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第81話 守護龍ファミリー

「あ、有り得ねェ…」


部屋の中を見て俺は思わず呟く。


なんで前世で発展した家電があるんだ?

エアコンやテレビだけじゃねェ…よく見りゃ部屋のあちこちに見覚えのあるモンが転がってやがる…


「ふふ、驚いてもらえたようだ。さぁ、中に入りなさい…あ、ちゃんと靴は脱ぐんだよ。」


「お、おう…」


「へー靴を脱いで入るんですか、東方の文化に似てますね。」


エマはキョロキョロしているが動揺している様子もねェ…

だが、それも当然か…俺はあるはずが無いと分かっているからこそ動揺したもんな。


「あらあら、思ったより早かったわね〜!座って待ってて下さいな〜、すぐにお夕飯できますからね〜。」


緑髪の女はタッパだけじゃなく色々デカい、そして間延びした話し方もあってか緩い、それが第一印象だった。


「お前たちもコタツで待っているといい。」


いつの間にか銀龍と白龍と共にコタツに入っていた天龍がそう言う。


「それじゃあお言葉に甘えて…はわっなんですかこれ!あったか〜い…」


エマはコタツに入ると途端に寝そべって取り込まれてしまった。


「小せェから俺ァいい。」


「それならば大人同士と子供同士で分かれるとするか。」


「あれ、私子供の方に入れられてます?」


エマはそう言いながらもコタツから動く気配はない。


「あら、良いじゃないですか〜じゃぁオーちゃんとシルちゃんは女の子同士仲良くするのよ〜?」


「お母さん呼び方!!恥ずかしいからやめ「あ、エマさんとリューゴさんお茶どうぞ〜?」


「あ、お構いなく。」「おう。」


「お母さぁん!!」


銀龍は立ち上がって涙目で抗議する。


「フフ、私は気に入ってるけど『シルちゃん』。」


「ちょ!お姉ちゃんまでぇ!!」


「フフ、なんだか守護龍と言っても話してみると私たちとそう変わらないんですね。」


エマがそう言う、確かにやり取りで家庭内のカーストが見て取れる。


「そりゃそうですよ、なんなら私たちからしたら貴女達人間の方が私達に似てるなーって思いますもん。」


銀龍がそう言いながらモゾモゾとこたつの中に戻る。


「認めたくないけど、人間の作るモノはどれも実用性に富んでいて爪先くらいの称賛なら与えてあげます。」


白龍がお茶を啜りながら高飛車な発言をする。


「あら〜そんなこと言って〜、オーちゃんこの間もどこそこの服が可愛いから買ってっておねだりしてきたでしょ〜?」


「……忘れましたね、そんな昔のこと。」


「お姉ちゃん耳赤いですよ?」


銀龍が横からニヤニヤしながらそう言うと額にブスリと白龍の爪が突き刺さる。


「あだァ!?!?」


「フン、生意気な妹にはお仕置です。」


俺と天龍はそんな姦しい女たちの会話を眺めながら隣の和室で酒を酌み交わしていた。

その中で天龍は驚くべきものを持ち出してきた。


「こりゃァ…!」


「ふふ、さすがにお前は知っているか…そう、日本酒だ。」


日本酒、それも俺の知っている銘柄だ。


「…この家にあるモンは…」


「お前の考える通り、異世界の物だ。」


「!!…やっぱりか…」


「うむ、いつからここにあって、どこから持ってきたのか、そういったことは一切分からかった…何せ、私が生まれた時からあったからな。」


「何…!?」


「ちなみに私たちの中で1番若いシルですら歳は300を越えている。使い方やらは千里眼で異世界のことを覗いて知ったのだ。」


「千里眼…」


「龍の眼に備わっている権能の一つだが…その様子だとお前も使えんのだろう?」


「も…?ってことは…」


「ああ、ごく一部の才ある者にしか使えん…我が家で使えるのは私だけだ。」


「そうか…異世界、俺の世界のことも見れるのか。」


「見れる…とは正確には言い切れん、千里眼はこの世界のことならばなんでも見れるが、異界とは無数に存在する…それこそ星の数ほどだ。その上その中から好きなものをどれかひとつを選んで見る、ということはできん。」


「なるほど、完全にランダムってことか…」


「すまないな、期待させておいて。」


「いや、前の世界に未練はねェ。」


「そうか…これからどうするつもりだ?」


「とりあえずはアズラエルとか言うヤツをぶっ飛ばす。」


「アズラエルか…それはまた厄介な奴に目を付けたな。」


「厄介?」


「奴の魔法は『洗脳と催眠』だ、何かしらの対策が無ければ…今のお前では為す術なく負けるぞ。」


「あァ?」


俺の殺気が溢れ出る。

ビリビリと身を焦がす程の殺気を浴びても天龍は顔色ひとつ変えずに徳利に注いだ日本酒を飲み干す。


「悪く取るな、別にお前がヤツより弱いと言っているわけじゃない、ただ相性の問題だ。」


その言葉に俺が更に食ってかかろうとすると視界が何かに塞がれた。


「ウチで喧嘩はダメよ〜?」


「……悪かった…」


「うふふ、ちゃんと謝れて偉いわ〜!」


「チッ…調子狂うぜ…」


「ふふ、うちの家内はやるだろう?」


「フン。」


誇らしげにそう言う天龍にムカつくが、腹が立っていたとはいえ俺がアッサリ後ろを取られたのも事実故に口を噤む。


母龍が天龍の隣に座ると丁寧に三指ついて頭を下げた。


「改めまして、地龍アイナテーレと申します〜。」


「…リューゴだ。」


「うふふ、あなたもリューゴさんもお夕飯できたから一緒に食べましょう?」


挨拶もそこそこに地龍は立ち上がって隣の部屋に歩いて行った。


「アズラエルの話は食後にしよう。」


「分かった…」


「さて、じゃあ向こうの部屋に机を出すのを手伝ってくれないか?」


「……チッ。」


頭をワシワシとかいて舌打ちしながらも、渋々食卓のセッティングをしてみなで鍋を囲む。


「じゃじゃ〜ん!今日は魔国産ワイルドボアのモツ鍋よ〜!」


「「「おぉ〜!!!」」」


白銀姉妹とエマはすっかり意気投合している。


ただ面倒なだけだと思っていたが、目の前で白銀姉妹とエマが鍋の具材を取り合っているのを見ているとふと思う。


「……悪くねェな。」


俺がそう言って、よく味の染みたモツを口に放り込むのを天地夫婦は嬉しそうに眺めていた。

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