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第54話 弓将『一射必中のテミス』

「チッ…妙な匂いの残し方しやがって…甘ったるい匂いは残ってんのに急に途切れてやがる…どうやってんだ…?」


まるで瞬間移動でもしてるみたいに……まさか…


「ホントにそんな魔法使えるとしたらやべェな…」


俺はその場に胡座をかいて座り込み目を瞑った。

感覚を今まで以上に鋭く広く魔力だけじゃなく気配を、違和感を探す。


この動いてる2つはエマたちだな…


城の方からはデカいのが1つ、これがリーか…


……!!


急に現れたデケェ魔力…!!


「見つけたぜ…!!【天雷】…!!!!」


朱の雷が落ちた。


ーテミスsideー


「さて、そろそろ作戦会議を終えて動く頃かしら。」


私は矢の全てに毒を塗り、弦を張り替え万全を期した。

正直ここまで粘られると思っていなかった。


「ふふ、『一射必中』の名が泣くわね。」


そう言って私は腰を落とし片膝をつき、矢を弓にかけ、引き絞る。

精神を集中させる…この一射はさっきまでの遊びとはケタが違うわよ。


「【壱の矢・緋龍】。」


放たれた矢は火を纏い龍となる。

鬼神さんがすぐ近くまで来てるけど関係ないわ、姫様たちを狙ってしまえばあなたは助けに行ってしまうから。


ーside outー


テミスを見つけ出したが、ちょうど矢を射った瞬間だった。

テミスの放った矢は炎の龍になってうねり不規則な動きをしながらエマたちに突き進む。


テミスが俺の方をむき微笑む。


「私と彼女たち、どちらを取るのかしら?」


俺の答えは決まりきっていた。


「【龍ノ顎・紅蓮】。」


「ッ!?」


テミスは咄嗟に身を捻ってかわすが、俺の手はテミスの腹を抉った。

テミスは地面に落ちゴロゴロと転がるも体勢を立て直す。


「ゴフッ…まさか私を取ってくれるなんてね…【完全回復】。」


「させるかよ。」


俺の拳がテミスの腹に突き刺さった。

【天雷】を纏った俺の攻撃を1回避けただけでも強ェのは分かる。

だが相手が悪かったな。


「ゴハッ!」


地面をバウンドしてゴロゴロと地を転がる。

だが腹を押さえながらもヨロヨロと立ち上がり、テミスはニヤリと笑った。


「私に…ゴフッ…かまけてて、いいのかしら…?フゥ…フゥ…」


「アイツはやる時ゃやるヤツだ。」


それだけ言うと俺は瞬時にテミスに距離を詰める。


「くっ!」


テミスの後ろに穴が現れる。

なんだありゃァ…?

テミスが穴の中に消えると即座に俺は手を止めた。


「あら、惜しい…もう少しで腕のひとつは落とせたかもしれないのに。【完全回復(エクスヒール)】。」


俺の後ろから声がする。

クソ、マジか…ホントに瞬間移動かよ…!


「めんどくせェ能力だな…」


振り向くと無傷の状態になったテミスが立っている。


「ふふ、あなたと私はお互いに相性最悪ね。」


「チッ…」


「いいわ、折角ですもの。今王都で話題沸騰中の最強の冒険者『鬼神』にどこまで通じるか…試してみるとしましょうか。」


そう言った瞬間、テミスから膨大な魔力が溢れ出す。

ただの弓兵(アーチャー)じゃねェとは思ったが…守護龍と同じくらいの魔力じゃねェか。


「少しは驚いてもらえたかしら?今度は小細工無しの真剣勝負よ、少しは楽しんでいって、ねっ!!」


言い終わると同時に魔力を纏った矢を放ってくる。

俺はそれを叩き落とそうとしたが、矢の動きが()()()()()()()

余りに予想外の動きに俺の拳は空を切る。

すると止まっていた矢は再始動して俺の顔面に直撃する。

だが、俺はそれを口で受け止めた。

鏃を噛み砕いて吐き捨てる。


「味なマネすんじゃねェか…!」


「ふふ、ふふふふ…今の"不意撃ち"も凌いでしまうなんて…本当に凄いわね…!!」


「おめェも今までの中で五本の指には入るぜ…!!」


俺は鬼哭を取り出し構える。

そしてお互いの魔力が膨れ上がる。


「【雷鳴怒濤】!!!!」


「【弐の矢・蒼龍】!!!!」


俺の爆速の金棒に向けて蒼い龍が飛来する。

衝突すると同時に俺の身体を氷が覆う。

だがすぐに無傷で氷を無効化する。


「ふふふ…炎も、氷も、属性は悉く無効化しちゃうのね。」


「抜かせ、ちゃんと効いてるぜ。」


「あら、面白い冗談だわ。」


お互いにニヤリと笑う。


「【参の矢・緑龍】!!!!」


今度は三本の矢を同時に放つとそれは一体の巨大な緑の龍になる。


「【天蓋洛星】!!!!」


緑龍の頭に鬼哭を振り下ろすと同時に赫い落雷の追撃がくる。

だが驚くべきか()()()()()()()()()()()


「!!最高じゃねェか…!!!」


()()()()()()()()()()()()()

すると緑龍は分散して、一回り小さい龍が三体現れ俺の身体に噛み付く。

そこから抉られるような痛みが走る。

だが緑龍は効力を失い三本とも矢が落ちる。


「驚きだわ…緑龍を生身で受けてそれだけのダメージしか与えられないなんて…普通だったら噛まれた場所は抉れ、吹き飛んでるのよ?」


俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()ができた腕を見ていた。

他のとこも同じような傷になってんだろうな。


「何か勘違いしているようだけど、あくまで矢ですからね。本来なら貫通力を上げた一撃故に四肢がちぎれ飛んでもおかしくないんですけど…まさか貫通すらでなないとは…正直ショックだわ。」


「クククク…ハァーッハハハハハ!!!」


俺は笑いが止まらなかった。

この国に来て戦ったイゾウとテミス、2人が2人とも俺に傷をつけられる強者だった!!

予想外の収穫!想定外の喜び!!

コイツは自分の実力が俺にどのくらい届くのか試すと言った…

なら、()()()()()()()()()()()()()…!!!!


「テミス。」


「な、何かしら?」


「しっかり守れよ…?【招雷紋】…!!!!」


テミスの腹が手のひらの形にめり込みそこから膨大な雷が放出された。


「ぐっ…!?ああああああ!!!!!」


雷の放出が収まると、プスプスと煙を上げテミスは倒れようとするが、踏ん張って体を支える。


「ま、まだよ…ガフッ…」


「魔力の層を挟んだか…だがやめとけ、今のは内側を壊す技だ。おめェの身体は見た目以上に深刻なダメージを負ってるぜ。」


「そうみたいね…ならこれが私の最後の技よ…勿論受けてもらえるわよね…?」


それを聞いて俺は笑みを深める。


「本当に最高の女だな、おめェは。」


「ふふ、光栄だわ。」


そう言ってテミスは穴を使って俺から距離をとると矢を構えた。


「【終の矢・極龍(ごくりゅう)】…!!!!」


放たれた瞬間矢が消える、そして気付けば俺の腹に矢が直撃していた。

そして矢に込められた()()()()()()()()()()()

俺は矢を止めようと掴んだ瞬間、辺り一帯を吹き飛ばす大爆発が起き、その直後空間に手のひらサイズの穴が生じそこに全てを吸い込み始める。

俺は咄嗟に黒纏を纏いその穴を覆って、全力で魔力を流し込んだ。

すると穴はとんでもない勢いで俺の魔力を吸い込み満足したように消失した。

それと同時に俺も【天雷】を維持できなくなり髪が黒に戻る。


民家への被害はかなり抑えたがそれでも最初の大爆発で尋常じゃない被害が出ている。


「はぁ…はぁ…このイカれ女が…魔力の8割くらい持ってかれたぞ…」


「ふふ、ふふふ、ふふ…これで一矢報いることができた…かしら…」


そう言ってテミスは倒れ動かなくなる。

だが死んではいないようだ。


俺もその場に仰向けで倒れる。


人死(ひとしに)が出なかったのは奇跡だな…」


その瞬間、昼かと思うくらいの眩い閃光が大通りの方を駆け抜け山を穿った。

閃光が放たれた後はバチバチと余韻の雷が迸る。

それを見て確信する、エマだ。


「ハッハハハ、やりゃァできるじゃねェか。」


俺はそう月に向かって呟いた。






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