表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/82

第38話 Aランクパーティ『爪牙』

ギルドに着くと俺は医務室へ向かう。

扉を開け中に入ると既にハービットと受付嬢の2人がいた、マーセルも目を覚ましているようだ。


ハービットがこちらに気付くと嬉しそうに声を上げる。


「お!英雄のご帰還だ!」


「あ?」


「おかえりなさいリューゴさん。」


「リューゴくんおかえり〜!」


「…おう。」


「…リューゴ殿…本当にすまなかった。」


マーセルがベッドから降り俺に土下座をする。


「私は…貴方を罠に嵌めたのに…厚かましくも助けを求めた…貴方の優しさに漬け込んで…」


「……リオンのヤツから伝言を預かってる。」


「え…」


マーセルが頭をあげる。


「『今まですまなかった。』だとよ。」


「ギルマスが…?」


「アイツはバカだが賢くないわけじゃねェ…もう間違えることはねェだろ。」


俺がそう告げるとマーセルの握った拳の上にポタポタと涙が落ちる。


「後はおめェらが支えてやれ、"ギルド"ってのはそういうもんだろ。」


「はいっ…!はい…!!」


マーセルは涙を拭うこともせず、何度も頷く。


「実はね、さっき『ノアの方舟』から連絡があってね、『正式に中央ギルドと提携したい。』と言ってきたんだよ。」


そしてクロエが補足を入れる。


「幸いなことに『ノアの方舟』に所属している冒険者達はリューゴさんの実力を知っているためか提携に不満はそれほど抱いていないようです。」


「問題は周りの方舟傘下の中小ギルドだよねー…」


エレノアがうんざりしたように言う。

ハービットがそんなエレノアを見て苦笑する。


「離反するか、ボクらを襲ってくるか、反応は様々だろうね…なんせ五大ギルド最弱だし。」


「構やしねェ、襲ってくんなら強ェヤツなら大歓迎だ。」


「わー…リューゴくんらしー…」


ハービットが皮肉るが俺は何処吹く風だ。


「あ、そうだ、マーセルちゃんにはギルマスからもう1つ伝言。『これからオースは荒れるだろう。しばらく中央ギルドの世話して貰え、お前が望むなら移籍も許そう。』だって。」


ハービットがなんでもないように爆弾発言をする。


「え、え?えと…え…?」


一頻り泣いて落ち着いたマーセルに更なる膨大な情報をねじ込んだせいで情報が処理し切れず混乱している。


「わ、私はどうしたら…」


マーセルが助けを求めるように俺を見る。


「甘えんな、おめェの人生だ。おめェ以外に誰が決められるってんだよ。」


「……」


俺の言葉を聞いてハッとしたマーセルは考え込む。


「ま、そんなに急いで決めることもないでしょ!しばらくは臨時の中央所属の冒険者として頑張ってくれたまえ!」


ハービットはそう言って溌剌とした笑顔を見せた。


「話はまとまったみてェだな…」


俺はそう言って医務室を出て行こうとする。


「あれ?どこか行くの?」


エレノアが無邪気に聞いてくる。


「今日は帰って寝る、明日はメシ食ったら東に行ってくる。」


「東…今朝言っていた下駄や和服を…?」


「まぁな…」


俺はそう言って部屋を出ようとする。

だがその前にふと思い出したように龍の眼でマーセルを見る。

称号の中から『折られた正義』は消え、『解放されし者』と『蘇る正義』ってやつが追加されていた。

俺はそれを見て誰にも見えないように笑うと部屋を出ていった。


翌日、例の如く大量の皿を積み上げる程メシを食い準備を済ます。


「さて…行くか。」


「リューゴさん…今度は東に行かれるんですよね…?」


俺が席を立つと後ろからミーナがおずおずと声を掛けてくる。


「……土産、楽しみにしてろ。」


俺はそう言ってミーナの頭に手を撫でるとギルドを出る。


「リューゴさんお待ちください。」


扉を開けようとすると後ろからクロエがいつの間にか後ろに立っていた。


「あ?」


「こちら東の大国ヤマトまでの地図です。」


「ああ。」


俺はクロエの手から地図を受け取る。


「お気を付けて行ってらっしゃいませ。」


そう言ってクロエは深々と頭を下げる。

俺はクロエに背を向け歩き出すが、扉を開けて立ち止まる。


「………いつも助かる。」


そう言って俺は再び歩き出し扉を閉めた。


ークロエsideー


リューゴさんはもうすっかり有名人だ。

残る形での実績が足りない故にAランクに留まってはいるが実力はSランクすら凌ぐまさに生ける伝説。

私はそんな彼の手伝いを少しでもできれば幸いと思っている。

今回は東の大国へ服の新調に行くらしい。

相変わらず突飛な思い付きとすごい行動力ですね。

その為の地図を手渡して彼を見送る。


「………いつも助かる。」


え……?


私が放心している間に彼は行ってしまった。

そして彼の言葉がゆっくりと胸に染み込んでくる。


「ちゃんと、見ててくれてたんですね…」


今の私はどんな顔をしているだろう?

きっと、無表情でないことは確かだ。


ーside outー


王都の東門から出て歩きながら地図を広げる。

どうやらヤマトに行くためには海を渡らんといかんらしい。


東の大国ヤマト、か…日本かぶれなネーミング…

もしかしてヤマトの国を興したのは…


「日本人か…?」


まぁ考えても仕方ねェ…とりあえずは東に向けて走るか。

俺は地図を仕舞うと走り出す。

俺は走りながら故郷を思い出す。


「日本酒やら刺身があったら最高だなァ…」


するとちょっと先を冒険者パーティらしに連中がこっちに向かって歩いて来ていた。

男女2人ずつのパーティ…そしてパーティの後ろを歩く女に俺は見覚えがあった。


「あん時の女か…」


俺はブレーキをかけて止まる。

するとお互い近付いていたのもあり、向こうが俺に気づく。

すると当然女…エマも俺を認識する。


「え…?もしかして…」


エマが俺に気付き放心する。

隣を歩くもう1人の女、多分魔法使い…が心配そうに声を掛けている。


「エマ?どうしたの?幽霊でも見たような顔して。」


するとエマは突然走り出して俺に向かってくる。

勘弁してくれ…


「あ、あの!お久しぶりです!私のこと覚えてますか!?」


「……」


「あ…そ、そうですよね…少し時間も空いちゃったし、私も髪の毛短くしちゃいましたから…」


「……はぁ…森で助けたヤツだろ、妹は元気か。」


「!!はい!お陰様で!!あの時は本当にありがとうございました!!」


そう言ってエマは頭を下げる。

すると後ろからエマのパーティが追いついてきた。


「エマ、この人知り合いなの?」


「うん!前言った私を助けてくれた人だよ!!」


「ほんとにおっき〜…」


そう言って魔法使いは俺を見上げてくる。


「あ、あの!私エマって言います、あの時は状況が状況だったから聞きそびれちゃったんですけど…お名前聞いてもいいですか!?」


「…リューゴだ。」


「リューゴさん…!へへ、お名前も強そうです!!」


エマが俺との再会に舞い上がっていると俺とエマの間にパーティの男が1人割って入ってきた。


「おいアンタ、新米があんまり俺のパーティメンバーに馴れ馴れしくすんなよ。」


逆立ったオレンジの髪と背中に剣を2本背負っている。

双剣士…この世界で初めて見たな。


「ちょっとザック!私が誰と仲良くしようが勝手でしょう!?」


「ま、待てよエマ!俺はお前のためを思って…こんな低ランクの奴より他に良い男はたくさんいるだろ!?」


…あ?低ランク?


「おめェらSランクなのか?」


「いえ!Aランクですよ!」


俺が疑問を投げ、エマが間髪入れずに答えた。


「あ?同じランクじゃねェか。」


俺がそう言って首から下げる冒険者証を指で弾く。

ザックとか言う男は唖然としエマは目を輝かせていた。


「すごいすごい!!リューゴさんもうAランクなんですか!?」


「な…!?ど、どんな不正しやがった!!俺でさえAランクまで来るのに2年かかったんだぞ!?有り得ねえ!!」


「ちょっとザック!リューゴさんが不正なんてするわけないでしょ!!」


「エマ、いやでもだな…」


そんなくだらねェやり取りを他所に魔法使いが話しかけてくる。


「あ、あの…リューゴ…さん?は魔法も使うの?」


「いや…魔法は使わねェ。」


「えぇ!?そ、そんなに魔力が多いのに!?あ、ごめん自己紹介してなかった…私アビゲイル・マードック、気軽にアビーって呼んでね!」


魔法使いと話しているともう1人のパーティの男も入ってくる。


「アビー、この人そんなに魔力多いのか…?あ、俺はゲイル・ユークリウスです。よろしく…」


「うん、すごい…私が見てきた中だとうちのギルマスと同じくらいあるよ。」


「ま、マジか…」


「おめェ…魔力が見えんのか?」


「あ、うん!私、エルフのクオーターで魔力を視認する能力を持ってるの。」


ほう…エルフってなァ…そうなのか…だいぶ前に戦ったヤツもほうだったのか…?


「でもエルフ全般がそうってわけじゃないみたいだけどね。」


どうやら違うみてェだ。

俺がそんなことを考えているとエマとザックの言い合いがとりあえず終わったらしい。


「リューゴさん行きましょう!私もヤマトにお供します!!」


「な!?おい!エマ!!」


ザックが焦るように叫ぶ。


「私の恩人のこと悪く言う人とはパーティなんて組めません!!二度と話しかけないでください!!!!」


その様子を見ているアビーとゲイルはあーあ…と言った呆れた表情をザックに向ける。


「ふざけんな!俺はパーティリーダーだぞ!?そんな勝手が認められるか!!」


「私最初に言いましたよね?もし恩人が見つかったらその人について行くって。」


俺の意志を度外視で話しているが、正直どっちでもいいと思っていた。


「ぐっ…!くっ!おい!!デカブツ!!俺と決闘しろ!!」


ザックは背中の剣を抜く。


「ちょっとザック!?」


「おいザック!落ち着け!!」


「うるせぇ!!!!エマは俺のパーティメンバーだ…!!絶対に連れて行かせねぇ!!!!」


「(勘弁してくれ…)」


俺は空を仰ぐことしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 怒涛の展開ww クロエちゃんやらマーセルちゃんやらエマちゃんやら…。 増えていくぜ、リューゴくんに骨抜きにされちゃった子がよォ…。 しかも、ザックとリューゴでエマちゃんの取り合いだとォ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ