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勇者10歳~戦闘力ゼロの幼女勇者、最強魔王を倒さんとす  作者: 雪見桜
勇者イリスよ。魔王を倒し、この世界を救ってくれ
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フルダイブVRシステム、起動します

『ギャラクティック・トルーパーズ』というゲームをご存じだろうか?


 ジャンルとしてはフルダイブVR環境で行う多人数一人称視点シューター、VRMMOFPSということになる。星間文明を舞台にプレイヤーは銀河帝国と惑星同盟の陣営に分かれて相手チームに勝利し、陣営の勢力を広げていくという世界観のゲームだ。


 VRMMOFPSというジャンルとしてはオーソドックスな部類に入るこのゲームだが、他にはない特徴的なシステムがある。


 それが、“指揮官システム”と呼ばれるゲームシステムである。


 最大千人から構成されるチームの中で、一人だけ指揮官に就任することができるのだ。

 指揮官は前戦にこそ立つことはできないが、戦場を俯瞰的に見ることができ、仲間たちに指示を与えることができる。


 箕浦剛範みうらたけのりは弱冠十六歳ながらその指揮官プレイにおいて二度の世界大会を征した高校生プロゲーマーである。


 『イリス』というハンドルネームと女性アバターで活躍する彼は、特定のチームに属さず、主にオートマッチングやプロチームとの短期契約によって活動している。そのスタイルで勝利をもたらす指揮官の姿は世界のプレイヤーから『魔術師』と呼ばれている。


 特に、通信障害により三倍の戦力差となってしまったマッチを巧みな用兵によって勝利に導いたその戦いは、そのマップ名に由来して『イフィーデルミナの奇跡』と呼ばれている。




 その日も学校から帰るなり彼は自室に引きこもり、PCとVRヘッドセットの電源を入れた。画面内にチェック項目の表示が現れては消える。問題なし。


 彼はプロゲーマーでもあるが高校生でもある。以前は学校をサボって『ギャラクティック・トルーパーズ』の練習をしていた時期もあったが、担任にこれ以上休むと単位に響くと言われ、それ以来出席日数と定期テストの点だけはギリギリの状態を保つようにしている。


 未成年のプロゲーマー資格は両親の同意の下発行されることになっているので、最低でも高校を卒業することという条件をプロゲーマー活動の条件として約束している彼としてはどうにか高校生とプロゲーマーの二刀流を続けるほかない。


 彼の自宅は地方都市の閑静な住宅街にある一軒家だ。その二階の一室が彼の仕事部屋となる。家族は両親だけの一人っ子。その両親は共働きで暗くならないと帰ってこない。


 部屋の中はPCの他は学校の授業に必要な教科書や参考書が収められている本棚、着替えが入っているクローゼットと棚の他はあまり物が置かれていない。目立つのは棚の上に置いてある幾つかのトロフィーと壁に飾ってある賞状くらいだ。


 幼少期からPCのシミュレーションゲームに慣れ親しんでいた彼は他にこれと言った趣味をもたない。学校の友人達のように漫画も読まなければアニメも見ない。SNSでの発信も仕事に関するものがほとんどで、ファンからはよく「私生活が謎」などと言われている。


 この時間、あたりには行き交う人もなく、時折宅配便の車が通るだけで外からの音はほとんど聞こえない。彼の耳にはVRヘッドセットが奏でる穏やかなBGMだけが聞こえている。

 窓の外から吹き寄せる涼しげな風が穏やかな平日の午後の日を感じさせていた。


「そうだ、どうせだから生配信もしよう」

 そう思い立ってPCのアプリを立ち上げて配信を開始した。すぐに登録しているだろう何人かのユーザーが生配信のルームに入ってきて挨拶してきた。


「こんにちは。えっと、今日はGTギャラクティック・トルーパーズの練習配信をします。よろしく」


 VRヘッドセットのウィンドウ内にすぐ反応が返ってきた。

 ――こんにちは。

 ――こんちゃー。

 ――よろしく。

 ――待ってました!

 ――楽しみにしてます。

 ――イリスさんの指揮、参考になります!

 等々。


 生配信のユーザー達との会話を楽しんでいると、VRヘッドセットの起動準備が完了して耳に馴染んだ合成音声が聞こえてきた。


『リンク・イン。フルダイブVRシステム、起動します』

 いつものように意識が吸い取られるような感覚がして、目の前が暗くなっていく。

 そしてすぐに視界が開けていく。そこには――


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