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第8話 異世界の鬼VS銀の守護龍

針樹、チビから説明を聞いちゃいたがかなり鋭い、そして硬い。

針樹の枝を握りグッと力を入れると、バキンと音を立てて折れた。


「なんだこりゃァ…針樹は表現が控えめ過ぎるだろ…」


握った感触も、折った手応えも、まんま剣だった。

俺の肌を傷付ける程ではないにしろ、普通人間はまず入りたがらない場所だと思った。


「この依頼書の依頼主は何しにこんなとこへ来たんだか…」


依頼書を見ながらボヤく。

あのチビは依頼書を見てモンスターの存在を知り怯えている風だったのを見るに、依頼主じゃねぇ。

つまりこれだけ危険な森にわざわざ潜り、運悪く強いモンスターに遭遇したヤツがいる…


「随分キナくせぇなァ…」


何かしら良くないことに知らぬ間に巻き込まれているような気がしてならない。

まぁ、俺の邪魔するんなら殴り倒すだけだがなァ…

散歩する感覚でどんどん奥へと歩いて行く。


「……妙だな…チビの説明だとミュルズ大森林はモンスターが多いって言ってたが……」


まるで出くわさない。

こりゃァ何か起きてるのは間違いないな。


「チッ…気まぐれで人助けすりゃこれだ。ほんとにロクでもねぇぜ…」


悪態つきながらも俺は頭を働かせる。


「ここらにもうモンスターのエサになるモンが無くなったか、いやそれはねぇ…植物は豊富、食えるもんもかなりあるはず。だとするなら…モンスター共が近寄らなくなる程の絶対強者が現れたか……これだろうなァ…」


俺はその結論に至る。

そして、それに気付いた瞬間自然と破顔する。

人間だけじゃねぇ、強ぇのがいるかもしれねぇ。


「ハッ…期待外れじゃねぇことを願うぜ。」


俺はとりあえず針樹林一帯を練り歩くことにした。

もう日は沈みかけ、夜の帳を下ろし始めていた。


ーミーナsideー


私はもしかしたらとんでもなく残酷なことをしてしまったのかもしれない。


あの時は無我夢中だったけど、我に返った私は気が気じゃなかった。

夕ご飯時に現れたとっても大きな人、有り得ないくらいたくさんのご飯を食べて驚くべきことにお金は払えないと言ってのけた大胆な人だった。


「お代を頂けてない以上、何か依頼しなきゃと思ってお願いしちゃったけど…よく考えたら思いっきり私の私情挟んだ依頼だし…」


あの依頼はミュルズ針樹林の調査と銘打ってはいるけどほんとは強力なモンスターの排除が目的…とか受付嬢のエレノアさんが言ってた気がする…

これまでたくさん…とは言わないけど、色んな冒険者さん達があの依頼を受けて針樹林に向かったみたいだけど依頼は未だに未達成。


「あの人にその情報を知らせないまま行かせちゃった…これじゃ遠回しな殺人だよぉ…」


でもあの人はBランク冒険者のヌイさんを一瞬で倒しちゃったし、あの魔力の圧は明らかに浮浪者って感じではなかったような気がする…格好は別として…


「うぅ…依頼失敗でもいいから無事で帰ってきてくれますように…」


私はウェイトレスの業務をこなしながら、切にそう願った。


ーside outー


針樹林を進んでいるとやたらと広い場所に出た。



「なんだ…?」


周りを見回す、針樹を薙ぎ倒して作られたスペースのようだ。


「ここで誰かが()ったのか…?」


俺がもう一歩踏み出した瞬間、とてつもない重圧が身体を襲った。


「!こりゃァ…」


俺がやった魔力による威圧、あれを誰かが俺に向けてきてやがる。


「舐めたマネしやがる…」


立ち止まって魔力の発生源を睨みつける。

そこには銀の鱗に覆われた巨大な四足の龍がいた。


『ほう…我が魔力を受けて全く怯まぬか…』


「あァ?おめェ喋れんのか。」


『然り…我こそは守護龍の一柱、銀龍シルヴァリオン。』


「守護龍…?知らねぇが大層な肩書き持ってんだ。強ぇんだろ?」


ニヤリと笑いながら挑発するように言ってのける。


仮初(かりそめ)とは言え我が(ねや)に土足で踏み入りその態度…甚だ無粋である…消え失せろ。』


銀龍が翼を振るうと水銀のような物が散布される。

そして、それらはフワフワと空中に滞空する。


「ハッハハハ!龍とはまだケンカしてねぇ…買ってやるぜおめェのケンカァ!!!!」


言うやいなや俺は()()()踏み込みで銀龍に迫る。


『短慮なり人間。』


銀龍がそう言うと周りに滞空していた水銀の雫が音速で俺に向かって飛んできた。

俺はそれを気にすら止めず突っ込む。

水銀弾はバチバチと俺に当たるが威力はそんなにねぇ。


『やはり短慮…1発で終わると思うな。』


瞬間、横薙ぎの水銀弾の嵐が俺を襲った。

まるで機関銃…いや、横向きの滝みてぇだ。


「う…おぉぉおお!!!」


俺は真正面から水銀の滝を受け止める。

しばらくの間、水銀弾を受け続けていたら急に水銀の動きが止まり銀龍の周りに戻って再び滞空する。

そして銀龍が感心したような声をだした。


『…驚嘆に値する人間だ…小手先の攻撃では傷すらつけられぬか…』


「ハッハハハ!おめェやっぱり強ぇなァ!!この依頼…受けて正解だったぜ!!!」


『ふむ…依頼、か。貴様は冒険者と言うやつか?』


「に、なろうとしてるとこだ。」


『………そうか。』


銀龍は少しだけ考える素振りを見せ、返事をすると体が輝き始める。


「あァ?」


光が収まるとそこには腰まである透き通るような銀髪の若い女が立っていた。


「こちらの姿の方が取り回しが良いのでな、次は玩具を使って遊ぶとしよう。」


そう言うなり水銀が銀龍の手の平の上に集まり、薙刀を形成した。

動作確認の意味を込めているんだろう、それを達人かくやというレベルでブンブン振り回す。


「ふむ、こんなものか。…さて待たせたな人間。」


「気にすんな、楽しみが増えたんだ文句なんざねぇよ。」


そう言って俺は笑う。


「…参る!」


銀龍がそう言った瞬間地が爆ぜ、急接近してくる。

俺は動きに合わせに拳を振るうが、銀龍は薙刀を支えにして棒高跳びの要領で俺の頭上を取りそのまま蹴りを放ってきた。

首を捻ってかわすがボッと強烈な蹴りが頬を掠める。

薙刀を殴りつけるがその反動すらも利用して斬りかかってくる。

腕に魔力を纏いそれを防ぐ。


こいつ…人間の状態での戦い方が異様に上手ぇ…


「ハッハハ人間の状態のが強ぇのは詐欺じゃねぇか?」


「…かつては数多の戦場(いくさば)をこの姿で駆けた故な。」


「ハッハハハハ!根っからのバトルジャンキーじゃねぇか!おもしれェ!!歴戦の猛者を俺がここで喰らってやる!!」


俺が吼えると魔力が爆発的に放出される。


「なるほど…まだ本気ではなかったか…まるで鬼神の如き人間よ。」


「ここからが本場だぜェ銀龍ウウウウ!!!!」


俺が魔力を纏った拳で殴り掛かりそれを銀龍が薙刀の刃で迎撃する。

お互いの武器がぶつかりあった瞬間…


天が裂けた。




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