ミャーは教皇宮のメイドにゃ!
「話をまとめると……」
どうにか二人を落ち着かせ、それぞれの言い分を聞くことができた。
「店の中に置いてあった商品がなくなったと」
「おうよ! 最高級品だ。教皇様だってそうそうお目にかかれないような高級魚さ! 今朝、ペイントン湖で釣れたばっかりのやつだ!」
「その教皇様に言われてミャーは買いに来たにゃ!」
「この期に及んでまだそんな嘘を! どうして教皇様がお前ごときに魚を買うよう命じるんだ!」
「ミャーは教皇宮のメイドにゃ! 今日は休みのメイドに代わってお使いに来ただけにゃ!」
「だーかーらー! どこの誰がそんな戯言を真に受けるんだってんだ!」
「うにゃー! ミャーは嘘なんかついてないにゃ! 嘘がつけるほど賢くないにゃ!」
言ってて悲しくならないのかよとイリスが思っていたところにメリアの雷が落ちた。
「いい加減になさい!」
一瞬で店内は静かになり、しゅんと小さくなる店主とねこ娘。
「お店から商品がなくなった。その時、店内にはこの子しかいなかった。でもこの子はやっていない。そうですね?」
「お、おう……」
「そうにゃ!」
話を聞いたメリアは腕組みをして考え始めた。やがて、何かに気づいたように、
「勇者さま、何かおわかりですか?」
……丸投げかよ!
そう心の中でツッコミを入れたものの、イリスは油断なく店内を観察していた。そしてあるものを見つけると、メリアに耳打ちをする。
「かしこまりました」
そういうとメリアは店の周りに集まる野次馬達をかき分けて再び店の外に出て行ってしまった。
「え……? 騎士様……!?」
それまで話を聞いてくれた女騎士が店の外に出て行ってしまい、面食らう店主にイリスが話しかける。
「なあ、オッサン」
「あぁ? 何だこのガキは? ここは土産物屋じゃねーぞ。とっとと帰んな」
どうやら、観光客の子供だと思われているようだ。メリアとずっと一緒にいたはずなのだが、店主の目には入っていなかったのかもしれない。
そんな言葉には目もくれず、イリスは頭上を指さした。
「なくなった商品ってのはアレじゃねーの?」
「は? 何をバカなこと言って……」
言われるままに指さされた方を見ると、釣り糸のようなものが天井から垂れ下がっていた。そしてその先には赤く輝く大きな魚がぶら下がっているではないか。
「あ、あった――――っ!」
半分泣きながら店主はぶら下がっている目玉商品を丁寧に取り外して、店の中央に置いてある皿の上に戻した。
「ありがとうよ、お嬢ちゃん。本当に助かったぜ」
一瞬前と態度が全然違うが、まあそれはさておき。
「言ったにゃ。ミャーは悪くないにゃー」
疑惑の晴れたねこ娘が胸を張る。大きな胸がより強調されてぷるんと揺れた。
「でもよ、なんでわかったんだ?」
騒動が収まって野次馬もいなくなり、すっかり静かになった店内で店主がイリスに聞いた。
「簡単な話だ。野次馬が多く集まってただろ。犯人の目当てはそれだったんだ」
「みゃみゃみゃ?」
「オッサン、店の売り上げはあるか? 確認してみろよ」
「今日はまだ店開いたばかりだから売り上げはないが……」
「昨日の分は? まだ店にあるんだろ?」
「ああ、前日の売り上げはいつも小僧が出てくる昼過ぎに預けに行くことにしてるが……」
「早く確認しに行った方がいいぞ」
「お、おう……」
店主はわけがわからないといった表情をしていたが、たった今なくなった商品を見つけたばかりのイリスの言葉を無視するわけにも行かず、店の奥の方へ歩いて行った。
「ああ――っ! ない! 売り上げがない!」
奥に備え付けてあった机の引き出しを開けるなり、店主が大声を上げた。そして真っ青な顔でイリスに詰め寄ってくる。
「大変だ! 嬢ちゃんの言うとおり、売り上げがなくなってる。昨日の分全部だ!」
「ミャーじゃないにゃ! ミャーはムジツにゃ!」
聞かれてもないのにねこ娘が慌て始めた。
「わかってるよ。あんたは犯人じゃない」
その言葉にねこ娘はほっとしたかのように胸をなで下ろした。
「嬢ちゃん、誰が犯人なのかわかってるのか?」
店主の問いにイリスは誰もいなくなった店の入り口の方を見て、
「もうすぐ戻ってくるはずだ。言ってる間に、そら」
店に入ってくる人影が見えた。店主とねこ娘が人影を見る。
「騎士様! それと……あんたは……!」




