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第29話 傲慢の代償

 魔力感知で探るとよく分かる…多くはねェが、さっきのマンモスレベルのヤツがチラホラいやがる。

 じっくり探していきてェが、山頂のヤツが気になるしなァ…


「とりあえずはこの山のヌシに挨拶ってとこだな。」


 そしてそれからはデカい魔力を避けて登って行った。

 山頂にたどり着くと、そこにはかなり大きな遺跡があった。


「こりゃァ…銀龍(アイツ)の時と違ェな…」


 銀龍は突然王都の近郊に現れ巣食っていた。

 だがこの遺跡を見るにここの龍はどうやら自分の巣をちゃんと持ってるらしいなァ…

 遺跡の中は薄暗い、だが足を踏み入れた瞬間壁の燭台に次々と青い炎が灯る。


「……俺を誘ってんのか…?」


 そう呟いて俺は奥へと進む。

 かなり長ェ通路だ…生物の気配もしねぇ…

 しばらく進むと、両の壁際に巨大な四足の龍を象った像が建てられているデケェ門にたどり着いた。


「………誰か見てんな…」


 この門が見えた辺りからずっと視線を感じるがどこからか分からない。

 人間特有の探るような視線ではなく、殺意全開の敵意の視線だ。

 俺が殺気混じりの視線を辿れねぇのがどうにも腑に落ちねェ…


「ん〜…とりあえず中に入ってみるか…」


 そして、門に触れようとした瞬間俺は後ろに飛び退く。

 俺が先程いた場所に何かが振り下ろされ轟音が響く。


「なるほどなァ…灯台もと暗したァよく言ったもんだぜ。」


 俺に攻撃をしてきたのは、壁際に控える龍の像の一体だった。


「殺意を感じるってことは生きてるってことか…?」


 前世の記憶じゃだいたいこの手の敵は生き物ではなく、何かしらの仕掛けで動いているイメージだが、目の前の石像(コイツ)からは殺意、つまり()()()()()()()()()()()()()()()


「生きてんなら殺せるってことだよなァ…」


 そう言って俺は口角を上げる。

 そして鬼哭を構えて駆け出す。


「石像にこいつァ効くぜ!!!」


 そう言って鬼哭で殴り付ける、石像は翼でガードするが俺の一撃で粉々に砕け散った。


「無駄だ、たかが石程度じゃァな。」


 そう言ってもう一度振るうと、石像は俺の一撃を目で追いながらも動かない。


「(あ?諦めたかコイツ…)」


 そう思った瞬間、咄嗟に石像の龍は鬼哭をかわした。

 俺はそのまま振り切ってしまい、石像の前脚による攻撃をモロに受けた。

 俺はそのまま壁に叩き付けられるが、ダメージはほぼない。

 だが俺はダメージ以上に衝撃を受けていた。


「コイツ…!今俺の一撃を()()()()()()()()()()()|!!!!」


 この石像知能まで備わってやがる…!俺の鬼哭での一撃を受けるのは危険と判断して、あえて攻撃を誘って避けやがった…!!


「面白ェ…!!たかが石像如きが俺を出し抜くたァいい度胸だ…!!!」


 俺の魔力が高まり、バチバチと雷が迸る。

 鬼哭を思い切り振りかぶる。


「こいつはどう避けるよ、カタブツ。【鬼葛(おにかずら)】!!!!」


 鬼哭を振るうと同時に放たれる圧縮された空気の大砲。

 石像はそれを避けること叶わず頭に受け粉々に砕け散った。


「ま、こんなもんだわなァ…」


 そう言いながらもう片方の石像を見る。

 動かないのを確認すると門を押し開けた。

 重い音を立てながらゆっくりと開いていく大門。

 部屋の中は全てが氷で覆われており、一面銀世界だった。

 中には、一体の龍眼佇んでいた。

 白い鱗に覆われ、額から大層な1本の角が生えている。


「おめェか…?俺に度々殺気飛ばしてたのは。」


『如何にも、不躾とは思いましたが如何せん妹を叩き伏せた方でしたので。』


「妹…銀龍(アイツ)がか。」


『そうです、あの子は昔から好奇心が強かったですが、今回はそれが災いしましたね…』


「おめェの気持ちは分からんことも無いが、アイツは王都の近場を荒らしてたんだ、命があるだけ感謝してもらいてェぐらいだがな。」


『人間の事情など知りません。貴方は私の妹を()った、それが事実です。』


「あァ?随分勝手じゃねェか。」


 白龍が翼を一度振るうと周りに氷柱が形成される、切っ先をこちらに向けて。


『強さとは我儘を押し通す力です。人間に生まれたことを後悔なさい。』


 そう言い終わるや否や、氷柱が全て俺に殺到する。

 全てが着弾し、水煙が舞う。


『他愛もない…我が妹は本当にこの人間に負けたのですか…?』


 白龍がそう呟く。


「ああ、間違いなく俺が負かしたぜ。」


 そう言いながら、俺はなんでもない顔で煙の中から姿を現す。


『流石ですね…ならばこれはどうですか。』


 右前脚で地を叩くと俺の周りに氷の檻が出来上がる。

 俺はそれを無造作に鬼哭を振って軽々破壊する。

 だがそれは布石だった、目の前で白龍の口からバチバチスパークを散らしながら魔力が収束していく。


『【死凍の息吹(コキュートス)】。』


 瞬間、俺の視界は真っ白に染まった。


 ー白龍sideー


 正直、結構期待していたと思います。


 私の妹が人間と一対一で戦い負けたと言う。

 最初はもちろん信じなかった、本来人間が龍に勝つなど有り得ない。

 だが、妹があまりに必死に語るものだから、私はその人間に興味を持った。


『その人と遭遇しても戦っちゃダメですからね!!絶対!!!!』


 念話で妹にそう言われる。

 だが、ダメだと言われたらやりたくなる。

 それに、それだけ強いのならどれだけのものか味見したくなるのも仕方ないと思うのです。


 そして現れたその男は確かに強かった。

 様子見の攻撃とは言えそれを無傷で受け止めてみせた。

 故に結構強めの攻撃を放った。

 そして今、目の前に氷像と化した男がいます。

 期待していたのもあって、私は寂しい気持ちに襲われる。


『やはり人間が龍に勝つなど…』


 そう言いかけたところでピシッと何かが割れるような音が聞こえた。


 ーside outー


 俺を覆っていた氷が割れる。

 冷てェ、俺の感想はただそれだけだった。


『まさかあの攻撃を生き残るとは…』


 白龍は感嘆した声を出す。

 だが俺は怒りの頂点だった。


「おめェ…舐めてんのか…?」


『?』


「俺が人間だから手ェ抜いてんのか?」


『ああ…それは仕方の無いことです。手を抜かねば、すぐ終わってしまいますから。』


「そうかよ…後悔すんなよ。」


 俺がそう言った瞬間、俺は魔力を放つ。

 ビリビリと大気が揺れる、俺の周りをバチバチと雷が迸る。

 俺はそのまま鬼哭に魔力を纏う。


『!!…これは…少々侮りすぎてたいたかもしれませんね。』


 白龍はそう言って雰囲気が変わる。


「遅せェよ。【天落・洛陽(あまおとし・らくよう)】!!!!」


 だが次の瞬間、鬼哭が白龍の背中へ振り下ろされる。


『グガハァッ!?!!』


 白龍が叩きつけられた衝撃で巨大なクレーターができる。

 俺はぐったりした白龍の上に腰掛ける。


「舐めプってのは格下にするもんだぜ、()()()()()。」



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― 新着の感想 ―
[一言] 性別分かるんか…! 1人称“私”だからか…? 明らかに強い技(死凍の息吹)から生還するとか…。 流石、歩く規格外。
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