第70話 双神VSドルベレー兄弟
スキンヘッド兄の拳が嵐のように襲い来る。
「ふははははは!凄いですね貴方は!!私と正面切って殴り合える方は裏の世界にも数える程しかいませんよ!!」
スキンヘッド兄は間違いなく『魔力纏衣』を使ってんな。
「おめェ、その魔力を纏うやつどこで知ったんだ?」
「はて、おかしなことを聞きますね…『マナスキン』は魔人族なら幼少から叩き込まれる基本技術ですが?」
お互いに拳の応酬を中断することなくなんでもないように会話する。
「あ…?それってシンの国の技術じゃねェのか?」
「シン…?知りませんね、まぁ魔人族にも色々な方がいますから奇特な方が人間に教えを授けたのでは?」
「それを『魔力纏衣』なんて改名してたのか。」
「まりょくてんい…?なんですかそれは?」
「おめェらの技術を独自の技術として広めている国があるって話だ。」
「なるほど…あまつさえ教えを乞うておきながらそれをさも自分が考え出したかのように振る舞うあたり人族の傲慢さが滲んで見えますなぁ!!!!」
一際鋭く速い拳が放たれる。
俺はそれを真っ向から撃ち返す。
「ふふふ…半分ほどの力とはいえ今のも容易く返すとは…やはり只者ではありませんね。」
「今ので半分か…」
俺は内心ガッカリしていたが相手はそれをビビってると取ったらしい。
「ふふ、恐ろしいでしょう無理もありません…私も強者と戦えるからとこの門番をしていますが、ボスからは幹部にとせがまれていましてな。」
「おめェと『幻影』どっちが強ェんだ?」
何気なく聞いた瞬間、スキンヘッド兄の猛攻がピタリと止む。
そして肩を震わせ始めたと思えば、空気が重くなりスキンヘッド兄から望外の殺気が放たれる。
「幻影…?奴は小手先だけの下らん奴だ…!!真っ向からぶつかり合い、私が全力を出せばあの小僧など…!!!!…オホン、これは失礼…」
スキンヘッド兄が咳払いをすると俺の口角が上がる程の殺気は嘘のように霧散する。
あれほどの怒りを一瞬でコントロールできるのは流石だな…
「フン、おめェらも一枚岩じゃねェってことか。」
「組織が大きくなれば派閥も生まれる、自明の理ですね。」
「ま、別に組織がどうとかは興味ねェよ。俺は強ェヤツとヒリつくようなケンカがしてェ…ただそれだけだ。」
俺は金色に光る双眸|を爛々と輝かせて笑う。
「その眼は…!!なるほど…そうか、そういうことか…!!ふふ、ふふふ…はぁーっはっはっは!!!まさかこんな所で貴方に会えるなんて!!!!」
「あ…?どういう意味だそりゃァ…」
「ふふ…私に勝ったらお教えしましょう!!」
そう言ってスキンヘッド兄は拳を構える。
スキンヘッド兄の雰囲気が変わった、先程が嘘のように威圧感が増す。
こっからが本気ってことか…それにコイツ…!!
「何が半分の力だ…2割くらいしか出してなかったなテメェ…!!」
俺はさっきまでガッカリしていたのが嘘のように今はワクワクが止まらなかった。
ーエマsideー
リューゴさんの方は問題無いとして、あるとするなら…
「私の方なんですよねぇ…」
「む?戦闘中に考え事とは余裕だな女。」
お互いに攻撃をいなし、かわし、受け止めながら力量を量る。
「うるさいです、下半身で物を考えるような方には言われたくありませんし。」
「これは手厳しいな、そんなにあの男が良いのか?」
「リューゴさんはあなたよのうな下卑た方ではないので。」
「フッ、俺と一夜を共にすればそうも言ってられんよ。」
「ホントに最低ですね…お兄さんを見習ってください。」
「これは耳が痛い…兄者は兄者だ、俺は兄者とは違う。」
「お兄さんが聞いたら悲しみそうです、ねッ!!!」
「!!」
私は急にギアを上げて雷電を纏った蹴りを顎に見舞う。
だが、彼は顎先に掠りながらもスレスレでそれを回避した。
「フフ、危ない危ない…見事な蹴りだ、少しコゲてしまったぞ。」
スキンヘッド弟は顎を擦りながらご機嫌そうに言う。
そしてその瞳には仄暗い火が灯っていた。
「気に入ったぞ、お前は俺のお気に入りのペットにしてやろう…」
「言うに事欠いてペットですか…本当につくづく最低ですね…ッ!!まさか、あなた…!!」
「クックック…聡明だな女。そうだ、俺は幾人もの女を飼っている…安心しろ俺も兄者の弟、紳士の端くれだ。飼った女は大切にしているとも。」
「このクズ野郎…!!!!」
私の身体から怒気と共に雷が迸る。
「そうカリカリするな…兄者の方は十中八九兄者が勝つだろう、結局お前は捕まってしまう…ともすればお前ほどの良い女は間違いなくオークションにかけられるだろう。」
「有り得ませんね。」
「む…?何だ、魔人族に何かコネでも「そっちじゃないですよ。」
「何…?」
「リューゴさんが負けるのが有り得ないって言ったんです、私が惚れた人ですよ?不可侵の存在である守護龍すら降したあの人が戦いの中で膝を折るなんてことは天地がひっくり返っても有り得ません。」
「クックック…我が敬愛すべき兄が負けると…?フフ…フッフッフッフ!面白い、お前のその心を手折るのもまた一興だなぁッ!!!!」
スキンヘッド弟の体から炎が噴き出す。
やっぱり手加減されてましたか…ですが、それはこちらも同じです。
「【天雷神】。」
雷鳴と共に私の姿が変わる。
「これは…!!」
「手加減してたのはあなただけじゃないです。」
「美しいな…余計に欲しくなったぞ、【雷神】!!!!」
「どこで私のことを知ったか知りませんが、この身体はあなたにやるほど安くはない!!!!」
眩いほどの白雷と紅蓮の炎がぶつかった。




