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第80話 空の王

「これからどうするかなァ…」


「アズラエルの所在も未だ分からず、ですもんね〜。」


「傷を癒すってんならやっぱり動かずにジッとしてるかもしれねぇなァ…」


「となると…山、ですかね?」


「可能性としちゃ高いな、空も海も有り得なくはないが…魔力が豊富となると魔人族がウヨウヨいる陸地の方が効率的なはずだ。」


「濃い魔力を放つ山を虱潰しってことですか、骨が折れそうですね…」


「文句は隠れてるヤツに言うんだな。」


そんな軽口を言い合いながらグロスへリアへ向かう空路を戻りながらそれらしい場所を探す。

そしてゆっくり空を進みながら俺はかなり濃い魔力を垂れ流している山を見つけた。


「……」


「…リューゴさん?」


「ん?あぁ…俺の勘も捨てたもんじゃねェな。」


「えっ!?見つけたんですか!?」


俺は黙って山に視線を向ける。


「グロスへリアのすぐ近くじゃないですか…!?なんで気づかなかったんだろ…」


「俺たちの魔力感知がガバガバになってたからだろうな。」


「なるほど…それにしても、この山から感じる魔力…」


「ああ、相当だなこりゃァ…」


「これが全部アズラエルとか言う奴のものなんですよね…?」


「だろうな、下手したら守護龍とタメ張るぜ。」


「ひえぇ…そこまでですか…」


「ハッハハハ、おめェももう少し鍛えりゃ守護龍と正面から殴り合えるだろ。」


「さすがに言い過ぎですよぉ…」


「……」


「黙らないでくださいよぉ!!」


俺は唐突に手でエマを制す。


「ッ!?…なんですか?」


「なんか来るぞ…上だ!」


2人で顔を上に向けるとそこには翡翠の鱗を纏ったドラゴンが大口を開けて迫ってきていた。


「黒姫!!」


俺が名を呼ぶと黒姫は身を捩ってドラゴンの咬撃をギリギリでかわす。


「野郎…!」


念話(テレパシー)!?も、もしかしなくてもアレは…」


『貴様ら…誰の許可を得てこの空を飛んでいる…!!』


俺の口角がゆっくりと上がる。


「ハッハハハ!最高のタイミングだぜ、死徒の前に準備運動だ…!!」


『人間の分際でなんと不遜な…消し炭にしてくれる!!』


ドラゴンが口を開くと魔力が目に見えるほどの塊に集束されていく。


『ガアッ!!!!』


吐き出されたそれは一筋の光となって俺に迫る、俺は咄嗟に回避をするが光線が俺の肩を一部焼き削った。


「な、に…!?」


「嘘…!?」


その衝撃でバランスを崩し俺は黒姫の背中から落っこちる。


「黒ちゃん!!」


エマの呼び掛けで黒姫が俺を空中で受け止める。


「リューゴさんがダメージを受けるなんて…!しっかりしてくださいリューゴさん!!」


「バカ野郎しっかりしてらァ…心配すんな。」


俺は懐から高級ポーションを取り出してそれを飲み干すと空瓶を投げ捨てる、肩の傷もすっかり元通りだ。


「舐めてたぜ…アイツは今までの守護龍と格が違ぇなァ…!!」


『今の一撃を以て貴様を葬ってくれるはずだったが…存外やるではないか…なるほど、娘達が忠告するだけある…』


「おめェ、アイツらの親か…!」


『如何にも、空の王にして守護龍を取りまとめている…天龍セウヘムルである。』


天龍から放たれる威圧感がビリビリと肌を震わす。


「天龍…空中戦か、相性が最悪だなァ…」


『驕るなよ人間…空の上だろうが、地の上だろうが、貴様ら有象無象を相手にするなど大差ない。』


「ほぉ…?」


俺の額に青筋が浮かぶ。

この羽根付きトカゲ…言うに事欠いて俺が有象無象だァ…?


「エマ、おめェは下で待ってろ。」


「わ、分かりました…なるべく地形が変わるような喧嘩しないでくださいね…?」


「それは約束しかねる。」


「不安だぁ…」


そう言って地上付近までくると、エマは飛び降りる。

そしてすぐに天龍の前に飛び上がる。


「銀ピカと白いのの顔を立てて半殺しで勘弁してやろうかと思ってたが…やめだ、テメェは完膚無きまでにぶちのめす…!!」


『囀るなよ人間風情が、【鎌威太刀(かまいたち)】。』


天龍が大きく羽ばたくと空気の刃が無数に飛んでくる。


「しゃらくせェ!!【鬼葛・壊天(おにかずら・かいてん)】!!」


俺が鬼哭をフルスイングすると圧縮された特大の空気弾は無数のかまいたちとぶつかり爆ぜた。


『む…まさか正面から打ち破るとはな。』


「チッ…(結構力入れて振ったのに相打ち…コイツマジで強ェ…)」


『ならばこれはどうだ?』


念話でそう言うと天龍が空に向けて吼えた、すると雲の隙間からから赤い光が差す。

その正体はすぐに雲を突き破って現れた。


「おいマジか…隕石…!?」


しかもこの大きさ、下手したらここら一帯の陸地ごと消し飛ぶぞ。


『諸共に消えろ人間、【天龍胤(てんりゅういん)】。』


「舐めんなよ…」


俺の周囲に赫い雷が迸る、そして俺は鬼哭を思い切り振りかぶる。


「【赫雷・怒屠滅鬼(かくらい・どどめき)】!!」


鬼哭と隕石がぶつかり衝撃が広がる。

遥か上空だと言うのに地上(した)にまで被害が及ぶ。


「オラァあ!!!!」


俺が鬼哭を振り抜くと隕石も粉々に砕け散る、だが破片の一つ一つもかなり大きく、そのまま小隕石の雨となって降り注ぐ。


「チッ…二段構えの攻撃ってことかよ、【雷轟(らいごう)】!!」


俺の口から放たれた極光は小隕石群を消し飛ばした。

バチバチと余韻の雷が辺りに迸る。


『クックック…ハァーハッハッハッハ!!』


すると天龍が大口を開けて笑いだした。


「あァ…?」


『クックック…いやすまんな、そういきり立ってくれるな。娘達が驚く程に強いと言うのでな、つい()も興が乗ってしまった。』


「……俺を試したのか?」


『有り体に言えばそうなる、いやすまんなハッハッハ!』


俺の中の戦意が一気に萎えていく、なんだよそれ…


『いやはや、まさか今のを防がれるとはなぁ…』


「もし防げなかったらどうするつもりだったんだよ。」


『む?それならそれで仕方あるまい、ここら一帯が無くなるまでだ。』


それを聞いた瞬間、俺の背中に嫌な汗が伝う。


「そうかよ…(龍の価値観は人間とは違うってことか…)」


銀龍と白龍もそうなのか、と考えていると天龍が人の姿になる。


「さて、手荒い歓迎の謝罪も含めて我が家で食事はどうかな?」


「…良いだろうちょっと待ってろ、黒姫。」


黒姫に呼びかけて魔力を探ってエマの元へ向かう。

見つけたエマは被害の及ばないであろう範囲の背の高い木の上でサンドイッチを食べていた、首には双眼鏡がぶら下がっている。


「随分楽しそうな格好してんな。」


「いや〜あはは、こんな戦い二度とお目にかかれないと思うと絶対に焼き付けておかなきゃと思って…えへへ。」


「ったく…おら、乗れ。」


「はい!」


そんな会話をして空中で胡座をかいて座る天龍の元へ戻る。


「む…戻ってきたか、では参るとしよう。その飛竜はなかなか速そうだな、それなら置いていかれることもあるまい。」


そう言って人間の姿のままとてつもない速度で空を飛んでいった。

俺たちも遅れないように後を追う。

そうして数時間ほど飛ぶと、古い遺跡…?あるいは神殿のような場所についた。

入口の前に降りると門のような場所には石壁しか見当たらない。


「ふふ、これは隠匿魔術でな、我々龍族…いや、守護龍にしか解除できんように組んである。」


壁に手をかざすと先程まで確かにあった石壁が奥へと続く通路になる。


「す、すごい…」


エマは思わず感嘆の声を漏らす。


「さぁ着いてきなさい、妻と娘達も首を長くして待っているはずだ。」


「あ?全員いんのか?」


「ハッハッハ!私1人で君を迎えても虚しいだけだろう。」


「…確かに。」


そんなくだらない話をしながら奥に進むと、途中から空気が石造りの遺跡のカビ臭く冷たいものではなく人の家の暖かなものになる。


「…?」


「リューゴさん…なんかここって遺跡って言うより人の家っぽい雰囲気を感じるんですけど…」


どうやらエマも同じことを考えていたらしい。

そんなことをしているうちに天龍が一室の前に立ち止まるり


「さぁ、この部屋だ。」


石造りの門を開け放つと、中には暖房にコタツ、そしてテレビまで完備された部屋にだらけきった銀髪と白髪の女とエプロンを着けて鍋の準備をしている緑髪のタッパのデカい女がいた。

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