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双つより四つでしょう! ~双子と別れたら四つ子の彼女が出来ました~

メイン執筆の息抜きに書いた、脳死ラブコメです


色々と考える事が多い作品の息抜きで書いたので、何も考えないで書きました


ちょっと書きたかった感じと違くなったんですが、修正の気力はないのでこのままです


何も考えないでお読み下されば幸いです






 俺こと一ノ瀬伶(いちのせれい)は、高校一年生の終業式の日、中学から付き合っていた彼女にフラれた。


 普通のカップル……ではなかった。俺は二人と付き合っていたのだから。


 隠れて二股をしていた訳ではない。三人で付き合う事は合意の上だった。



 俺は、双子と付き合っていた。


 

 中学三年の時、双子の姉である双葉悠里(ふたばゆうり)に告白された。


 双子のどちらにも同じくらいに好意を抱いていた俺は、妹である双葉優奈(ふたばゆうな)の顔がチラつきつつも告白を受入れ、悠里と付き合う事に。


 その翌日だった。


 悠里に呼び出され向かうと、そこには悠里の他に優奈もいた。


 恋人宣言でもするのだろうと思ったのだが、優奈の口から飛び出した言葉は想像の斜め上を行っていた。



「あたしとも付き合ってほしい」



 気の強い優奈が珍しく顔を赤くして、目を潤ませながらそう言ってきたのには驚いた。


 隣で見守る悠里は、彼氏が告白を受けたというのにニコニコするだけだった。


 もうすでに悠里という彼女がいる以上、断るという選択肢しか浮かばなかった。


 そのため心苦しいが、優奈の告白は断ろうと声を出し掛けた時、悠里がとんでもない事を言い出した。



「三人で恋人になれたら、きっと楽しいよ」



 優奈とは違い、少しだけ臆病な悠里がそんな事を言うものだから酷く混乱したもんだ。


 俺が良ければ、二人は三人で恋人関係になる事を望んでいるという。



 なにそれ天国? こんな可愛い双子の二人と恋人に? 断る男なんて存在するの?


 もうオッケー即答でした。


 一人より二人ですよ。幸せが倍ですもん。



 そんなこんなで幸せな中学の1年間。周りから色々言われたり、ほんっと色々あったけど仲良くやってこれたと思ってます。


 それは高校生になっても続いたのですよ。


 高校一年の秋頃までは。




 終業式が終わり、明日から春休みという日。


 俺は悠里と優奈に呼び出され、校舎裏のいかにもな場所に来ていた。



「伶くん、あたし達別れよっか」

「そうね、その方がいいと思うわ」


「そうだな……別れよう」


 開口一番、二人はそう言った。表情には悲壮感も罪悪感もない、感じられたのは義務感だけ。


 彼女達の心が離れていた事には、秋頃から気づいていた。


 そしてつい先日。俺は決定的な場面に出くわす。


 二人が、とある男と仲良さそうに腕を組んで、とある建物に入っていった瞬間だ。


 入る瞬間、俺とバッチリ目が合ったにも関わらず、二人は表情を変えずに建物に入っていった。



「一つ聞くけどさ、あの男は何?」

「「…………」」


「浮気でしょ? 別れを切り出すのは俺の方じゃない?」

「はぁ……めんど」

「だる~」


 悪い事をしたとは思っていなさそうな、どこか済ました表情の二人。


 その態度にも腹が立つ。面倒臭そうに溜め息を付く優奈に、髪を弄りながら怠そうにしている悠里。


 誰の影響なのか、綺麗だった黒髪は金に染まり、どこで覚えたのかケバい化粧。


 耳にはピアス、指には俺がプレゼントした物ではない品のない指輪。


 俺が好きだった二人の面影はまるでない。



「お前達、男とカラオケに入っただろ!? カラオケのような密室で何を!」


 なんだカラオケかよ……なんて思わないでくれ。相当だよ? カラオケも。


 高校生カップルのカラオケってさ、歌うと思う? いや歌いはするけどさ。



「そうです浮気です~ごめんなさ~い」

「でも心は離れてたんだし、浮気って言わないんじゃない?」


「あ、そっか! なら浮気じゃないじゃない、あたしの謝罪を返しなさいよ」

「でも面倒だし、謝って終わらせちゃおうよ?」


 なんて言い草だ。見た目と共に性格が変わってしまったかのようだ。


 これが本性だったのか。残念というか、知らなかった自分が情けない。


 誠意のない謝罪なんて意味ないだろと、そう思ったと同時に下品な男の声が聞こえてきた。



「謝る必要なんかねぇーよ!」


 物陰で様子を伺っていたのだろうか? 急に男が飛び出てきたと思ったら、二人を庇うかのように立ちはだかった。


 第一印象はチャラ男。金髪にピアス、制服は着崩して胸元おっぴろげー。


 まぁしかしイケメンだ。それだけでムカつく、俺はフツメンだからな。



「「栗栖(くりす)きゅんっ」」


 目がハートになった双子の二人。そういう表情はそっくりで見分けが付かない。


「クリスキュン? 外国の方ですか?」

「ちげぇーよ! 日本人だ!」


 冗談でふざけてみたが、存外効いたのかクリスキュンの怒気が膨らんだ。


 この男、名を鱒沢栗栖(ますざわくりす)。アダ名は絶対クリスマス。


 この男が、先日目撃した浮気相手の男だ。



「はぁ、それで? なんですか急に現れて? まだサンタの時期には早いですよ?」

「なんだよサンタって? お前がウジウジめんどくせー奴だからよ、飛び出しちまったぜ」


 ウジウジなんてしていたつもりはない。数日前までなら、そりゃもうウジウジのウジウジだったもんだけど。


 悠里と優奈は女の顔で栗栖に近づくと、腕を取って自身の体に引き寄せた。



「コイツらはもう俺の女だから、元カレ君はどっか行ってくれる?」

「あんっ」

「ん……」


 見せつけるように、栗栖は両手で双子の胸を揉みしだく。


 そんなに強く揉んで大丈夫なのか? 痛くないの? ええそうです、俺は二人のを揉んだ事ありません。



「どうだ? 羨ましいだろ? お前、何もしなかったらしいじゃん?」

「ふ、ふん! そんな貧乳に興味がなかっただけだいっ」


 まぁ貧乳は言い過ぎかもだが、そんな大きくはないだろう。あの子とは違って。


 羨ましい……確かに数日前なら、そう思ってハンカチをギリギリと噛んだ事だろう。



「ひ、貧乳ですって!? そんな言われるほど小さくないわよ!」

「そうだよ! 伶くん知らないからそういう事が言えるんだよ!」


「おいおい落ち着けよ? アイツも羨ましがって……なんだよその顔?」


 俺はどういう顔をしていたのだろう?


 自分では分からないが、早く終わってほしいと思っていた事から、怠そうな顔でもしていたのかもしれない。


 それがどうやら、栗栖には気に食わなかったようだ。



「んだよツマラネェな! お前が悔しがる顔が見たかったから、ワザワザ来たってのによ」


 性格悪っ。なんでこんな男に惚れたのだろう? やはり顔か? 顔なのか?


「ほら羨ましがれよ? ほんとは触りたいんだろ? なぁ?」


 形を変える胸と表情を赤くしていく双子を見て、情けなくも男の本能が顔を出し掛けた時だった。




「はいは~い、胸なら私かなぁ」


 俺の背後から急に現れた美少女。


 この場にいる全ての者は、急に現れた美少女に驚きつつも、すぐにその目は胸元に吸い寄せられた。


 歩く度にゆさゆさと擬音が聞こえてきそうな程に大きな胸。


 とても双子と同級生とは思えない凶器を持った美少女は、俺の隣まで来るとニヤリと笑い――――


 ――――俺の手を掴み、そのまま自身の胸へと押し当てた。



「「「はぁ!?」」」


 双子達の驚く声が轟いた。


 そんなのお構いなしにと、美少女は優しく微笑みながら俺の目を見た。



「伶ちゃんどう? 感想は」

「や、柔らかいです」


「んふっ。向こうみたいに揉みしだいちゃう?」

「それはまた……後で」


 呆気に取られている双子達を他所に、急に現れた美少女、四谷緋色(よつたにひいろ)はエスカレートしていく。



「じゃあこういうのはどう? ぎゅ~っ」


 手を離し今度は腕を取ると、その大きな胸で俺の腕を挟みだした。


 完全に埋もれてしまった俺の腕、これは双子の大きさでは絶対に出来ない事だ。



「ほれ、言ったれ言ったれ~」


 手をグイグイさせながら、僅かに頬を赤くした緋色はそう言った。


 すかさず俺は考えていた事を、栗栖の目を見ながら言ってやる。



「う、羨ましいだろ!? めっちゃ柔らかいぜぇ!? そんな貧乳より、こっちの方が断然いいねぇぇ!」


「す、すげぇ……」

「「ちょ、ちょっと栗栖くん!?」」


 ああスッキリ。プレゼントを欲しがる子供のような顔をする栗栖が見れて大満足。


 そして更に追い討ちを掛ける。俺の腕が幸せの悲鳴を上げている中、背後から非難するような声が聞こえてきた。



「ちょっと緋色、それはやり過ぎよ」

「少しだけ大きいからって、いい気にならないでよね」

「ズルい。私だって頑張れば出来る」


 背後からゾロゾロと現れた三人の美少女達。一人が俺から緋色を引き剥がすと、すかさず残りの二人が俺の両腕を取った。



「ちょ、ちょっと楓華(ふうか)未唯(みい)! アナタ達ねぇ!」


 出遅れたと慌てているのは、四谷葉央(よつたによお)


 そんな葉央の事など無視して俺の右腕に抱きついているのは四谷楓華、左に抱きついているのは四谷未唯だ。


 彼女達は名字から分かるように四姉妹。


 四姉妹なのだが、彼女達は他の姉妹とは少し違うところがある。



 彼女達は、四つ子なのだ。



「え~ちょっと~、もう私の番は終わりなの?」


 一番上のお姉さん、四谷緋色。


 金髪ショートカットの彼女は、姉妹の中で一番胸が大きい。 


 一番上なのだから一番シッカリしている……とは言えない元気娘なトラブルメーカー。



「あのね緋色、アンタが一番いい思いしたんだから、後は譲りなさいよ」


 茶髪でセミロング程の髪をサイドテールにしているのは、次女の四谷楓華。


 姉妹の中では一番気が強い子で、他の姉妹曰くツンデレらしい。



「いや、離さない。葉央は後で、末子なんだから」


 焦げ茶色セミロングの髪をストレートにしている、少しだけ物静かな子は三女の四谷未唯。


 本人曰く、一番の魅力は脚だという事。姉妹の中でも一番身長が高いので、脚も長い。



「たかだか数分の違いでしょ!? いいから退いてよ!」


 普段はクールだが、姉妹の中で一番感情の起伏が激しいのが四谷葉央だ。


 そんな葉央は黒髪のロングストレートをポニーテールにして結んでいる。



 四人とも微妙に違いがある。胸や身長も違ければ、性格だって全然違う。


 同じなのは、その可愛らしいお顔。髪型が同じだったら、絶対に見分けられない。


 表情は違うけど、笑った時の顔なんてもうソックリ! ソックリというかコピーだろうというレベル。


 そんな美少女四つ子が一堂に会すれば、双子なんて霞んでしまう。



「くくく……それでクリスキュン? どうだい? 羨ましいだろう?」

「う、羨ましくなんかぁ……う、うらやまぁ……しぃぃぃぃ!!」


「ちょっと栗栖くん!? 今なんて言ったの!?」

「鼻の下伸ばしてんじゃないわよ! あたし達の方が可愛いでしょ!?」


 不機嫌になった悠里と優奈。それに気づかない栗栖は羨ましそうに四つ子を眺める。


 悠里も優奈も美少女だ。四人より可愛いとか、四人には劣るとかそんな事はない。


 でもあんな性格だったのだと気づいた時から、俺の目には圧倒的に四人の方が可愛く見えていた。



「あのっ! 四谷さん達!」

「「「「…………」」」」


 急に栗栖が四人に話し掛けた。


 聞こえているハズなのに四人はガン無視。目すら向けようとしなかった。



「そんな不細工な男より、こっちに来ない? 俺のがイケメンだろ?」


 まぁそれは認めよう。癪だが、そればかりは認めざるを得ない。


 俺が不細工なんじゃなくて、栗栖が無駄にイケメン過ぎるのだ。


 そんな栗栖の言葉すら無視する四人だっだが、一人だけ我慢できないように声を出した。



「――――ッチ。うっざ、この性格不細工」

「は……?」


 楓華だった。あからさまに不機嫌さを出した楓華は、鋭い視線で栗栖を睨み出した。


 それを皮切りに、栗栖に目は向けないものの他の姉妹も騒ぎ出した。



「というかアレ、イケメン? 私には、レイの方がイケメンに見える」

「う~ん、感性は人それぞれだからねぇ」

「私には下品にしか見えないわ」


 聞こえるように言うものだから、栗栖の顔が引き釣った。


 気づいているのかいないのか、四姉妹は追い討ちを掛ける。



「それに絶対、伶君の方が運動出来るじゃん」


 そう楓華が言えば。


「どこを見てそう判断したの?」

「だってあの馬鹿みたいに開いた胸元、貧弱過ぎない?」


「え~楓華ったら見てるとこは見てるんだね」

「べ、別に見たくて見たんじゃない! 見えたのよ!」


「というか、レイの体つきを知ってるの?」

「抱きついてるんだから分かるわよ、ガッシリしてるでしょ?」


「「「確かに」」」


「お、俺が貧弱……!?」



「頭も絶対に伶の方がいいわよね」


 そう葉央が言えば。


「どうして分かるの?」

「あんな馬鹿そうな格好して頭いいとかあり得ないわ」


「「「確かに」」」


「お、俺を馬鹿だと……!?」



「レイの方が身長も高い」


 そう未唯が言えば。


「「「確かに」」」


「お、俺はチビじゃねぇ!」



「伶ちゃんの方が~……う~ん……うん! 大好きっ!」


 そう緋色が言えば。


「「「おいコラ、ズルいぞ」」」


「あ、あたしなんか大大好きだし!」

「なら私は大大大好き」

「大大大大好き。私の勝ちね」


「「「ズルいぞ末子」」」



「お、お前らってどういう関係なんだ!?」


 それは気になるだろう。でも自分も双子と付き合っている癖に、分からないのかな?


 栗栖の叫び声に反応した四人は、互いに顔を見合わせた後、俺を抱きしめこう言った。



「「「「彼女だけど」」」」


「は、はぁ? なんで4人も彼女がいるんだよ!?」


「それブーメランって奴だよね~」

「アンタだって双子と付き合ってるじゃない」

「四つ子全員が彼女でも、おかしくない」

「というかアナタに関係ないでしょ」


 蚊帳の外に置かれていた双子達から、厳しい視線が飛んできた。


 何を思っての視線かと思ったら、自分達の事を棚に上げた笑える戯れ言だった。



「彼女って、あんた浮気してたの!?」

「いつから? 酷くないそれ」


 どの口が言うのか。流石に反論してやろうと思ったが、反論したのは俺の彼女達だった。



「流石にそれはなくないかな? 浮気したのはそっちでしょ?」

「どの口が言うのよ? 呆れて物も言えないわ」

「頭おかしい。被害者面しないで」

「言っとくけど、私達はつい最近だから、アナタ達の方が先に裏切ってるのよ」


「な、なによ。アンタ達は黙ってなさいよ」

「今は伶くんと話してるんだから」


「黙ってられないよ。彼氏の事だもん」

「というかさ、元彼女なんだからあたしの彼を名前で呼ぶの止めてくれない?」

「あなた達にはそこにいるでしょ、彼氏」

「さっきから呆けてる彼氏を連れて、さっさと帰ったら?」


 四対二、勝てる訳がない。内容的にも勝てる訳がないのだが、口が回る楓華に頭が回る葉央もいるのだ。


 そろそろ頃合いだろう。俺的にももう十分だし。



「なぁもういいだろ? 俺とお前らは別れた。お前らが誰と付き合ってもどうでもいいし、俺が誰と付き合ってもどうでもいいだろ?」


「「……」」


 どこか納得してない表情をする二人だが、本当にもうどうでも良かった。


 正直、未練的なものはあった。


 悠里と優奈が栗栖と腕を組んで歩いてる時を見た時は、足元が崩れて地の底に落ちていくような感覚に陥った。


 そこから引き上げてくれたのが、四谷姉妹だ。



「じゃあせーので」

「なかなか言う機会ないわよね」

「最初で最後」

「早く済ませましょ」


 彼女達に会わなければ、俺は今でもウジウジとしていただろう。


 今日の事だって、彼女達がいなければこんな冷静でいられたハズがない。



「「「「せーのっ」」」」


 彼女達四人は、俺の事を大事そうに抱きしめたまま、声を揃えて言った。



「「「「この人はもう私達の男だから、元カノ君達はどっか行ってくれる?」」」」



 ついさっき聞いたようなフレーズで、四谷姉妹は双葉姉妹を睨み付けた。


 苦虫を潰したような表情をする双子は、悔しそうにする栗栖を放ってその場を去っていった。


 慌てて二人を追いかける栗栖。その姿を見てると、長くはないだろうと思う。



 ――――

 ――

 ―



「――――はぁ~スッキリした! ありがとう皆、お陰で吹っ切れました」

「「「「…………」」」」


 三人がいなくなった校舎裏で、俺は四人にお礼を言っていた。


 どこかつまらなそうにする四人。それも当たり前だった。


 俺達は演技をしていただけで、彼氏彼女の関係ではないのだから。


 やっと解放された。そう思っているのではないだろうか?



「ねぇ、あの二人とは別れたんだよね?」

「そう……ですね。さっき正式に」


「じゃあ……もう我慢しなくていいわよね」

「我慢? すみません、やっぱり我慢させてましたよね」


「もう敬語やめて? それ、いやだ」

「い、嫌って言われてましても……」


「契約はここまでよ? それで報酬だけど……」

「あ、そうですよね。あの、ほんとありがとうごさいました」



 そう、これは契約だった。


 双子の浮気現場を見て落ち込んでいた時、この四人が声を掛けてくれた。


 誰でもいいから想いをぶちまけたくなった俺は、泣きながら四人に内容を話した。


 四人は真剣に話を聞いてくれて、俺はどうしたいのかと問われた。


 二人を取り戻したいのか、それとも復讐したいのか。


 俺は、二人を忘れたいと言った。


 それなら簡単だと彼女達は言った。なんて事はない、新しい彼女を作って昔の彼女なんて忘れてしまえばいいと。


 確かにそうだなと笑っていると、彼女達は言葉を続けた。



 「でも私達は双子と同じにはなりたくないから、とりあえずは契約だね」



 契約とは何だと思ったが、四人は一先ず彼女の振りをして双子と会ってくれるという。


 浮気現場を見た以上、いつかは双子と会って話をしなければと思っていた。


 そこに彼女として立ち合ってくれるというのは、情けないが心強かった。


 それに、悠里や優奈、そして栗栖に一泡吹かせるという意味でも気分が高揚した。


 学園で人気な双葉姉妹。それを上回るほどの大人気な四谷姉妹を彼女として連れていけるのだから。


 そして先程のやり取り。自分でも上手くできたし、四人の演技も凄かった。


 胸を押し付けられたり抱きつかれた時はどうしようかと思ったが、目の前で悔しそうな顔をするクリスキュンのお陰で平静を保てた。


 彼女達には感謝してもしきれない。


 正直、完全に双子の事を忘れられたとは言えないが、もう未練はない。


 新しい彼女でも作ろう。出来れば目の前にいる四つ子のような、素晴らしい女性がいいものだ。


 そう思いながら、俺は契約に対する報酬の話を切り出した。




「それで、報酬ですけど……」


 報酬は後払いとの事だった。何を要求されるのか分からないが、出来れば俺が叶えられる範囲でお願いしたい。



「それはもう決まってる」


 珍しく未唯さんが顔を赤くしていた。


「絶対にもらうからね、報酬」


 楓華さんは相変わらず、強気な態度だ。


「簡単な事よ。あなたは頷くだけ」


 クールな葉央さんは、恥ずかしそうに視線を逸らした。


「ドキドキするにゃ~」


 緋色さんはいつもと変わらない、楽しそうだ。



「あの、お手柔らかに……」


「じゃあせーのでいくよぉ! せ~のっ」


 長女の緋色さんが代表して、声の統一を図る。


 四人同じ願いなのだろうか? あまりお金はないぞ……なんて思っていたのだが。



「「「「私達四つ子と、付き合って下さいっ」」」」



「……はい?」



「はいって言った! 言ったよね楓華」

「言ったわね。ちゃんと録った? 未唯」

「バッチリ、録音できた。葉央も聞こえ……たみたい」

「やった! やったぁ! うふふっ」


 葉央さんが壊れている。あれだけクールだったのに……感情の起伏とはこういう事か?


 いやそれは後でっ!



「ど、どういう事!? 付き合うって何!? なんでそうなるの!?」


「えっと、報酬だよ?」

「まさか、私達にタダ働きさせるつもりなの?」

「それは酷い、頑張ったのに……」

「そんな~……別れるまで待ってたのにぃ……」


 彼女達の報酬になってない。それは俺の報酬ではないだろうか?


 彼女達四人に彼女の振りをしてもらった報酬が、彼女にする事?


 というか葉央さんが泣きそうだ、ヤバい。



「やっぱりアレかなぁ? 別れたばっかりで、すぐ他の女に行くのはどうなの? って考えてるのかも!」

「別にいいのに。それなら、少しだけ時間を置きましょ?」

「むぅ、仕方ない。じゃあ一週間――――」

「――――四日! 四日だけ!」


「「「……じゃあ四日だけ待とう」」」


 冗談じゃないのか? 本気で俺の彼女になろうと言うのか?


 なんでそこまで俺に……と思ったら、都合のいい理由があったのだが、それはまたの機会に。


 ともあれ四日後、俺には彼女が出来るそうだ。


 というかなんで四日後なのだろう、よく分からない。



「じゃあ四日後ね! 四日後からは彼氏としてよろしくぅ」

「絶対に浮気しないし、後悔もさせないわ」

「双子なんか目じゃない。四つ子なんだから」

「コホン。まぁそういう事よ、宜しくね」


「あ、あぁ……はい」



「「「「双つの思い出なんて、四つがすぐに塗り潰すよ!」」」」



 まぁ、双つの倍だもんね。


 何年後かに俺は思ってるのかなぁ。


 双つより四つでしょう! なんて。

もっと単純にイチャイチャラブコメを書くつもりだったのですが、自分が書くとどうしてもこんな感じになってしまいます


最初から好感度マックスな女の子達とイチャラブさせたかっただけなのに、流行りが頭を過ったせいで面倒な事になりました


そもそも短編は苦手なようです

宜しければ評価や感想、お待ちしております


お読み頂き、ありがとうございました

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― 新着の感想 ―
[一言] そして数年後、大学生となった主人公の傍らには8つ子の美人姉妹の姿が!
[一言] 良き(^ ^)
[一言] 草ぁ! 五等分の花嫁ならぬ四等分の彼女ですか 短編ならではの勢いがあって面白かった
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