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第68話 それぞれの戦い

2人組に案内されて着いた場所は街外れの岩場だった。


「はぁ〜…ま、そんな気はしてたけどよ。」


ゾロゾロと岩陰から明らかにカタギじゃなさそうなヤツらが出てくる。


「あ〜【通信(メッセージ)】か…忘れてたぜ…ったく、便利過ぎるのも困りもんだな。」


2人組は逃げるように集団の後ろに走って行く。


「ははは!ノコノコ着いてきやがってバカが!」


「お前ら!コイツはオークションの景品が狙いだ!とびきりの待遇でもてなしてや…れ…?」


2人組がイキって周りに指示を出そうとしたが周りにいたヤツらはみな地に沈んでいた。


「は…?」


「な、何が起きてんだ…!?」


「…これが最後のチャンスだ、オークション会場はどこだ…?」


苛立っていたのもありつい魔力と殺気が漏れる、すると片方の男の股周辺にシミができていく。


「あぁぁぁ…」


「ひぃぃ…」


2人は放心してへたり込む。


「チッ…場所聞いただけだろうが。」


俺はそうボヤいて倒れているヤツらの中から一際いい装備を身に付けた戦士っぽいヤツを叩き起す。


「ぐっ…なん…!?」


「抵抗すんな、オークションはどこで開かれる?」


「はは!誰が貴様に言うか…よ……」


「分かっちゃァいるんだが…やっぱり俺に尋問は向いてねェなァ…すぐ手ェ出しちまうからよ。」


もうこれ以上の遅れを取りたくない焦りもあり俺は抑え切れない殺気が溢れる。

男はバッと顔を上げ、俺の顔を見るとまるで幽霊を見たかのような顔をすると呼吸が荒くなる。


「ハッ…ハッ…言う!言うから殺すな!!」


男は顔を蒼白にしてそう喚き出した。


「あァ?なんだ急に…」


「この国の南にある街リースにある1番でかい屋敷だ…!」


「…おめェ、俺のこと知ってんのか?」


「ッ!!し、知らん…!!俺は何も知らんし見てない!!!!」


「……」


俺はソイツの態度に引っ掛かりながらも、場所は割れたしまぁいいかと歩き出した。


「…俺だ、まずいぞ…『本物の鬼神』がそちらに向かってる…!!」


男が俺の後ろでコソコソ誰かに連絡とってるが、別に他の手勢を寄越してきても全く構わねェ…むしろカモがネギ背負ってくるんなら大歓迎だと俺は全く気にせずに南に向かった。


ーエマsideー


「……」


私は周りに誰もいないか確認すると雷の刃を指先に形成して

縄を斬ろうとするが、全く刃が入らない。


「無駄だよお姉ちゃん…」


「ッ!!」


声の方を向くとそこには何人もの魔人族の子供が身を寄せあっていた。

声をかけてきた子供は子供たちの中では最年長らしい、捕まって幾許か経ってしまっているのか身なりは汚いが顔立ちは整っていて髪の毛も乱雑に伸びてはいるが、透き通るような銀髪だ。

私は男の子の頭に他の子とは違って獣の耳が生えていることに気がついた。

そして後ろの子供たちを見ると手足も縛られていないし口にも布を噛まされてない…危険度が低いってことかな…


「その縄は魔力を通さない素材で編まれてるんだ…だから今まで捕まった女の人たちも…」


「んんッ!んんんッん!!」


「…?口のを取ればいいの…?」


男の子はおずおずと私の口に噛まされた布を外す。


「フゥ…ありがとうボク…私はエマ、君は?」


「僕はアッシュ…」


「そっか、ねぇアッシュ、ここはどこか分かりますか?」


「分からない、そもそもここにいる子供たちは僕も含めてみんな孤児なんだ。お姉ちゃんは旅行客っぽいから知らないだろうけど、この西の大陸は魔の大陸…モンスターより同種族に襲われて死ぬ人の方が多いんだよ。」


「それは…略奪が黙認されているってこと…?」


「うん…王様が生きてたらこんなことになってなかったのに…」


「え…!?王様ってこの国の王様!?」


「うん…表向きは病気で臥せってるって言ってた…でも大人たちが噂してたんだ、王様はもう殺されてるかもって…」


「この国の王様はそんなに強くないんですか…?」


「そんなことないよ!とっても強くて優しい人だった…けど…王様の周りにいた偉い人たちはみんな王様のやり方が気に食わないんだってお父さん言ってた…」


「アッシュのお父さんは…?」


「……殺された…お父さんを殺した人はきっとあの偉い人たちの中にいる…」


アッシュの瞳には仄暗い光が灯っていた。

子供にこんな目をさせてしまうなんて…


「アッシュたちはここにどのくらいいるんですか?」


「捕まったのは3日前…オークションにかけられるって話をしてるのを聞いた…」


「それは他の子たちは…?」


「みんなオークションの意味をよく分かってないから…」


「君は賢いんですね。」


「お父さんがいろんなこと教えてくれた…」


「良いお父さんだったんですね…」


「お姉ちゃんはどうしてここに?」


「お姉ちゃんはちょっとヘマして捕まっちゃった、もうすぐお姉ちゃんの仲間のつよ〜い人が助けに来てくれるんですけどね。」


私はニコッとアッシュに笑いかける。


「その人は1人で来るの…?」


「うん、そうだよ。とっても強いから1人でも誰にも負けないんですよ。」


「ほんと…!?」


アッシュが初めて年相応にキラキラした目を向けてくる。


「助かったら紹介してあげるね、さて…そろそろ動きますか。」


「え?でもお姉ちゃん縛られて…」


「ふふ、お姉ちゃんも実は結構強いんですよ。」


私はあっという間に腕の縄を外す。

こんなこともあろうかと縄抜けをしっかり体得していた私偉い。


「わぁ…!」


「ふんふん…足の縄はどうやら普通の縄みたいですね…」


私は足の縄を指先に雷の刃を形成して焼き切る。


「よし…みんな!ここを出ましょう!」


すると子供たちは呆気に取られる。


「無理なんだ、お姉ちゃん…」


「どういうのとですか?」


アッシュは自分の首を指さした、そこには先程は気付かなかったが黒い首輪が嵌められている。


「これは【呪縛の首輪】って言って…お姉ちゃん【隷属の首輪】は知ってる?」


「ええ、知ってますよ。」


「簡単に言っちゃうとそれの強化版かな…」


「そんな…」


「僕たちのことはいいから、仲間の人のところに行ってあげて!いくら強くても1人はやっぱり寂しいし、悲しいから…」


「アッシュ……待っていてください、絶対に戻ります!」


扉を開けると見張りが2人立っていた。


「あ!?この女!どうやってあの縄ぶべっ!?」


「く、くそ!アイツ絶対大丈夫って言ってたじゃあばぶっ!!」


拳で2人の顎を撃ち抜いて即座に昏倒させる。

私はリューゴさん膨大な魔力なら…と希望を抱いて駆け出した。

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