幼女のアバターだから何だ?
イリスは自他共に認める戦闘能力ゼロの勇者である。
しかし、イリスには他の誰にもない特別な能力があった。
それは、『魔術師』と呼ばれるほどの戦略的思考能力と、ネットゲームに対する深い造詣である。
イリスには勝算があった。手がかりはヴィルヘルムの言葉の端々にある。
「俺の経験値になった方がこいつらも幸せに決まってるさ!」
「NPCのくせにやるじゃねーか!」
日本から勇者としてやってきたヴィルヘルムは、この世界のことをまだゲームだと認識している。イリスはその確信に掛けることにした。
(まあ、半分以上博打だがな)
「てめーのようなチンチクリンのクソガキがこの俺を倒す?」
ヴィルヘルムはイリスのいうことを全く信じていないように見える。ヴィルヘルムはイリスの鼻先に剣を向けた。
「お前もおもしれーこと言うじゃねえか。こっちの女騎士に負けず劣らず面白いぞ。だがオレはロリコンじゃねー。ガキはそのままぶっ殺すぞ!」
「幼女のアバターだから何だ?」
重要なのは、思いっきり虚勢を張ること。これだけだ。
「何?」
「お前、もしかして見た目がそのまま強さに反映されてると、本気で思ってるのか?」
「…………」
それまで軽薄に笑っていたヴィルヘルムの顔から笑顔が消えた。ゲームだと思っているからこそ、この見た目でもハッタリをきかせることができる。
「いいか、よく聞け」
「な、何だよ……」
イリスがずいと一歩踏み出すと、ヴィルヘルムは一歩下がる。
いいぞ、目論見通りだ。イリスは表情を変えずにほくそ笑む。
「この先にあるヴレダ要塞。帝国軍のものだったが、最近落ちたは知ってるな?」
「あ、ああ……」
「それを落としたのはオレだ。数千の敵が守る難攻不落の砦を落としたのがこのオレだ」
嘘は言っていない。捕虜達を守るために、王都へは砦を落として占領したことと、味方に損害はないことと、多少の捕虜が発生したことだけ伝えてある。
他の勇者たちはその報告を聞いてここまでやってきたのだから、それ以上の情報はない。
「もう一度言う。ヴレダ要塞を落としたのはオレだ。神からチート能力を授かったのはお前だけだと思うなよ」
これも嘘は言っていない。勇者は皆、この世界にやってくるときに何らかの能力を神から与えられたとカーンから聞いた。唯一、イリスだけが何の能力も授けられていないが、それを言う必要はない。
「……………………」
「それでもう一度聞く。オレとやるのか?」




