人、知ってるだろ?」
「知ってるも何も、その兄ちゃんは毎日俺の店に魚を卸している魚釣りの一人だ。あの目玉商品もこの兄ちゃんが卸してくれたんだぜ。それが……犯人?」
「まずは盗まれた金の確認をしないとな。メリア」
イリスが指示を出すと、メリアは目にも止まらぬ素早さで男の脚をかけて転倒させた。そのまま転倒した男の上に乗って彼の左手を固定しながら懐を探る。
「ありました」
狼男の懐から見つかったその袋をイリスに渡した。見た目よりもずっしりと重いその袋を揺らすと、じゃらじゃらという音がする。
「違う! これは俺が働いて貯めた金で……!」
狼男が抗弁するがすぐにメリアに黙らされる。
「金額を確認してみてくれ」
「わ、わかった……」
店主は袋を渡されると、奥からもってきた帳簿と照らし合わせて確認する。
「ま、間違いない。昨日の売り上げ、それに今日の魚の仕入れ代金。その差し引きにぴったり一致する……」
店主が狼男を睨むと、男は視線を逸らした。ねこ娘は自分はもう関係ないと思ったのか、店の隅でまるくなって居眠りしている。




