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第3話 焔の一太刀

俺の前にいる騎士のような見た目の奴らはどうやら野党ではないにしろ良い奴ってわけでもないらしい。

何にしろひとまずこのガキどもを逃がすのが先決か…?


「おい、ガキ。」


「ひゃい!!」


「コイツらとは俺が遊んでやる、どこへなりとも失せろ。」


「へ…?」


「二度言わせんじゃねぇ。」


「は、はい!ありがとうございます!」


姉の方が俺に頭を下げて妹の手を引いて走って行く。

よし、とりあえずこれで暴れても問題ねぇだろ。


「待たせたな、さて誰から…」


喋ってる途中で剣を突き立てられた。

まぁ俺の身体には刺さりすらしないんだが。


「おい、人が話してる途中だろうが。」


そう言って俺は剣を突き立ててきた野郎の頭を掴み握り潰した。

トマトが潰れるような音と共に血が噴き出す。

フルフェイスの鎧のおかげであまり汚れはしなかったが汚いものは汚い。


「脆いなァ…」


俺がそうボヤいているのを周りの騎士は呆然と見つめていた。

だが事態を把握するとリーダーらしき男が絶叫した。


「お、お前らぁ!!!このバケモノを何としても仕留めろぉ!!!!」


「で、でも隊長!あいつ剣が刺さらなかったんすよ!?」


「何かしらトリックがあるに決まってる!!付与のかかった剣を受け止めるなんてそれ以外有り得ん!!!」


ほう…付与のかかった剣、てことは魔法ありきの世界か。

なんてことを考えてるうちに次々と騎士崩れの連中が斬りかかってくる。

だが、無論俺は魔法なんて使っておらず、その上で剣が刺さらなかった。


「た、隊長ダメです!!斬れないし刺さりません!!」


「クソォ!!なんなんだお前はァ!!!!」


故にこうなるのも必然だった。

そろそろ飽きてきた俺は連中に殺意を向ける。


「どうやら俺の身体は()()()に来てから本当に人間離れしたみてぇだな…検証に付き合ってくれた礼だ、受け取れ。」


そう言って俺は先程殺した男の死体の足を掴んで横薙ぎに連中に叩き付けた。

全員吹き飛び、中には胴と下半身がもげてしまった者もいる。

だが隊長と呼ばれていた男は隊列の後ろに居たからか辛うじて生きていた。


「ヒュー…ヒュー…ゲボッ…きざま……ばげ…も…の…」


そう言って隊長の男は事切れた。


「チッ…折角異世界で加減せずに暴れられると思ったのによォ…こんなんじゃ向こうと変わりゃしねぇじゃねぇか…」


俺はひとまず連中の襲った村へ行くことにした。

連中の来た道を辿って行くとすぐに村に着いた。

そこには連中と同じ格好した奴らがわんさかといた。

どうやら俺が潰した奴らは斥候部隊のようなもんらしい。

俺は真正面から乗り込むことにした。


「な、なんだてめぇ!この村のモンか!?」


如何にも下っ端って感じの男が怒鳴ってくる。


「うるせぇよ!!」


裏拳で壁に吹き飛ばそうとしたら力をこめ過ぎて上半身が消し飛んだ。

残った下半身は力なくその場に倒れ伏した。


「あァ?…やっぱ脆いなァ…」


その一部始終を見ていた騎士集団がざわつく。


「なんだよあいつ!?今拳で上半身が消し飛んだぞ!?」


「人型モンスターか!?」


「魔族ってことかよ…!?」


「うるせぇぞお前らァ!!!!」


下っ端が恐慌状態に陥りそうになっていたのを奥から響いた怒号が諌めた。

俺は奥に居座る大剣を担いだ男を見て嬉しくなった。


「なんだよ…マトモそうな奴もいるじゃねぇか…!」


大剣の男は俺程じゃねぇがなかなかの体格をしていた。

これは楽しめそうだ、そんなことを考えていると大剣の男が声をかけてきた。


「てめぇ…何モンだ…?この村の人間じゃねぇだろう。」


「おめェらはさっきガキを追い回してたゴミの仲間だろ?」


「!!…そうか、てめぇがカーマ達を…」


「金で雇われた傭兵が一人前に仲間の死を悲しんでんじゃねェよ。」


「そこまてん知ってんのか…ならもう生かしては帰せねぇな。」


「ハッハハハ!そりゃァこっちのセリフだぜ…」


男は大剣を構える。

俺はノーガードの自然体のまま。

男は大剣を構えたまま眉を顰める。


「おい、早く構えろ!」


「あァ?構えだ?ンなもんねぇよ、好きにかかって来い。」


「チッ舐めやがって…後悔すんなよ!!」


言い終わると同時に駆け出し、大剣がうねりを上げて迫ってくる。

俺はそれを片腕で受けた。

その瞬間、金属と金属をぶつけた様な甲高い音が響く。

大剣の男の顔は驚愕に染まっていた。


「あ?…なんだよやっぱこんなもんかよ…」


俺はショックと失望が綯い交ぜになった最悪の気分だった。

如何にも強者のような雰囲気を纏うこの男ですら自分と対等にケンカできないのかと。

だが、男が飛び退いて言った。


「まさかここまでのバケモンとはな…悪ぃが様子見は無しだ、本気でやらせてもらうぜ。」


男がそう言った瞬間大剣を覆うように炎が噴き出した。

俺の内心はワクワクを抑え切れなかった。


「おいおい…期待させる演出じゃねェか…!!」


「はァ…こいつを見せてそんな嬉しそうにされちまうと自信無くすぜ…ったくよォ!!!」


男は炎を纏って斬りかかってくる。

俺はそれを先程と同じように腕で受けた。

次の瞬間、腕から鋭い痛みを感じた。

だが男もまたしても驚愕の表情を浮かべた。

そしてまたしても男は後退する。


「ハハハハハ!痛てぇ!!見ろ!!俺の肌が切れてやがる!!!」


「何なんだてめぇ…俺の【豪焔剣(フレイム・ブレイド)】で薄皮1枚斬っただけだと…!?なんの冗談だちくしょう…!!」


その光景を見ていた男の部下たちも絶望している。


「ボスの切り札が…嘘だろ…?」


「何なんだあいつ…本物のバケモノじゃねぇか…」


俺はそんな周りの声も気にならないくらい気分が良かった。

この世界はもしかしたら俺に傷を付けられるものがまるでいないのかと、対等なケンカが一生できないのかと思っていた。

そんな矢先、早くと俺に一太刀浴びせる男が現れた。

ご機嫌にならないわけがなかった。


「俺ァ今最高に気分が良い、おめェらを皆殺しにすんのはやめだ!今から1発だけ殴る生き残って見せろ。」


そう言って俺はニヤリと笑う。

男は冷や汗をかきながらもニヤリと笑い返してきた。


「ハッ!ありがてぇ…死んでも耐えてやるよ!」


「よく言った…オラァッ!!!」


一瞬で距離を詰め腹をぶん殴る。

かなり硬ぇ感触を感じる、魔力かなんかで上手く防いだのかもしれねぇ。

だが、男は家屋をいくつも貫通しながら吹き飛んで行った。

俺は踵を返して森の中を進んで行った。


あえて生死は確認しねぇ。

あいつはきっと生き残る、次に会ったらもっと強くなってもっと楽しいケンカをするんだ。

そう決めた俺はご機嫌なまま森を抜けるため真っ直ぐ歩いた。




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