俺こそが第1勇者、ヴィルヘルム!
メリアがここに来て初めて腰の剣に手を当てると、男は後ろで控えていた三人のエルフ達の方を見た。
「おい、おまえら。あいつを倒してこい」
男の命令に女達は無表情で答えた。
「はい」
「だがわかってるな? あの女、上玉だ。治癒魔法を使っても消えないような傷は付けるんじゃねーぞ」
そんな男の言葉にも女達は無表情でただ頷く。
「承知しています」
それに対して言われた側のメリアは激昂した。
「下衆が!」
その言葉だけを残し、地面を蹴る音を残してメリアが消えた。
男の前に出て戦闘態勢を整えていた三人のエルフたちはその速度に驚く。
最初の一撃をエルフの戦士が受けることができたのは、メリアがイリスの『殺すな』という命令に忠実だったからにほかならない。
正確にエルフの大剣を狙って弾き飛ばしたメリアは、その勢いでエルフ戦士の腹を蹴り飛ばした。
「ぐふっ……!」
そのまま吹き飛んで失神した戦士には目もくれず、メリアは飛んできたエルフ狙撃兵の弓を素手で受け止めると、そのまま投げ返した。
「なっ……!」
矢はエルフ狙撃兵の眼前を通り過ぎる。矢に追いつくかと思われるほどの速さでメリアは狙撃兵の目の前に現われ、その勢いのままみぞおちに一撃を食らわせた。
「うぐっ……!」
そのまま狙撃兵は白目をむいて倒れた。
「このっ、この!」
残るエルフ魔術師はやぶれかぶれに炎の玉を連射するが、メリアにはかすりもしない。
メリアはすれ違いざま、魔術師の首筋を剣の柄で叩いて昏倒させた。
一瞬の圧勝劇であった。
「やるじゃねえか」
ぱち、ぱちと男がぞんざいな拍手でメリアを賞賛する。
「けど、俺には届かない。俺は最強の勇者だからな」
「勇者? テメエがか?」
剣を抜いて凶戦士化したメリアが鋭い目で男を睨む。勇者を名乗る男は愉快な笑い声を上げた。
「ははははは! そうさ! 俺こそが第1勇者、ヴィルヘルム! 神からありとあらゆるチート能力を授けられた最強の勇者だ!」




