トライフラワーか。いいじゃねえか
「勇者様、こちらが勇者様の旅のお供となる者たちの候補です」
タキシードを着たこの国の宰相を名乗る白髪の老人がヴィルヘルムを案内したのは迎賓館のような巨大な建物だった。
その大きな広間には豪華な内装にはふさわしくない粗野で小汚い男女がひしめくように詰め込まれていた。それを二階のテラスから見下ろしている。
「俺は別に仲間なんか必要ねーんだがな……ん?」
ヴィルヘルムの目にとある一団が目に映った。
風呂に入っているかも怪しい小汚い連中の中、その三人組だけは輝いているように見えた。
「ほほう、さすがはお目が高い。あの三人は『トライフラワー』。王国でも屈指の冒険者パーティです」
「トライフラワーか。いいじゃねえか」
ヴィルヘルムの唇が妖しく歪んだ。
エルフの冒険者三人組は城に用意されたヴィルヘルム専用の控え室に即座に呼び出された。
「このたびは私たち『トライフラワー』をご指名いただき、ありがとうございます」
リーダー格であるエルフの戦士が丁寧に挨拶をすると同時に、後ろに控える二人も深々と礼をする。彼女たちは王侯貴族達の依頼を受けることも多く、礼儀作法も完璧に身につけていた。
「よく来たな。まあ、そう固くなるな。頭を上げろ。顔を見せてくれ」
勇者が歩いてくる気配にエルフたちは言われたとおりに顔を上げた。
白いバスローブを身にまとう銀髪の勇者はエルフに負けず劣らず美しい顔立ちをしていた。それに一瞬見とれる三姉妹。
勇者は全身を鎧で固めている戦士のバニラの前まで来ると、彼女の頬を撫でた。思いも寄らぬ行動にぴくりとからだが勝手に動いた。
「な、何を……」
バニラの顔が嫌悪に歪むが、冒険者として依頼を受けている以上、迂闊な行動を取ることはできない。これは王城からの直接の依頼なのだ。
ヴィルヘルムの瞳が赤く光る。
「ちっ、効かねえか。だがまあいい」
ヴィルヘルムはバニラの隣に立つローブの少女の方まで来た。まだあどけなさが残るが、他の二人に対して勝るとも劣らぬ美貌の持ち主である。
「さすがに整った顔立ちをしてるな。いいぜ、俺の好みだ。だが……こっちの様子はどうかな?」
ヴィルヘルムはそう言うと、一流の冒険者であるエルフたちの目にも止まらぬ速さで脇に控えてきた末の妹である賢者のフリージアのローブの裾を思いっきりめくり上げた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
フリージアは悲鳴とともにローブを押さえるが、その中に秘められた白い太股とさらに白い純白の下着はしっかりとヴィルヘルムの瞳に焼き付けられた。
「いいじゃねえか。冒険者ってんだからどんな汚い女かと思ったが、顔も下の方も合格だ。こっちに来いや」
ヴィルヘルムがフリージアの肩を抱いて歩き出した。その方向には大きな天蓋付きのベッドがあるのが見えた。
「放せ、この野郎!」
それを見て憤った次女で野伏のパンジーがヴィルヘルムに殴りかかった。しかしヴィルヘルムの身体は小揺るぎもせず、代わりにパンジーが尻餅をつく格好となった。
「あぁ?」
ヴィルヘルムが不機嫌そうにパンジーに詰め寄る。二人の間に割って入ったのはバニラだ。
「勇者様」
「なんだテメェ?」
「勘違いなさっているかもしれないので念のために申し上げておきますが、私たちは娼婦ではありません。冒険者です」




