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第76話 エマの気持ち

感動の再会を経て俺たちは教会の中でシスターにガキどもを救出するまでの経緯を話していた。


「本当に何から何までありがとうございます!!」


「頭を上げてください、当然のことをしたたけですから。」


エマが頭を下げ続けるシスターの肩に手を置く。

シスターは恐る恐る頭を上げ俺の方をチラチラ見てくる。


「…俺がそんなに怖ェか。」


「ッ!?すすすすみません!!」


シスターはシュバッと言う効果音が聞こえそうな速さで土下座をする。


「リューゴさん!怖がらせてどうするんですか!!」


「うるせェ、気になっただけだろうが…」


「シスターさん怯えないでください、リューゴさんは別に怒ってるわけじゃないんですよ。」


「ううう…でも事実、子供たちの恩人に不躾な視線を送ってしまいましたし…」


「構わねェ、慣れてる。」


「フフ、そういうことらしいですから、大丈夫ですよ。」


「ほんとにすみません…」


シスターはそう言いながらエマの手を取って立ち上がる。

そんなやり取りをしていると外からガキどもがワラワラと部屋に入ってきた。


「おっきいお兄ちゃんあそぼー!」


「わたしお兄ちゃんの肩乗りたーい!」


「ずるい!僕も乗るー!」


「みんな落ち着いて、おっきいお兄ちゃん困ってるから…!」


アッシュがチビガキどもを宥めるが勢いは止まらない。


「チッ…外に出てる。」


俺はそう言って席を立つ、そうするとガキどもも俺の後ろにくっついてきた、アッシュもチビガキどものお目付け役として着いてくる。


ったく…ガキは苦手だってのに…


ーエマsideー


窓の外では子供たちが胡座をかいて座るリューゴさんの身体に勝手によじ登って遊んでいる。

それを見てシスターはアワアワしている。


「ああ…助けてもらった上に子供たちの遊び相手までさせてしまって…」


「あはは!気にしなくて大丈夫ですよ、リューゴさんも満更でもなさそうなので!」


「えぇ!?凄く怖い顔してらっしゃいますけど…」


「フフ、そもそも普段は人が寄ってこないので新鮮なんだと思います。」


「あんまりご迷惑おかけしないといいんだけど…」


「あの、シスターさん。」


「シスターさんなんてよしてください、どうぞフラムと呼んでください。」


「じゃあ、私のことはエマと呼んでください、フラムさん。」


「分かりましたエマさん、それで何か聞きたいことでも?」


「はい…子供たちが攫われた時どこにいらしたんですか?」


「………当然、気になりますよね。」


「それは、まぁ…」


「実は、ラムダさんと言う商人の方にお会いしに行っていたんです。」


「へ?ラムダさん?」


「はい…あ!ラムダさんは御二方と同じく人間の方で…」


「顔見知りなのでラムダさんの説明は省いてもらって大丈夫ですよ。」


私は苦笑しながら言う。

あの人、辺境の教会にまで何しに来てたんだろ…?


「そうなんですか、では続けますね、ラムダさんがこの近くの村まで来てらしたので子供たちのおやつを買いに行ってたんです。」


「なるほど…その隙に?」


「はい…帰ってきた時には子供たちは誰一人として残っていませんでした。」


「相手もなかなか大規模な上に凄腕の人攫いも雇ってましたからね…」


「……人攫い…!!」


そう反芻して青い顔をするフラム。


「安心してください、その凄腕人攫いはリューゴさんがぶっ飛ばしちゃいましたから!」


「ほぁ〜あの方は強いんですねぇ…」


「世界最強の男ですからね!」


「そんなにですか!?」


私は窓の縁に両手をついて、外で子供たちに好き放題されているリューゴさんを見る。


「少なくとも、私はそう思ってます…そう思えるだけのものを彼の側で見てきました。」


「……なるほど、エマさんはリューゴさんを慕っておられるんですね。」


そう言ってフラムさんは優しく微笑む。


「今のところ私の片想いですけどね。」


私はなんだか気恥ずかしくて、頬を指でポリポリかきながら言った。


「ふふ、それならエマさんの恋が実ることを祈ってますね!」


フラムさん少女っぽく笑った。


「でも私、実はこの気持ちは別に成就しなくてもいいかなって思ってるんです。」


「えぇ!?な、なんでですか!?」


「私の気持ちとは違うんですけど、リューゴさんも私のことをちゃんと大切にしてくれているんです。なんか、それで満足しちゃったって言うか…リューゴさんの中にはきっと愛だの恋だのそう言ったものが今は微塵もないんですよ。今はただ強い人と戦いたい、もっと強くなりたい、きっとあの人はそんなこと考えてると思います。」


リューゴさんたちを眺めながらそう話しているとリューゴさんが盛大なくしゃみをして子供たちに笑われていた。


「そういうものですか…私の理解が及ばない世界のお話なのでなんとも共感し難いですが、エマさんのお顔を見る限りきっと悪い関係では無いと思います。」


そう言ってフラムさんは微笑んだ。


「なので、今はリューゴさんの隣に立てるくらい強くなりたい気持ちの方が強いんです。」


「リューゴさんがどれ程お強いのか私には想像もできませんが、きっと私のような戦いとは無縁の者では想像すらできない程なんでしょうね…何せ世界最強ですもんね。」


「その通りです、リューゴさんの隣に立つにはせめて私が世界で二番目に強くならないとなんですよね〜…」


私はわざとらしくショボくれてみせる。


「ふふ、応援してます、きっとエマさんならできますよ。」


「神様からのお告げですか?」


私は少しふざけてそう聞いた。


「うふふ、そういう事にしておきましょう。」


そんなやり取りをして私たちは互いに笑いあった。


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