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第44話 潜む不安

「リューゴ殿!そろそろ降りる準備をお願い致す!」


「ああ。」


翠が徐々に減速していくのに合わせて黒姫も減速していく。

下を見てみると発着場であろう場所はかなり混乱していた。


「…なんかあったのか?」


「多分、黒竜が来たからでしょう。」


「ああ…そこそこ有名なのか黒竜…」


「目立ちますもんね。」


俺達は呑気にそんな会話をしているが発着場では迎撃の準備が進められている。


『おい!黒竜が来たぞ!迎撃の用意だ!!』


『いやしかし隣にいるのは翠ではないのか!?』


『黒竜と共にあると言うことはモミジ様はどうなったのだ!?』


するとモミジが指笛を鳴らした。

甲高い音が鳴り響く、慌ただしかった発着場のざわめきも静かになる。


「お前達!今戻ったぞ!!」


そう言って翠を着陸させる。

それに続いて黒姫も着陸する。

モミジとエマが翠から降りるのを見て俺も黒姫から降りる。

だが火縄銃のようなものを構えたヤツらが俺達を囲った。


「な!?何をしているのだお前たち!!」


「モミジ様!早く離れてくだされ!!それは黒竜ですぞ!?その乗り手もかなり凶悪な様相!!里には入れられませぬ!!」


一番歳食ったオッサンが叫ぶように言う。

俺の顔は余計なお世話だっての…


「は!?リューゴさんの顔のどこが凶悪なんですか!!」


エマは変なところに噛み付く。


周りを見ると緊張と怯えが半々ってとこか…


「くだらねェな。」


「な、なんだと!?」


「俺におめェらをどうこうする気があったらわざわざ有利な空から降りてこねェよ。」


「それは…!!」


「その通りだ、タジマ。みなも武器を下ろしてくれ、彼は私の客人だ。」


「なりませぬ…里の危険になり得るものは捨て置けませぬ…!!」


「タジマ…!!」


俺は食ってかかろうとするモミジの頭に手を置く。


「リューゴ殿…?」


「よせ、元々俺達は部外者だ。エマと俺はすぐに出て行く、それでいいだろ。」


「そ、そんな…!!」


「ふん…身の程を弁えているようだな、外海の者よ。」


「タジマ貴様ッ!!!」


「モミジ。」


俺が静かに名を呼ぶとモミジは悔しそうに下唇を噛んで耐える……悪ぃな。


「行くぞ、エマ。」


「はい、モミジまたね!……ベーッだ。」


エマはモミジに手を振りオッサンに舌を出して中指を立てる。

…どこで覚えたんだよ。


俺とエマは黒姫に乗ると飛び立った。

とくに行くとこはねェが山なら誰にも文句言われねェだろ。

あのタジマとか言う野郎はいつかぶん殴る。


「リューゴさん。」


「あ?」


「モミジって結構位の高い人だったりするんですかね?」


「だろうな、多分アイツはこの国の姫かなんかだろ。」


「わぁ!私達お姫様とお友達になっちゃいましたね!」


俺はエマが楽しそうに無邪気に笑うのを見て、イラついてた気分が多少マシになった。


ーモミジsideー


なんたることだ…

私が招いておきながら…あまつさえ助けを乞うておきながら玄関先で追い返す真似をしてしまうとは。

これを恩知らず恥知らず以外のなんだと言うのだ。


リューゴ殿達が飛び立って行くのを私は呆然と眺めていた。

するとタジマが駆け寄ってくる。


「姫様!ご無事でしたか!?いったいどこに行っておられたのですか!!このタジマ、姫様の安否が気になって夜も眠れずにおりましたぞ!!」


「……王都に行っていた。」


「なんと!?何故あのような人の欲が渦巻く汚泥のような場所へ!?」


「何故だ…」


「はい?」


「何故リューゴ殿とエマを追い出した!!?!?彼らは我が里を救ってくれる希望だった!!!!それを…!!タジマ貴様は…!!!!」


「姫様、落ち着いてくだされ。」


「これが冷静でいられるものか!!!!私が彼らを招き、助けを乞い、そして彼らは快くそれを呑んでくれたのに!!!!それなのに……我が里が…私の臣下がその差し伸べてくれた手に刃を突き立てたんだぞ…」


「ヤツらは黒竜を()る余所者、それだけで十分危険でしょうぞ。」


「あの黒竜は、リューゴ殿が竜賊の頭を討ち取って手に入れたものだ…!!」


「それでもです、このタジマいつでも里の為を思い、粉骨砕身して参りました…その私めの勘がヤツらは、とくにあの巨大な男は危険だと言うておるのです…」


「……私はリューゴ殿を信じている。たとえお前が私を長年育ててくれた師だとしても、リューゴ殿を迎え入れたい気持ちは変わらん。」


「はぁ…姫様はどうやら外海に出てお転婆に磨きがかかったようですな、暫くの間自室で頭を冷やされるがよろしいでしょう。」


「………」


私は無言で早足で歩き去る。

周りの臣下達が心配そうに見てくる。

その視線すらも鬱陶しい。

何故誰も私の言葉を聞き入れてくれなかった…彼はこの国を救うための最後の希望だと言うのに…!!


この時私は気付かなかった。


誰にも気付かれずにタジマが厭らしく笑ったのを…


ーside outー


俺達は適当な山の中の開けた場所に着陸する。


「あ。」


「え?どうしたんですか?」


「黒姫どうするか考えてなかったぜ…」


「あ、それなら私がモミジから巻物貰ってますよ!」


そう言ってエマはモミジが使っていたのと同じ巻物を渡してくれた。


「ハッハハハ、気が利くじゃねェか。」


俺はそれを受け取って広げる。


「黒姫、おめェこの中に入れるか?」


俺がそう言うと黒姫は巻物をスンスンと嗅いだ後に鼻先で触れる。

すると巻物の中に吸い込まれ、巻物に黒竜の絵が現れる。


「おぉ…すげェな…」


俺はそれをマジックバッグに入れる。


「よし、とりあえず人の住むとこ行くぞ。」


「はい!この土地に合った服も欲しいですしね。」


俺は魔力感知を使って多い魔力を感じる方に歩き出す。


「リューゴさん初めてなのに道分かるんですか?」


「魔力感知使ってるからな。」


「えぇ!?それってかなり高位の魔法使いかエルフくらいしか使えない技術じゃ…」


「あ?強ェヤツは大体使ってるぜ?」


「私も覚えたいです!またレクチャーしてください!」


「つってもなァ…集中して魔力を感じる、これだけだ。」


「なるほどですね……むむむむ…あ!なんか向こうからフワッと感じますね!」


やっぱりコイツは知識があやふやなだけで天才の類なんだなァ…

俺は知識が無くても覚えたから俺のが天才だがな。


「ほぁー…これが魔力を感じるってことなんですね。」


「使いこなせりゃァ戦闘中に相手が何してくるかも分かるぜ。」


「えっ!?何それ!!ズルくないですか!?」


「ハッハハハ!これをズルってんなら魔法はインチキだな。」


俺は笑いながらそう言うとエマはむくれる。


「むー!絶対その領域まで行ってみせます!!」


「ああ、期待してる。」


「!!」


この話以降、やけにエマが上機嫌になってたが…そんな喜ぶようなこと言ったか…?


そうこうしているうちに村に着いた。

だがそこは絶賛賊から襲撃中だった。


「この大陸の賊がどんなもんか味見してくか、あの竜賊とか言うザコどもよりはマシなことを祈るぜ。」


「はい!魔力感知のいい練習台です!」


そう言って俺達は村を襲う連中に向かって走り出した。

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