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第53話 闇の狩人

夜になって通りにも人が少なくなる。

俺たちは中央に聳える城に向かうために宿を出る。

城下町が広いため城までの距離が意外とある。

すんなりたどり着けるとは思えねェ…と言うよりもう既に囲まれてんなァ…


「いるな。」


「ああ、隠そうともしてないな。」


「もうモミジさんの殺害優先ってことですかね?」


「くだらねェな。」


俺が1歩前に立って魔力を放つ。

すると周囲から向けられていた殺意が嘘のように霧散する。


「相変わらず便利ですね〜!」


「いつ見ても凄まじいな…」


「行くぞ、さっさとバカ殿の首取って終ェだ。」


そう言って歩き出そうとした瞬間、俺は一瞬城の方から向けられた殺気に気付いた。


「!!」


そして迫る風切り音を頼りに矢を掴んだ。

だがそれは昨日の夜放たれたものとは違った。

風の魔力が矢を守るように覆っていた。

俺はその技術を見たことがある。


「あのエルフも同じような真似してたな。」


そう言いながら矢を握り締めて魔法ごとへし折る。

不可視化の効果が切れて俺の手の中に折れた矢が現れる。


「……前のエルフよりちょっと強ェ、か…?」


「リューゴさんエルフとも戦闘経験済みなんですね。」


「本当に呆れるほど戦闘狂だな。」


「多分その時のヤツよりは良い腕してるぜ、この矢の持ち主。」


俺たちはしばらく周囲を警戒するも矢が飛んでくる気配はない。


「……野郎…挑発のつもりか…?」


俺は舐められていることに心底腹が立つが、ここで俺がいなくなれば不可視の矢を避ける術を持たない2人は格好の的だ。


「チッ…意外と考えてんのか…」


「すまないリューゴ殿…」


「感知苦手です…」


「矢は全部何とかしてやる、走るぞ。」


俺が前に立ち2人は俺の後ろに並ぶ。

走り出そうとした瞬間、右から風切り音が聞こえた。


「ッ!?」


俺は咄嗟にモミジの右を陣取ると、矢は真っ直ぐモミジの頭を射抜く軌道で飛んできた。

俺は手でそれを簡単にキャッチする。


「不可視化も魔法も纏ってねェ…ただの狙撃…?」


なんの真似だ…?


いや、だがアイツは何かしらの機動力的アドバンテージを持ってるってことだ…しかも今回は殺気を感じなかった。

最初の一射は俺の気を削ぐための陽動か…とことんまで舐めてやがる…


「おめェら、先行け…全力で走れ、矢はなんとかしてやる…」


「ご武運を!」


「かたじけない!」


2人はそう言って城へ駆け出した。


俺は2人の背を見送るとスンスンと鼻を鳴らし匂いを嗅ぐ。

やっぱりな…相手は女、何かしらの香料を付けてるかもしれんと思ったが正解だったか。


「甘ったるい匂いしてんな…」


俺はそう呟いて匂いの元へ走る。

少し距離はある、だが俺が近付いてもまるで匂いは動かない。

そして匂いの発生源を特定したが、燃えた矢で縫い付けられた巾着袋が目に入る。


「!!クソッタレ!!また罠か!!!!」


瞬間辺り一帯を吹き飛ばす大爆発が起きた。


ーテミスsideー


私は今、背の低い建物の屋根で鏃に毒を塗っていた。

そして作業をしていると少し遠くで爆発音が聞こえた。


「んふふ…鬼神さん、面白いくらいに真っ直ぐな人ね…ダメよ、狩人相手に真っ向から向かって来ちゃ…」


私は人差し指を舐めてピンと立てる。


「風向き良し、風速良し、距離はだいたい1200mってとこかな。」


私はそう言って矢を構える、狙いはこの国の元お姫様の頭。

今度は不可視化と風の魔力を纏う。


「バイバイ、お姫様♡」


空気が破裂する音と共に矢は風を切って建物の窓を通り、まるでそこに道が用意されているかのように綺麗に突き進む。

そして、お姫様の頭に当たる寸前…


「オラァ!」


服が焼け落ち素敵な身体を惜しみなく晒した鬼神さんが矢を叩き落した。


「あらら…思ったより速いわね…ふふ、面白いじゃない。」


私はそう言って立ち上がると()()()()()()()()()()()、それをくぐると別の場所に出る。

私はそこで休憩がてら弓の手入れをしながら鬼神さん一行を待つことにした。


ーside outー


「「リューゴ(さん)(殿)!?」」


俺のはらわたは煮えくり返っていた。

初めてだぜ…ここまで綺麗に手のひらで踊らされんのは…!

ふと叩き落とした矢を見ると鏃に何か塗ってある。

俺はその鏃を口に入れてボリボリ咀嚼してから吐き出す。


「ペッ……毒か。」


「食べないでくださいよ…」


「どこまでも規格外だな…」


そんなこともありひとまず周囲から遮断された路地に入って警戒をしつつも会議をする。


「ハッキリ言ってあの女…奇襲が異常に上手ェ。」


「やはりか…私も気配のけの字すら感じ取れぬ…」


「私は何が起きてるのかもさっぱりです。」


「1番厄介なのはもしかしたらあの女かもしれねェなァ…!」


「ふふ…」


急にモミジが笑い出す。


「あ?」


「リューゴ殿がそんな嬉しそうな顔をする時はどうしてか安心してしまう。」


「分かります分かります!絶対に負けない強者の凄みが出てますよね〜!!」


「くだらねェ…ひとまずアイツの狙いはモミジってことが分かった。モミジ、おめェにはエサになってもらうぜ。」


「う、うむ…!死なない程度で頼むぞ!」


「…………」


「嘘でも了承してくれないか!?」


「分かった分かった…死なせねェって約束したからな、ちゃんと守ってやる。」


「しょッ…そうか…」


頭を撫でて宥めてやるとモミジは顔を真っ赤にして俯く。

エマはお茶の間に見せられない顔でギリギリと歯軋りしている……その顔どうやってんだ…?


「それで!?私の配役はなんでしょうか!!!!」


「エマは死ぬ気でモミジ(コイツ)を守れ、じゃなきゃコイツは死ぬ。」


「「えっ!?」」


「俺はあの女を見つけ出してぶっ飛ばす。」


そう言って俺は駆け出した。


ーエマsideー


「行っちゃった…」


「……先程の"守ってやる"はなんだったのだ…」


「ま、まあまあ!リューゴさんが牽制してくれれば飛んでくる矢も減るはずですから!!とりあえず弓将はリューゴさんに任せましょう!」


「そうだな、奴もリューゴ殿に本気で狙われていると分かればこちらに気を割くこともできまい。」


私たちは2人で呆然とするがすぐに気を取り直して行動を始める。

そしてそんな話をしてると遠くの方から地を揺るがすような衝撃音が響いてきた。


「すごいな…もう弓将を見つけたのか…?」


「私たちも城へ急ぎましょう、まだ三武将はあと1人残ってますから。」


「ああ…!!」


私たちは警戒を残しつつ、城への道を駆け出した。


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