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第65話 姉としての決断

ーハービットsideー


両者の戦いは苛烈を極めていた。

贔屓目抜きに見ても2人とも優にSランクに届きうると断言させる程の気迫を見せた。


「ふふ、楽しそうにしちゃってまぁ…」


2人はボロボロになりながら本当に楽しそうに戦っている。


「ッ!!【無風圏(ゼロウィンド)】!!!!」


エマの出現させた分身による自爆特攻、威力は凄まじくボクの結界が間に合わなかったら闘技場ごと無くなってたよ。


「エマははしゃぎ過ぎだね、後でお説教だ!」


ボクがプンプンしているとリューゴくんが片手に魔力を集中させ始める。


「……え?まだ魔力集めちゃうの?」


思わず呟いてしまうほどにリューゴくんは膨大な魔力を拳に集中させている。

エマもエマで残り僅かな魔力を絞り出して拳に集中させてるし…あ、エマが黒纏纏ってる!この戦いで成長したんだ!!


「って喜んでる場合じゃない!!2人とも手を貸して!!私 ボクに魔力を流して!!」


「「はい!!」」


クロエとエレノアから魔力を譲渡してもらって結界の強度を可能な限り上げる。

次の瞬間2人の拳がぶつかり闘技場内は吹き飛んだ。


「セーフ…ボク、グッジョブ…」


「2人とも凄まじいですね。」


「ギルマス〜これは昇格させないと逆に危ないんじゃない?」


「だね…定例会議の議題は決まりだ。」


ボクは闘技場内で立っているリューゴくんと仰向けに転がっているエマを見て微笑んだ。


ーside outー


「そこまでーー!!試合終了だよ!!」


ハービットが闘技場内に降りてくる。

闘技場内以外にこれと言った被害がない、ハービットがなんとかしてくれたようだな。


「助かったぜ。」


「ホントだよ!ボクがいなかったら闘技場どころかギルドまで吹っ飛びかねなかったよ!?」


「ハッハハハ!」


「いや笑ってる場合じゃないから!!」


俺はエマの元へ近づきポーションをぶっかける。


「助かります…」


「よくやったじゃねェか、想像以上だった。」


俺がそう言った途端、エマは目を見開き手で顔を覆う。


「〜〜〜ッ!!」


「あ?」


「今は顔を見られたくないんです。」


「なんだそりゃァ…」


「乙女の事情です察してください…」


「おぉ〜っとリューゴくん話があるから執務室まで一緒に来てもらおうか〜!!!」


「あァ?おい、なんだ急におい!押すな!!」


そのままワチャワチャしながら執務室に連行される。

ハービットが椅子に座って机に身を投げ出して突っ伏す。


「あぁ〜〜〜づがれだ〜〜!!!!」


「……ご苦労。」


「なんでそんな上からなのさ!!!!」


ハービットは立ち上がってビシッと指を指してくる。

だがすぐに息を吐き出しながら椅子にもたれる。


「リューゴくんもエマも、もうAランクだと実力が噛み合わなさ過ぎるからSランクに上げてもらうつもりだよ。」


「お、1番上のランクか。」


「厳密に言えばSSランクとか言う名誉ランクみたいなものもあるけどね。」


「それはどうやったらなれんだ?」


「ん〜…魔王でも倒せばいいんじゃない?」


「ヘェ…」


「ウソウソウソ!!だからそんな怖い顔で笑わないでよ!!!!」


「別にそこまで手間隙かけてなろうって気もねェから構わねェよ。」


「まぁSランクには確実に上がれると思うから期待して待っててよ。」


「おう。」


そしてそこからハービットの雰囲気が変わる。

さっきまでの緩い空気から一気に張り詰めたものになる。


「それとは別に、リューゴくんに頼みがあるんだ…いや、頼みと言うよりボクからの依頼…かな。」


「…アズラエルのことか?」


「その通り、察しが良くて助かるよ。君とエマに西の大陸『魔国ジスターヴ』に言って欲しいんだ、アズラエルが潜伏するとしたら人間が寄り付かず魔力の豊富な土地だろうから。」


「魔人族の国だっけか?」


「うん、魔人族はボクら人間より基本スペックが上だから人間のことを見下しがちなんだよね…だから面倒は避けられないと思って欲しい。」


「ハッハハハ!最高じゃねェか、強ェヤツが向こうから来てくれんなら願ったり叶ったりだぜ。」


「君ならそう言ってくれると思ってたよ、西方ギルドまでの道のりは分かる?」


「問題ねェ、西に飛べば良いんだろ。」


「まぁ国も建物も大きいからすぐにわかると思うよ。」


「明日にでも発つ、期待して待ってろ。」


俺は踵を返して部屋のドアを開ける。


「リューゴくん…ありがとう。」


背中越しにハービットの弱々しい声が耳に入る。


「……おめェらの中にあるモンは()()()()()()()()()()。」


俺はそれだけ言って部屋を出て行った。

ギルドのロビーに戻ると包帯だらけのエマがいた。


「もう動いて良いのか。」


「はい!心配おかけしました。それで、次はどこへ?」


「西だ、明日の朝発つ。」


「分かりました、なら今日は久々に妹の顔を見て来るので家に帰りますね。」


「ああ。」


コイツそういや妹いたなァ…などと思いつつ俺もいつもの宿に帰ると、2階の自室に戻りベッドに横になるとすぐに寝入ってしまった。


ーエマsideー


私はリューゴさんと明日の予定を簡単に立てると妹が待つ家に帰る。

妹のアーシャは私よりしっかりしていて自分のことは1人でやってしまうし、近所の人たちもアーシャが家に1人なのを気にかけてよくお世話してくれている、だから私もそれに甘えてしまう。

だが最近は家族の時間を取れるようにさりげなく通信魔法を飛ばしたり、リューゴさんがこの街にいる間はちょくちょく家に戻っている。

ホントなら私がずっと側についていてあげるべきなんだろうけど…

罪悪感を抱えつつ宿に入ると妹が笑顔で迎えてくれた。


「お姉ちゃんおかえり!」


「ただいま、アーシャ。」


「今日はお隣のおじいちゃんがお野菜いっぱいくれたから野菜たっぷりのグラタン作ってあげるね!!」


「ふふ、楽しみにしてるね。」


アーシャがエプロン姿でパタパタとキッチンに入っていく、しばらくするといい匂いが漂ってくる。


「お待たせ!熱いから気を付けてね!」


そう言ってアーシャは木のスプーンを渡してくる。


「ありがと、それじゃ食べよっか!」


「うん!」


「「いただきます!」」


アーシャがもぐもぐと美味しそうにグラタンを食べる姿を見て微笑む。

最近、ずっと家を留守にして寂しい思いをさせてるのに私のために明るく振舞ってくれている。

そんないじらしい健気な妹を見ていると私の体は勝手に妹を抱き締めていた。


「わっ!…どうしたのお姉ちゃん…?」


アーシャは不思議そうに私を抱き締め返してくる。

私は妹の温もりを腕の中に感じながら一つの決意を固めていた。


「もう少しだけ待ってね…あと少しだから…」


私はそう言ってアーシャを強く抱き締めた。

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