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勇者10歳~戦闘力ゼロの幼女勇者、最強魔王を倒さんとす  作者: 雪見桜
使命……? ああ、魔王を倒すことだったな、そういえば
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パーティーか……。ふふ、まあいいだろう

 捕虜達はこのヴレダ要塞から山道を歩いて半日ほどにあるくぼ地に移送されることになった。そこは周囲を切り立った山々で覆われており、王国に入るにも帝国に戻るにもヴレダ要塞を経由しなければならない場所にある、まさに天然の収容所とも呼べる場所であった。


 捕虜達はそこで木を切り出し岩を砕き、まずは彼ら自身を収容する建物を建設する所から始める。


 もちろん、監視の王国兵は派遣するが、収容所内部での捕虜達の行動には干渉せず、あくまで脱走者が出ないように監視するのみに留める予定だ。

 こうすることで捕虜達のストレスを和らげ、反乱や脱走の確率を下げる。


 数千人にもおよぶ捕虜達の移送はイリスとラミアが合意した時から順次行われていた。

 そしてこの日、最後の十数人と物資を載せた馬車がヴレダ要塞を出発する。要塞の王国側出口には手足を鎖で繋がれた捕虜達が集まっていた。その中に彼らのリーダー格である下半身が蛇の女もいた。


「勇者イリスよ、世話にナッタ。私たちのことについて心を砕いてくれたコト、その厚意に最大限の感謝ヲ」

「いや……。あんたが兵士達を説得してくれなかったらこうスムーズにはいかなかったさ。オレの方こそ感謝する」


 イリスが手を差し出すと、長身のラミアは這いつくばるほど体勢を低くしてイリスの身長にあわせてその手をしっかりと握った。


「元気でな」

「アナタも。ワタシ達の街ができたら遊びに来てクレ」

「街、か……。ふふ、そうだな。必ず行かせてもらおう」


 そうしてラミアをはじめとする最後の捕虜達がイリスや勇者の仲間たち、要塞の人々の見送りを受けて発っていった。




 それから――


「お手紙が来ているの」

 ブレダ要塞内の執務室でイリスが部隊編成について頭を悩ませていると、デルフィニウムがやってきた。


「お、おう。サンキュ。けど、なんでお前が? ここに来るなんて珍しいじゃないか」

 いつもは部屋に籠もって日がな一日読書に勤しんでいるデルフィニウムがイリスの執務室に来るのは珍しい。普段手紙などの書類を持ってくるのは文官であるカーンの役割だ。


「帝国公用語で書いてあった手紙なの。だからわたしが翻訳して持ってきたの」

「ふーん、なるほどな。……帝国公用語?」


 帝国で支配階級であるデモン族の出身であるデルフィニウムは帝国公用語を話すことができる。

 要塞を奪取したときに得られた数多くの書類の翻訳にデルフィニウムは活躍したが、手紙――しかもイリス宛の帝国語で書かれた手紙など心当たりがない。


「見てみればわかるの」

 デルフィニウムがそう言うので、封の開けられた封筒から手紙を取りだした。


 そこには、王国公用語で書かれた手紙が入っていた。元々日本人であるイリスだが、数か月にもおよぶカールトンでの書類生活の結果、王国公用語は難なく読めるようになっていた。


「えー、なになに。勇者イリスさま」




 勇者イリスさま

 その後、お変わりないでしょうか。


 早いもので、私たちが移送されてから早くも一月が経ちました。最初は仮眠用のテントしかありませんでしたが、仲間たちと力を合わせて木を切り、岩を運び、それなりの街を作ることができました。今はまだヴレダ要塞からの補給物資を頼りにしていますが、すでに作物の栽培も始めており、ゆくゆくは要塞あなたたちに輸出しようかと今から考えています。


 さて、私たちの街――ウェストブリッジフォードと名付けました――の体裁が整ってきたというのは先ほどお伝えしたとおりですが、それを記念して、ちょっとしたパーティーを開催しようと思っています。


 つきましては、勇者イリスさまにもご参加いただければ私たち捕虜一同にとって望外の喜びとなるでしょう。

 料理の得意な兵が店を開くとのことでなかなか豪華になる予定ですよ。


 勇者さまのご来訪を心待ちにする気持ちを結びに代えて。

 貴女の友人、ウィルトゥールルティンガーベルンスト・アッケンベルンスタイン




「相変わらずなげー名前」

「手紙読んだ感想はそれなの?」

 ラミアからの手紙を読み終えたイリスの感想に、さすがのデルフィニウムもあきれ顔だ。


 イリスはデルフィニウムの方を見た。

「で、このパーティーはいつやるわけ?」

「さあ……?」

 イリスの質問にデルフィニウムは首を傾げた。


「まあ、行ってみりゃわかるか。デルフィ、メリアとミャーリーを呼んでくれ。すぐに行こう」

「わかったの」

 デルフィニウムは執務室から出て行った。


「パーティーか……。ふふ、まあいいだろう」

 普段出不精で人の集まりはあまり好きではないイリスだったが、この誘いだけはどういうわけか楽しみに思えていた。


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