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第73話 神狼の血統

長く薄暗い石造りの階段を降っていく、そうして短くない時間を歩くと急に外のように明るく開けた場所に出た。

そこはまるでステージを中心に客席が取り囲むように設置されているホールのような造りになっていた。

そしてオークションの客であろうヤツらがひしめいている。


「奴隷オークションてのはこんな大規模なのか。」


「闇オークションに潜入したことはありますけどここまで大規模ではなかったですね…」


「…ほとんどのヤツらの目当てが…」


「アッシュ…神狼(フェンリル)の血を引く少年、でしょうね…」


「だろうな…」


「それで、これからどうします?」


「とりあえずガキを探すぞ、おめェ面識あんなら魔力探れるだろ。」


「はい!」


「チッ…流石に闇市場だけあるな…吐いて捨てるほど人間、いや魔人がいやがる。」


「ですね、では……ッ!?」


エマが目を瞑って魔力感知を始める、だが直ぐに驚いた顔で目を見開く。


「どうした?」


「いえ…アッシュの魔力と似たものを見つけましたが…」


「…なんだ、ハッキリ言え。」


「大き過ぎます…前はここまで膨大な魔力じゃありませんでした。」


「…何かあったか、あるいはされたか…」


「!!」


エマから一瞬殺気が漏れ出る。


「落ち着け、バカ野郎。」


「す、すみません!」


「ひとまず居場所が分かったなら良い、すぐに向かうぞ。」


「はい!」


正攻法じゃまず競り落とすのは無理だろう故の強硬策。

エマの魔力も万全ではない、スピード勝負だなこりゃァ…


「で、場所は?」


「ここより更に下です。」


「まだ地下に潜んのか…モグラになった気分だぜ。」


「あはは…後暗い事情のある場所はだいたい穴蔵ですよ。」


「違ぇねェな。」


ホール内を見回して下に降りる道を探す。

やはり入口に見張りが立っている場所がある。


「…なんでああもあからさまなのかねェ。」


「単純に危機感が無いんだと思いますけど…」


()()()()()()()()()()()()()、ってことか…フン、まぁ今回に関しちゃありがてェ話だがな。」


「ですね。」


そう言って見張りがたつ扉に近付く。

今度の見張りは建物の扉を守ってたスキンヘッド兄弟にくらべて格下も格下、エマの魔力圧にも耐えられないようなザコだ。

だが、今回は騒ぎを起こさねェようにしないとな…


「……どうやって忍び込むべきか…」


「アッシュはきっと大トリに持ってくるはず…だとしても他の子供たちの保証はできません。」


「チッ…いずれにせよオークションが始まる前に潜り込まねェとならんわけか…」


そうして見張りの見える場所で話し合いを続けていると、何やらオークションの主催側がバタついている。


「あ…?なんだ?」


『おい!フェンリルのガキが暴れ出しやがった!』


『は?【呪縛の首輪】はどうした!!』


『ガキの魔力が強過ぎて意味を成さないらしい!!』


下っ端どものそんな話が聞こえてくる。

俺はそれを聞いてニヤリと笑う。


「どうやら今日はツイてるらしいなァ…行くぞエマ。」


「えっ!?見張りはどうするんですか?」


「構わねェ伸しちまえ。」


そう言うなり俺は周りをさりげなく確認すると片方の見張りに近付き知覚できない速度で顎を()()()、そしてエマも俺と同じように見張りを気絶させる。

そしてそのままなんでもないように扉の錠を引きちぎり中に入る。


「ここまでは重畳…エマ、アッシュの様子は。」


「魔力がどんどん膨れ上がってます…!!」


「この騒ぎはそういうことか…?急ぐぞ…()()()()()()()()()()。」


「ッ!!…はい!!」


一瞬エマが息を飲むようなリアクションをするがすぐに嬉しそうに返事をする。

俺たちはさらに下へ続く階段を落ちるように駆ける。

半ば落下するように走った故にすぐに最下層にたどり着く。

そこはホールよりも広く、様々な種族、あるいはモンスターの入れられた大小の檻がまるで建物のように積まれ、並べて置かれていた。


「こりゃァ…もう、ひとつの街じゃねェか…」


「なんてこと…こんなに囚われていたなんて…!」


俺たちが余りの惨状に絶句していると遠くから獣の吼える声が響いてきた。


『ガアアアアアアアアアア!!!!』


「!!」


この鳴き声の主…()()()()()()()()()()()…!!

俺はそれに気付いて自然と口角が上がっていく。

こんな使い方もあんのか…面白ェ…!!


「リューゴさん!この声の主はアッシュです!!」


「何…?アッシュってのはガキじゃねェのか?」


「私も分かりません!ですが近くまで来てハッキリと分かりました、この魔力はアッシュです!!」


「分かった、助けに行くぞ!!」


「はい!!」


2人で檻の上に飛び上がり声の方向へ駆ける。

そして近付いて守護龍と同等の大きさの白毛の狼に気づく。


「あの毛並み…!間違いなくアッシュです!!」


それを聞いて俺は深く踏み込み高く跳ぶ。


「よっしゃァ!行くぞ、【奈落】!!!!」


アッシュの近くに着地すると同時に俺たちの周囲の地面から雷が木のように生える。


「ぐわあああああ!!」


「な、なんだ!?」


「くそ!フェンリルだけで手一杯だって言うのに!!」


下っ端しかいねェみたいだな…


「おい、おめェがアッシュか?」


『グルルルル…』


アッシュは俺にも敵意と警戒心剥き出しで唸る。


「アッシュ!お持たせしました!!」


『!!』


アッシュが目を見開く、そして徐々に身体がガキに戻っていく。


「おね…ちゃ…」


アッシュは力を使い果たし倒れそうになるが、それをエマが受け止める。

俺はそれを見ると、今度は周りのザコに意識を向ける。

俺とエマがヤってねェザコが周りに大量に倒れている。

これ全部アッシュがやったのか…


「フン、見所のあるガキじゃねェか…尻拭いは頼まれてやるよ。」


そう言い終わった瞬間俺は魔力圧を放つ、半端な実力のヤツらはみな次々と気絶していく。


「下がれ…お前達には荷が重かろう。」


若い声が響く、周りのヤツらがみな下がり道を開ける。

奥から額の右からツノを生やした顔を布で覆い隠したヤツが歩いてくる。


「ハッハハハ!おめェ…強ェなァ!!」


俺は興奮のあまり無意識に【天雷】を発動する。

この男…マジでスキンヘッド兄より強ェ…!!

俺はウキウキしながら臨戦態勢に入る。


「その神狼は我々のモノだ、悪いが返してもらうぞ。」


「勝手なこと言わないでください!この子たちの意思はどうなるんですか!!」


ツノ野郎のらあんまりな言い草にエマが思わず噛み付く。


「くだらん、商品に感情移入などしない。」


「あなた…!!」


「よせ、この手のヤツは俺らとは平行線だ。我を通すなら(コレ)しかねェだろ。」


俺はそう言って拳を突き出して獰猛に笑う。


「その通り、俺は言葉を飾るのは好まん…そのガキを助けたいならば…俺の屍を踏み越えていけ…!!」


ツノ野郎は腰に差してあった(マチェット)を構える。

そして鉈を構えた瞬間、膨大な魔力と殺気が噴き出す。


「『幻影(ファントム・シャドウ)ダグリル』、行くぞ…!!」


「ハッハハハ!名乗られたからには応えねェとなァ…『鬼神リューゴ』だ、来いよオラァ!!」


お互い同時に駆け出し、黒の拳と鈍色の刃がぶつかった。

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