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第37話 方舟堕つ

「くそっ!なんて硬さしてやがる!!」


「……」


リーは死に物狂いで俺を打つ。

だが俺にはまるで効かない。


「テメェ…何を迷ってやがる?」


「ッ!!」


「テメェの拳からは迷いとちょっとの後悔を感じる。」


「うるせぇよ!!!!【波山猛虎】!!!!」


直突きの拳が俺に当たると体内を衝撃が走り背中に突き抜ける。


「これでちったぁ効いて…」


リーの手首を掴む。


「はっ!このバケモンが…」


手首を掴んだままリーを地面に叩き付けた。


「ゴハァッ」


そして叩き付けたリーに更に追い討ちをかける。


「中途半端な気構えで戦場に出てくんじゃねェ!!バカ野郎がァ!!!!」


黒纏に雷撃を纏いリーの腹目掛けて拳を叩き付けた。


「うグハァッ!」


そしてそのままリーはぐったりして動かなくなる。

俺は背を向けたまま後ろの男に声を掛ける。


「おい…」


「!?」


そしてゆっくりと振り返る。


「おめェにとって仲間って…ギルドってなんだ。」


「な、何が言いたい…!?」


「もう一度聞くぜ…おめェにとってギルドとは、なんだ。」


「…私にとってギルドとは、力だ。強く大きくなれば何者にも脅かされることなどなくなる…それこそがギルド、権力という力だ!!私はありとあらゆる手を使ってこのギルドを大きくしてきた…そうしてここまできた!!今や五大ギルドの一角とまで言われるようになった…だが…私のギルドは数は多いが個の力は弱い…そこに現れた『アスガルド』や『インドラの矢』のような個を武器とする者達…これ以上この地位が脅かされることなど、あってはならない!!!もう二度と…踏み躙らせなどしない…!!私はギルド『ノアの方舟』ギルドマスター、リオン・ジルベール!!!!『氷王』である!!!!」


冷気と魔力が吹き荒れる。


「……その強さをどうして仲間を守るために使わなかった…なんで…権力とかいうクソみてェなモンを守るために使ったァ!?!!!」


怒りは()()()()()()()

俺の周囲を赫い雷が迸る。


「お前に分かるはずもない!!!権力が無ければ何も守れない!!!全てを守るためには…犠牲が必要なんだよ!!!!【氷歩兵(ポーン)】!!」


無数の氷の兵士が現れる。


「しゃらくせェ!!!!」


鬼哭を横薙ぎに振るうと赫い雷が走り次々と歩兵を破壊していく。


「くっ…!【氷戦車・氷僧侶(ルーク・ビショップ)】!!」


氷の戦車と僧侶が俺を囲むように現れる。

戦車の中に僧侶が乗り込む。


「【天蓋洛星(てんがいらくせい)】!!!!」


俺は目の前の戦車に鬼哭を振り下ろす、それと同時に赫い落雷が落ちてくる。

氷の戦車は見るも無惨になるが僧侶の持つ杖が光ると元通りになった。


「あァ?」


高耐久の戦車とそれを永久的に回復させる僧侶…コイツ…組み合わせ考えてやがる…!!


「跡形もなく消し飛ばしてやらァ…!!」


俺は息を大きく吸って口を開けると魔力が収束されていく。


「【雷轟(らいごう)】!!!!」


口から雷のブレスが放たれる、俺の前方に布陣する戦車を僧侶諸共消し飛ばす。


「ガアアアア!!!!」


ブレスを周りに向けて放射しながら放ち、戦車を全て破壊した。


「本当に…強いなお前は…」


リオンは羨望を滲ませたような諦観を滲ませたような声で言う。


「……これで…終いにしようぜ。」


「ああ…私の魔力も残り少ない…これが最後だ。」


2人の魔力が高まる、先に動いたのはリオンだ。


「【氷神(ユミル)】!!!!」


地が裂け、裂け目から氷の巨大な手が現れる。

中から氷の魔神とも言うべき巨人が現れる。


「【天雷(てんらい)】。」


俺の全身に魔力が漲る。

赫い雷がバチバチと走る。

俺の髪も赫く染まり逆立つ。


巨人は拳を振り下ろしてくる。

まるで隕石のような一撃。

俺は片手を前に出す。

そして圧倒的な質量を俺は受け止める。

そして次の瞬間には巨人が沈んでいた。


「バカな…」


リオンは唖然とする。


「待たせたなァ…これがおめェの言う犠牲になった…」


俺は拳を握り込み、静かに告げる。


「マーセルの分だ。」


そして思い切りリオンのツラをぶん殴った。


「ガハァッ」


壁に叩き付けられ、そして余波で周りも吹き飛ぶ。

俺はリオンの元へ歩いて行く。


「………」


「はぁ…はぁ…ゲホッ…私は…どうすれば…良かった…?」


「……知らねェよ。」


「はぁ…ふ、ふふ…そうか…」


「……周りをちゃんと見ろ。」


俺はそれだけ言って歩き出す。


「…………待て…」


「あ?」


「……マーセルに…伝えてくれ…すまなかった…と…」


「……一応、伝えておいてやる。」


それを最後に俺は『ノアの方舟』を出て行った。


ーリオンsideー


夢を見た…昔の夢…


小さい頃、私は貧しかった。

だがそれでも幸せだった…両親と弟と慎ましくも穏やかで優しい日々を送っていた。

ただその日々も唐突に崩れ去った。

貴族たちによって貧民街に火が放たれたのだ。

そしてなんと貧民狩りと称して老若男女問わず貧民街の住人を襲い始めた。

私は父に弟は母に抱き抱えられて走る。

1発の銃声、母が凶弾に倒れる。

母は弟を守るように抱え込む。

貴族連中はニヤニヤしながら母を取り囲むように歩み寄って来る。

父は私を物陰に隠して母を助けに行く。

だが多勢に無勢、父は母を守るために奮闘するが相手の手には銃が握られている。

最後には何発も銃弾を浴びて倒れた。

母も涙を流しながら弟を守るために貴族連中に掴みかかるが何発も撃たれてしまった、そして弟も…


「はぁーこの女良い女だったのによ。」


「殺しちまうこと無かっただろ。」


「仕方ないだろ、掴みかかってきやがったんだからよ。」


私の家族を殺した後に日常会話のようなノリでそんなことを宣う。


何故だ?何故こんな横暴が許される?


何故私はこんな物陰で蹲って息を殺している?


何故、奪われなければならない?


「全部…全部全部全部僕が弱いからだ…」


その瞬間、私の魔力は覚醒した。

皮肉なものだ大切なものを守れるだけの力が失った後になって手に入るなんて。


私の家族を奪った貴族どもは一族郎党皆殺しにした。

そして私は悟った、この世は力が全てなのだと。

権力も魔力も全て…無ければ奪われるだけだ。


そして目が覚める、崩れ落ちた屋根が見える。

ああ…そうか、私は負けたのか…

私は最後に彼が言った言葉を思い出す。


『……周りをちゃんと見ろ。』


私は…見ているようで全く見えてなかったんだな…


全く…本当にままならないものだ…


ーside outー


俺は王都へ戻る道の途中で野営をしていた。

道中狩ったイノシシの魔物を焼きながら今日のことを思い返す。


「……ガラにもねェことしちまったなァ…」


そう言って肉にかぶりついた。

良いことしたからなのか、腹が減ってたからなのか、やけに肉が美味く感じた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ☆作者さんと友達になれて嬉しいです!  いつも感想にコメントありがとうございます! リューゴくん、マーセルのことをちゃんと考えていたんだ…! どうか、ギルド“ノアの方舟”がいい方向に向かい…
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