黙って殺されるオレ達じゃないぞ!
地下牢を三人の叛徒――王国兵とともに歩いて行く。
立場上、手錠は嵌められてはいるがそれ以外に身体の拘束はされていない。その気になればノームや獣人の兵士三人を一掃することは容易いが、そのようなことは考えてもいない。メリットがないからだ。
あの日以来、目覚めた捕虜に対して最初に話をするのは彼女の役割になっている。
自分たちの置かれた状況、これから自分たちを待ち受ける運命。それらを説明して納得させる。彼女にしかできない役割だ。
この日も二人の捕虜が目覚めた。ゴブリンとオークの兵士だ。彼女自身もよく見知っている顔だった。真面目で優秀な兵士だという評価だったが、そういう兵士ほど自らの置かれた状況に納得いかず、自暴自棄になってしまうというのはこれまでの経験でわかっていた。
難しい仕事になるかもしれないな……。
そんなことを考えながら兵士に案内されて地下牢の一室の前に立った。
牢の扉が開けられ、長身の彼女は背をかがめて中に入っていった。
その瞬間――
「叛徒どもめ! 黙って殺されるオレ達じゃないぞ!」
「うぉぉぉぉ……!」
中にいたゴブリンとオークが突然殴りかかってきた。
しかし、彼女はそれを軽々と受け止める。実力差もあるが、こういう状況はこれまでにもよくあったからだ。
「ふふ、威勢がいいな。そうでなくては」
彼女が殴りかかってきた相手にやりと笑うと、彼らが殴りかかろうとした相手が誰なのか気づいたゴブリンとオークは跳ね上がるように背筋を伸ばして胸に手を当てた。帝国軍の敬礼のしるしだ。
「ラミア隊長……! ご無事でしたか!」
ラミアが右手を軽く挙げると、兵士達は手を下ろして休めの姿勢を取った。
「そう畏まることもない。もう私はこのヴレダ要塞の司令官ではないからな」
「するとやはり、この要塞は敵の手に……」
「ああ。全員捕虜となった。私も、お前達もだ」
それを聞いた二人は驚き、気落ちしたようだが、我を忘れて暴れ回るということはなかった。




