行くぜ……ライトニング=フレイムっ……!
「いいか、全力で付いてこい。何よりも優先されるのは俺に遅れないことだ。それ以外は後でいい」
「はい」「はい」「はい」
「お前らに価値があるのは顔と身体だけだ。決してダメージを受けるな。傷を付けるな。顔にも、身体にも。決してだ。」
「はい」「はい」「はい」
「よし、行くぞ……!」
周囲の軍勢の中でその一行はいち早く走り出した。
先頭を走るのは長身の青年だ。白銀に輝く鎧を身にまとい、青いマントをひらめかせながら風のように走っている銀髪の青年だ。全身鎧を身につけているのに驚くほど早い。
その後ろに付いていくのは三人の女性。先頭の青年ほどではないが、これも驚くほど早い。
三人ともが金色の長い髪をなびかせて全力で走っている。特筆すべきことは三人ともその身を覆う布や鎧の面積が驚くほど少ないということだ。
金髪の青年はこの世界に最初に召喚された第1勇者・ヴィルヘルム。
そのあとを追う金髪のエルフたちはその仲間たち。
幅広の大剣を持ち、水着のような鎧を身にまとったエルフは戦士のバニラ。
自身の身長よりも大きな弓をもって走りながら前方の敵に狙いを付けているエルフは野伏のパンジー。
細身に似合わない大きな杖を両手で持ち、先行する三人に必死で付いていくエルフは賢者のフリージア。
彼女らは王国でも名の知れた三姉妹冒険者『トライフラワー』。今ではヴィルヘルムの仲間『第1勇者パーティー』として知られるようになった。
常識では考えられない速度で走る第1勇者を筆頭とする四人。数キロ彼方にあった敵軍勢がみるみる大きく、近くなってくる。
「行くぜ……ライトニング=フレイムっ……!」
気合い一閃、ヴィルヘルムが剣を振るうとその軌跡にあわせて巨大な紫電をまとった炎が敵の一団を吹き飛ばした。ネーミングセンスはともかく、その威力は侮れない。
〈想像創技〉。ヴィルヘルムが持つチート技のひとつで、頭に思い描いたとおりの技を繰り出せるというものだ。
魔法に似ているが、魔法と異なりマナも魔力も必要としない。
初めて異世界から召喚された勇者であるヴィルヘルムは神より数多のチートとも呼べるスキルを授かっている。
致死ダメージを受けた際に一回だけ死から免れる〈致死回避〉、すべての攻撃属性に最高レベルの適正を付与する〈全属性強化:極大〉、常人を遙かに上回る成長速度を得る〈超成長促進〉など、その数は千にもおよぶ。
「うがぁぁぁっ!」
体長三メートルにもなろうかというひとつ目の巨人が巨大な棍棒を振り下ろしてきた。その巨体に似つかわしくない素早く隙のない攻撃だ。
しかし――
「遅せえンだよ!」
ヴィルヘルムは残像を残すほどの速さでそれを躱すと、すかさず相手の懐に入り込んで無造作に剣を振るう。
びちゃっという嫌な音とともに単眼の巨人の身体はまるでバターのように呆気なく切断され、その上半身は遅れてやってきた他の勇者パーティ達の方へ飛んでいった。
「うわっ、きたねー!」
「何しやがるんだ、コノヤロー!」
勇者たちの罵声が飛んでくるが、ヴィルヘルムの耳には入らない。
「このまま敵の正面を突っ切るぞ」
襲いかかってきたゴブリンたちの処理を終えていたエルフ達の方を見もせずに指示を出すと、ヴィルヘルムは次の敵集団の中に突っ込んでいった。その瞬間に轟音とともに多くの敵がはじけ飛んでいく。
まだまだ敵は多い。のちに記された公式の記録によればこのカールトンの戦いでは王国軍四千に対し、帝国軍は二万。常識的に考えれば絶望的な戦力差であった。
この戦いにおいてヴィルヘルムと彼のパーティーは実に三千もの敵を討ち取る功績をおさめた。もちろん、これは王国軍最多であり、彼がいなければこの平原での戦いは敗北したとも言われる。
真正の勇者、それが第1勇者ヴィルヘルムだ。




