表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/82

第67話 闇オークション

俺とエマは物見遊山も兼ねて街をブラブラと練り歩く。


「ほー…魔人族って言うと力だけの種族みたいなイメージがあったんだが、これはなかなか…」


周りを見てみるとどちらかと言うと俺の前世に近いファッションをしているヤツらとよくすれ違う。


「なんだか私たち浮いてますね…」


「まぁ余所者だしなァ…仕方ねェよ。」


そんな話をしながら時々出店で食い物を買って街の探索を続ける、そして路地裏を抜けてふと後ろを振り返ると路地裏に入る前までは居たはずの()()()姿()()()()()()()


「あ…?チッ…アイツ、どこ行きやがった。」


俺は龍の眼を開く。


「お、魔力感知は曖昧になっちまったが、龍の眼(コッチ)はちゃんと見える。」


さすが上位種族からの贈り物だな。

路地裏に戻るとエマの魔力の流れが路地裏の真ん中辺りで急に途切れていた。


「(ここで攫われたか…?にしても俺に全く気取らせずに、かつハービットに並ぶくらい強ェアイツを音も立てずに連れて行けるくらいのヤツがいんのか…?)」


俺は自然と口角が上がっていくが、すぐに冷静になる。


「(おっといけね、今はエマの安否確認が優先だな。)」


俺は龍の眼と己の鼻と勘を頼りにエマの捜索を始めた。


ーエマsideー


私は今口に布を噛まされ、手と足を縛られ床に転がされていた。

リューゴさんの後ろを歩いて路地裏に入り、半ほどまで来たところで急に足元が無くなったかのような感覚に陥りそのまま意識を奪われた。


「(情けない…!リューゴさんの仲間としてこれほど簡単に捕まってしまうなんて!!)」


怒りで拳に力が入るが、首を振って私は状況を確認するために周りを見回す。

ここはどこでしょう…?倉庫…と言うには些か生活感のある場所ですね…すると大勢の足音と話す声が聞こえてくる。

私は咄嗟に気絶しているフリをした。


「ほう…?こりゃ驚いたホントに人族じゃねぇか。」


「ああ、街で見かけたところを捕まえた。コイツと一緒にいたヤツはオーガだったがな。」


「オーガか、アイツらは労働力としては良い値が付くが如何せん管理が難しいからな…」


この人たちリューゴさんのことオーガだと思ってるんだ…


私は薄目を開けて相手の姿を見ようとする。


「目が覚めたようだな、いや、()()()()()()()()()と聞いた方がいいか?」


「ッ!?…バレてましたか。」


「クックック…気配を垂れ流し過ぎだ、お前は暗殺に向いてないな。」


私は目を開いてそう言う男を見る。

額の右側から1本だけツノが生えている。

それ以外は布で顔が隠してあるため分からない、出で立ちと発言から暗殺者らしい…としか感想が出てこない。


「なぁ、コイツはどのくらいの値が付くと思う?」


暗殺者の後ろから小太りで身長も低い醜い魔人族の男が下卑た笑みを浮かべながらそう宣う。


「まったく…貴様はそればかりだな、ゴブリンとは思えんほど太るわけだ。」


「ゲヘヘヘ、アンタも鬼族の中だと変わり者だと聞いてるぜ。」


太ったゴブリンがそう言った瞬間首元に大振りの鉈が寸止めされていた。

そんな馬鹿な…!?抜くところは愚か軌道すら視認できなかった…!!?


「おい、その話を二度とするな…いいな?」


暗殺者の男は恐ろしく底冷えするような声音でそう言った。


「わわ悪かったよ…もう言わねぇよ…!アンタとは今後も良い付き合いをしていきたいからな…」


「フン…」


暗殺者は鉈を仕舞うと鼻を鳴らして倉庫から出て言った。


「はぁ〜…寿命が縮んだぜ…ったく…さて、寝起きで悪いがまた眠っててくれや。」


ゴブリンがそう言うと懐から香水…?のようなものを取り出して私の顔に吹き付ける、すると私の意識は再び闇の中に落ちた。


ーside outー


「チッ…!」


エマを探し始めて少し経つが俺は過去最高に苛立っていた。

痕跡も手がかりも少なすぎる、しかもここは魔人族の国、人族である俺に快く情報をくれるヤツなんぞいやしねェ…


「フゥー…」


俺は大きく息を吐き出し意識を切り替える。

ダメで元々、情報が出れば御の字だ。

俺は屋台の店主の魔人族のオヤジに声をかける。


「おい、ツレが攫われちまったんだが…その手の稼業の中で有名なヤツはいるか?」


「おっ!?兄ちゃんやけに人間臭いオーガだな!人攫いかぁ…ここいらじゃ『幻影(ファントム・シャドウ)』って奴が有名かなぁ…この国じゃ人身売買は禁止されちゃあいるが、もし本当にアンタのツレがそいつに狙われたんなら…悪いことは言わねぇ、諦めた方がいい。」


「…ソイツはそんなに強ェのか?」


「噂程度だけどな、以来達成率100%、どんなに腕利きの奴らもターゲットにされたら為す術なく捕まっちまったらしい、組織一つを夜のうちに消した、なんて話もあったな。」


俺の勘が言っている、間違いねェ…ソイツだ。


「ありがとよ、オヤジ…その串全部貰うぜ。」


俺は情報量の代わりによく分からん肉の串焼きを全部買う。

膨らむほど大量に串の入った紙袋を抱えながら歩き出す。


「毎度ありー!!!!」


ご機嫌そうに俺に手を振るオヤジを背に串をまとめて5本齧り付きながら考える。


「幻影…名前からしてソイツ本人を探し出すのは無理っぽいなァ…依頼主あたりを探っていくのがベターだが…」


串を頬張りながら呟いていると路地でコソコソ話している声が耳に入ってきた。


「おい、聞いたか?あの成金ゴブリンが人間の女を仕入れたらしい…」


「何っ!?それは本当か!?」


「馬鹿野郎!声がデケェよ!!確かな筋から聞いたから間違いない…今回のオークションは荒れるぜ。」


「人族、しかも女はこの大陸じゃ幻みたいなもんだからな…」


会話をしていた男たちの視界が急に暗くなる。


「「ん?」」


「その話、詳しく聞かせてもらうぜ。」


串の入った紙袋を放り、俺は瞬時に2人組の腕を片腕ずつ捻りあげてへし折る、そして落ちてきた紙袋をキャッチする。


路地裏に声にならない悲鳴が木霊する。


「ぐううう…なんだお前ぇッ…!こんなことしてガッ!?」


蹲る男たちの前に胡座をかいて俺は殺気を出しながら2人組の目を見据える。


「「!!」」


2人組は己の運命を悟ったのか震えて大人しくなる。


「…心配すんな、聞くこと聞いてこの稼業から足洗うってんなら見逃してやる。」


「ほ、本当か…!?」


片方の魔人が反応する。


「俺ァ嘘はつかねェ。」


「何が聞きたいんだ…?」


「おい!組織に報復されるぞ!」


「うるせぇ!それならこのままここで殺される方が良いってのか!?」


「やめろ。」


ズンッと空気が重くなる。


「「ッ!!」」


「落ち着け、俺はおめェらが話してた女のツレでなァ…居場所を知りてぇだけだ。」


「今の居場所は知らん…だが、その女は金に執着するゴブリンが人身売買オークションでトリとして手に入れたと聞いた…」


「俺達はそのオークションの窓口だ…」


「俺をそのオークションに連れて行け。」


「無理だ…!そんなことをすれば俺達の首が飛ぶ…!!」


「そうか…じゃあ場所にだけ案内しろ、それで見逃してやる。」


「わ、分かった…」


聞くに、オークションは明日の夜開かれるようだ。

俺は魔人族2人にポーションを渡して立ち上がる。


「…このことを誰かに話せば…分かるよな?」


「ああ、俺とコイツはどうせ末端、上と接触する機会なんてねぇよ。」


「…そうかよ。」


俺はそれだけ言って立ち去った。


「…魔人族も人間も、腐ってるとこは腐ってんだな…」


俺はそう呟いて再び串を頬張った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ