表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/82

第6話 王都プロスペア

街道のど真ん中で拳撃と剣撃のぶつかり合う音が響く。

アーサーは剣で俺の拳をいなしながらも苦虫を噛み潰したような表情だった。

一際大きなぶつかり合う音を響かせるとお互いに距離を取る。


「はぁ…はぁ…勘弁して欲しいな。この国で1番強い自負があったんだがな…はぁ…はぁ…」


「ハッハハハハ!!間違いなくおめェは強ぇ!!俺にここまで深手を負わせたのはおめェが初めてだぜ!!!!」


「それはどうも…はぁ…はぁ…」


アーサーは嬉しくなさそうに返す。

そして息を整えると、目の色が変わる。


()はもう魔力も体力も限界だ…次で決めさせてもらう。」


そう言って大上段に剣を構えると剣がより一層の光り輝き始める。

それを見て俺はニヤリと笑う。


「まだ何か隠してやがったか……良いぜ、俺も全力でぶん殴ってやるよ。」


ただただ殴るために力を溜める。


「【星屑し(スター・ブレイカー)】ああああ!!!!!」


「【拳岩(けんがん)】!!!オラアアァァ!!!!」


お互いの全力がぶつかり、周りの木々を薙ぎ倒し全てを更地へ変えていく。

だがこの時、俺は意識が途切れる前に確かに見た。

アーサーの顔が嬉しさと楽しさに満ちていたのを。


目を覚ますと、目の前には青い空が広がっていた。


「生き残ったか…」


空に呟く。

この世界に来て1番の強敵、そして1番楽しい戦いだった。

魔力という力、そして魔法とはまた違うであろう聖剣という存在。

アーサーとの戦いは俺に様々なものを与えてくれた。

先程の戦いを思い出してご機嫌になっていると横から声をかけられた。


「貴方は人間だったんですね。」


目線を向けると、そこには鎧はかなり破損しているが無傷のアーサーがいた。


「どっから気付いてた…」


「貴方が喋り、腕を斬りつけた時ですね。」


アーサーはそう言って俺のそばに屈み、無詠唱で何やら魔法を使う。

俺は黙ってそれを受け入れる。


「…私は…いや、僕は今まで挫折も、敗北も知らずに生きてきた。」


ぽつぽつとアーサーの口から本音が語られる。


「なまじ才能があったから、あれよあれよという間に王族に仕えることになってね…恥ずかしながら【騎士王】、などと過分な評価を頂いているのが現状さ。」


「……」


話しながらもアーサーの魔法で俺の傷はみるみる治っていく。


「別に王族に仕えることも、騎士であることも嫌ってわけじゃない。でもふとした時思うんだ、この強大な力は何のためにあるんだろうって…」


そしてアーサーは俺の目を見る。


「でも、君と出会った。初めて命を懸けてぶつかり合える相手を見つけた。これをライバルって言うのかな。」


そう言って嬉しそうにはにかむアーサーに俺は鼻を鳴らした。


「フン、くだらねェ…だが、おめェは強ぇ。もっと強くなっておめェに挑む、次は腕すら斬らせねェ…覚悟しとけ。」


「アハハ、肝に銘じとくよ。さて、治療は終わりだ。腕に傷が残ってしまったのはほんとにごめんよ。」


「…いらねぇ世話だ、戦えるならなんでもいい。」


「君は本当に戦うのが好きなんだね。ま、それはいいとして…とりあえず王都に行きたいんだよね?なら僕が案内しよう。着いてきてくれ。」


そう言ってアーサーの案内で王都へ向かうことになった。

道中でコイツはよく喋る奴だと言うことがわかった。

訓練生時代のこと、城でのこと、姫がじゃじゃ馬なこと。

そんな話を聞きながら歩き続け、日が暮れる頃にようやく王都に着いた。


「君は少しここで待っていてくれ。」


アーサーは走って門兵に指揮をしているやつの元へ向かった。

しばらく話し込んで、こちらに向けて手を振ってきた。

アーサーと指揮官の元へ着くと指揮官から声をかけられる。


「こ、これは…なるほどオーガと見まごう圧…アーサー殿からお話は伺いました。いやぁかの騎士王と引き分けるとは…アーサー殿もとんでもない御仁をお連れしましたなぁ!わっはっは!!さて、では王都に入る前に身分証のようなものはお持ちですかな?」


「いや、ねぇな…ずっと山暮らしだったもんでよ。」


「なるほど、それは失礼しました。ではこの街での簡単な身分証を発行しますのでこちらに。」


指揮官に促されて関所へ向かおうとしたが、アーサーが思い出したように声をかけてくる。


「そうだ、行く前に君の名を聞かせてくれ。私の名前はアーサー、アーサー・グレゴリオ。」


「リューゴだ…ただのリューゴ。」


「ようこそリューゴ!王都プロスペアへ!次はちゃんとした場所でやろう!」


アーサーが期待の眼差しでそんなことを言う。

俺は背中越しにヒラヒラと手を振って歩いて行った。


関所で簡単な質疑応答をした後、首から下げる手製の木札のようなものを受け取った。

この時に俺の服があまりにボロボロなので適当な服も貸してくれると言ってくれたが、俺の体に気をつけて合うものが無かったからボロボロのままだ。

俺は木札を指で遊びながら説明を思い出す。

これは一日限定でしか効力は無いらしく冒険者ギルドか商業ギルドでちゃんとした身分証を発行しなければいかないらしい。


「とりあえずは冒険者ギルドとやらに行くかァ…」


俺は関所で貰った地図を頼りに冒険者ギルドを探すことにした。

地図があるためそんなに苦労せずにギルド見つけることが出来た。

第一印象はデケェ…ただそれだけだった。

王城ほどでは無いがかなりデカい。


「この分なら商業ギルドの方もデケェんだろうなァ…」


ギルドを見上げながら呟く。

周りからチラチラと視線を感じる。

ここに来るまでもそうだったが俺はかなり目立つ。

身長が3mはあるのもそうだが俺の服装は上は裸、下もこれまでの生活で半ズボンのようになってしまった元長ズボンだ。


「チッ…着るもん何とかしないとなァ…」


そうボヤきながら俺は冒険者ギルドの扉をくぐった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] とりあえずはここまで読ませていただきました。 これは無双系とでもいうのでしょうか…?実はこう言ったタイプの作品に触れるのは初めてです。 でも面白いですね、主人公が最強クラスな事により負け…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ