ミャリアすごいにゃ!
そのあたりはまだ街の建設が始まっておらず、建設資材が少し置いてあるだけで残りは空き地となっていた。
その空き地の中央部では巨大な人間が暴れており、その手足に結びつけられたロープを何人もの兵士達が持って巨人を制圧しようとしていた。
巨人族――。この世界の巨人は一般的に我々が思うほど大きい種族ではなく、三メートルくらいの大きさの種族だ。
最初にイリスの仲間として斡旋された盗賊達のうちの一人であったダラーは二メートル半くらいしかなかったから、少し大柄の人間と言われても通用するくらいだった。
しかしそのパワーは人間を凌駕する。
今暴れている巨人は巨人族の中では長身の方なのだろう、四メートルには届かんとする巨体と長い手足によって制圧しようとする兵士達を翻弄していた。
「このっ、暴れるな!」
「ええい、おとなしくしろ!」
「グワァァァァァァァァ!」
巨人が両手を振り回すと、その手首に結びつけられているロープが大きくしなってその先端に取り付いていた兵士達を振り回す。
「うわっ、わわわわ……!」
それによって何人かの兵士は吹き飛ばされたが、まだ何人かは必死にロープにつかまっている。
しかしこの状況で体重、筋力ともにまさる巨人を抑えることはできないだろう。
周囲には多くの兵士が集まっているが、巨人の勢いに手を出せないようだ。
「勇者さま、ここは私が」
メリアがイリスに耳打ちしてきた。
「え? いけるの?」
思わず聞き返した。今のメリアは鎧も剣も装備していない。メリアが常識外れに強いことは十分把握していたが、武器もなしにあの暴れる巨人を制圧できるとはとても思えなかった。
「もちろんです。すべては正義のために」
という声を残してメリアは今も暴れる巨人に飛びかかった。
一瞬だった。どうやったのかはよくわからない。何せ速すぎて誰もその目に留めることができなかったからだ。あるいは、ミャーリーになら見えたかもしれないが。
巨人が大地を踏みつける音よりも数段大きな音と、岩場だらけの要塞内を大きく揺らした衝撃を感じたかと思うと、土煙の向こうでは巨人がうつ伏せに倒れていた。
巨人の右腕は背に回され拘束され、頭は踏みつけられている。
もちろん、それを行っているのは無手でドレス姿の可憐な少女、メリアである。
「ウガァァァァッ、ガァッ!」
制圧された巨人がもがこうとするが、メリアによってがっちりと地面に縫い付けられており、全く動くことができない。
「ふぎゃー! ミャリアすごいにゃ!」
あまりに見事な制圧術に、ミャーリだけでなくイリスも周囲で様子を見守っていた兵士達も感嘆の声を上げた。




