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第5話 光の騎士

エルフから教わった通り進むと街道に出た。

ようやくちゃんとした人里に辿り着けそうだ。

距離があるがかなりデカい街がここからでも見える。


「城っぽいな…如何にも王様が住んでますよって感じじゃねェか。俄然ロープレっぽくなってきやがったぜ。」


ニヤリと笑うと俺は歩を進めた。

いざ行こうとしたところで俺は重大なことに気づく。


「街道には獣やら食えるやつはいんのか…?腹減ったなァ…」


携帯食も水も何も無い。

森の中は食料になる生き物や湧き水もあったため気にならなかったが、整備された街道に生き物は近寄らないだろう。

飲まず食わずで3日歩く程度歩くのはワケないがあくまで我慢をすればの話だ。

俺はこの世界で我慢をやめることに決めた。

だがわざわざ森の中に食料や水を探しに行くのもアホらしい。

折角街道に出たのにまた迷子になりかねない。

故に俺はひとつの妙案を思いついた。


「歩いて時間がかかるんなら走りゃいいじゃねェか。」


言い終わるや否や俺は地を蹴った。

この世界で初めての全力疾走、俺は自分の身体能力(スペック)をすっかり忘れていた。

走り出す際足を踏み込んだ瞬間地面が抉れ、蹴り出した瞬間に爆ぜた。

掘削用ダイナマイトのようなドデカい爆発音と共に俺の体が有り得ない速度で押し出される。


「うおぉ!?」


あまりに想定外の速度に急ブレーキをかける。

後ろを振り返ると爆撃されたような後と重たい何かを引きずったような二本線が俺の足元から伸びていた。


「ハッハハ…こりゃ街中じゃ迂闊に走れねぇな…」


俺は再び前を向き駆け出す。

今度は街道をめちゃくちゃにしないように加減した。

だが、加減してもかなりの速度がでる。

時速80は超えてるんじゃないかこれ。


「ハッハハハハ!これなら明日中には着きそうだ!!」


ドドドドと土煙を上げながら駆ける。

走り出して3時間ほど経った頃だろうか、全く疲れが滲んでこない。


「いよいよ人間じゃねぇな…ククッ…」


そんなことを呟きながらも足は止めない。

するとだいぶ先の方ではあるが馬車が止まっているのが見えた。

どんどんと近付いていく。

近くに来て気づいた、車輪が外れているようだ。

どうしたものかと馬車の前に立って頭を悩ませていた御者が俺に気付く。

すると顔を真っ青にして大声を上げた。


「お、オーガだああああ!!!!!」


「あァ??」


「ヒィいい!騎士様!!助けてくだせぇぇ!!!!」


御者は馬車の扉を叩きながら喚き立てる。

すると馬車の扉が開き、中から高級そうな甲冑を着込んだ青年騎士が降りて来ると同時にこちらを視認すると血相を変える。


「御仁!下がりなさい!!間違いなく変異種のオーガです!!なんだこの魔力量は…!!!!」


若い…が、強ぇ。

立ち姿で分かる、コイツはハンパじゃねぇ。

俺がそんな風に品定めするように見ていると、向こうも気を持ち直したようだ。


「人に仇なす悪鬼よ…私に出会ったことで貴様の悪運は尽きた。」


コイツと戦えるんだ。

ここは敢えて乗ってやるか。


「ウオオオオオ!!!!!」


「ッ!!なんという圧…!!やはり並のオーガではないな…!?…王宮騎士団団長アーサー・グレゴリオ…参る!!!!」


アーサーの剣先が俺の首を落とさんと向かってくる。

だがこれまでの経験上こいつの剣は俺に効かねぇ。

そう思った矢先、俺の本能が警鐘を鳴らす。

咄嗟に首に当たりそうだった剣をかわす。

すると薄らと首に切り傷が入る。


「…ハッハハ。」


思わず口角が上がる。

だが、それを見ていたアーサーと御者は妙な勘違いをする。


「わ、笑ってやがる…!騎士様!逃げやしょう!!コイツはヤバすぎる!!!!」


「えぇ…そうしたい所ですが…無理ですね。先程の動き…間違いなく私と同等かそれ以上…殿(しんがり)は私が努めます!!姫を連れてなんとしてでも王都へ!!!!」


御者は馬車の中から中学生ほどの歳のガキを連れ出し馬車に繋いでいた馬に乗せる。

ガキはこちらを見ると顔面蒼白になる。


「なっなんですかあの鬼は…!?アーサー!!!」


「姫様…必ず生きて戻ります故、何卒ご無事で!!」


アーサーが馬の尻を叩くと馬は嘶き走り出した。

こちらに向き直るアーサーの()を見る。


「(覚悟を決めたいい目だ…。気高く、己の誇りに一片の悔いもない…ほんとうにいい目だ。)」


俺がそんなことを考えていると、アーサーは剣を胸に掲げる。


「どうやら姫様が逃げるのを待ってくれていたあたり戦闘そのものに悦楽を見出す手合いだな…願ってもない、今しばらくそのままでいてもらうぞ!【聖獄(セイント・プリズン)】!!!」


俺の周りに光の檻が出来上がる。

俺はそれを仁王立ちしてじっと見つめている。


「…元より私の準備が終わるまで待つつもりか…?随分舐められているようだ…だが、今はそれが有難い!"この剣は神の定めし一振である、これは裁き、戒める、断罪の(つるぎ)である。"【目醒(めざ)めろ、エクスカリバー】!!!!」


次の瞬間、アーサーの手に持つ剣から目を覆うほどの光が放たれる。

だが俺は目を閉じず、しっかりと見据える。


光が収まるとそこには先程の鎧姿ではなく、光そのものを身に付けていると言えようアーサーの姿があった。


「さぁ行くぞ…ここからが私の全力だ!!」


瞬間、アーサーの姿が光となって消える。

俺は背後から殺気を感じ、咄嗟に腕で防ぐが剣がザックリと切り込まれる。


「グゥッ!!!」


腕を振り払う。

アーサーはそれに合わせて距離を取る。


「はァ…はァ…(今までのヤツらの比じゃねぇな…こんな深手を負わされたのはギロチン除けば前世も含めて初めてだぜ…)」


「……?何だこのオーガは…魔の者であるにも関わらず魔力を纏っていないのか…?」


俺はアーサーのその呟きを聞き逃さなかった。


「ハッハハ…(魔力を纏う…?コイツはさっき俺の魔力量が云々つってたな…俺の魔力がそれだけ多いなら俺にもできるはずだ。いや、やらなきゃ死ぬ…それだけだ。)」


「まだ笑うか…正に鬼。次は確実にその腕貰うぞ。」


そして光となって移動するアーサー。

俺は極限まで集中する。

できなければ死ぬ。

戦いの中で生き、戦いの中で死ぬのは本望。

だが、俺がまだ強くなる余地を残したまま死ぬのだけは…


「ゴメンだなァ!!!!!」


そう言って殺気を感じた方に斬られた腕をもう一度盾に掲げる。

するとガキィンという金属と金属をぶつけた様な音が鳴り響いた。

アーサーは驚愕に目を見開いている。


「なっ!?喋っ…!?!?それに魔力纏衣も!?!」


だがさすが騎士団長サマ、すぐに気を引き締め距離を取る。


「会話できるほどの知能と今まさに魔力纏衣を習得できるだけのバトルセンス…まさに怪物…か。」


「ハッハハハハ…なるほどな…これが魔力…これが纏うってことかよ………ホントのケンカはこっからだぜ…アーサーああああ!!!!」


俺の魔力を纏った拳とアーサーの光の剣がぶつかり、バチバチと蒼白い火花を散らした。

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