表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者10歳~戦闘力ゼロの幼女勇者、最強魔王を倒さんとす  作者: 雪見桜
勇者イリスさまに騎士の誓いを
15/269

見張りは俺達三人でやるから、お前は寝てろ

 ジャンが決めた野宿のポイントは街道沿いの大きな木が立っている小高い丘の上だった。


 地球よりもかなり大きめの満月が夜空を照らす下、ぱちぱちと薪が爆ぜる音がそれを取り囲む者たちに安らぎを与えてくれる。

 火にあぶられた獣の肉がじゅうじゅうと油を滴らせながら焼かれて香ばしい匂いが鼻腔をくすぐらせている。くう、と知らず知らずのうちにイリスの腹が鳴った。


「もう少し待ってろ」

 そう言うジャンの隣ではダラーがせっせと野菜の皮を剥いて沸騰する鍋の中に次々と入れている。見た目によらずこの調理係のジャイアント族は手先が器用なのかもしれない。


 野宿の準備を始めるといつの間にかいなくなっていたエルフのリンが小さなイノシシに似た動物を狩って戻ってきた。


 ダラーはそれを受け取ると手早く捌いてたき火であぶり出した。今夜の食事はこれだというが、あぶった肉だけというのはどうにも味気ないので、イリスは壺から芋や根菜、それに味付け用のスパイスを提供してやった。


 今たき火にかけられている鍋で煮ているのがその野菜だ。そこにダラーはスパイスを入れて煮込んだ後、いい感じに焼き上がったイノシシ肉を鍋に入れた。


「この匂いは……」

 馴染みのある匂いがイリスの鼻をくすぐった。少しして野菜が十分柔らかくなっているのを確認したあと、ダラーが椀によそって渡してくれた。


「いただきます……」

 少しどろっとしたスープを口に入れると複雑な味わいの中に少しの辛み、そして肉と野菜のうまみが染み出した絶妙なハーモニーが口全体に広がっていくのを感じた。


 紛れもないカレーだ。


「うまい」

 思わずそう言うと、ダラーは嬉しそうににっこりと微笑んだ。


「見張りは俺達三人でやるから、お前は寝てろ」


 食事が終わったあと、ジャンがそう言ってきた。「いいのか?」と聞いたが、「ガキに番をさせるほど落ちぶれちゃいねえ」と言ってきたので、言われるままにすることにした。


 馬車の荷台の中で、壺から取り出した毛布にくるまって眠る。

 一日馬車に揺られていたせいか、それとも初めての戦闘で柄にもなく緊張していたのか、イリスはそのまますぐに眠りに落ちていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ