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第26話 鬼神VS海魔

洞窟の中に何度も爆発音が響く。

一見互角に見えるぶつかり合い、だがその実かなり一方的な展開だった。


「どうした、そんなもんか?」


「ぐううう!!舐めるなああああ!!!!!」


俺はマーセルの攻撃を防ぎ続けているが、そこまで消耗はしていなかった。

だが、逆にマーセルは頭に血が上っているのもあってか、動きに無駄がありそれで尚攻撃を続けている、もはや肩で息をしている状態だ。

それでもギルドマスターとしての意地なのか、更にマーセルの速度が上がる。


「ハッハハハ!良いじゃねェか!!」


マーセルの槍の威力と速度がどんどん上がっていく。

だが、ふと槍撃の嵐が止む。


「あ?」


「はぁ…はぁ…これでもまだ足りぬと言うのだな……これは私にも著しい負担がかかるため使いたくは無かったが…止むを得まい。来たれ、【海神の三叉槍(トライデント)】!!!」


マーセルの呼び声で手に黄金の三叉槍が現れる。

俺はそれを見て更に笑顔を深めるとマジックバッグに手を突っ込んだ。


「俺もとっておきを見せてやる。」


バッグの中から無骨な六角金棒が出てくる。

マーセルはそれを見て更に警戒を強める。


「貴様程の者が持ち出す物だ、見た目が悪くともかなりの業物と見て相違無いのだろう?」


「ご明察だ。」


金棒をバッグから抜き切るとそれを手慣らしに振る。

その風圧だけで周りの海水が弾け飛んだ。


「さァ…2回戦だ…!!」


「はあああああ!!」


槍に膨大な魔力を纏って突っ込んでくるマーセル。


「そりゃァ、悪手だろ。」


俺は槍の先端を鬼哭で無造作に弾いた。

一瞬の均衡もなくアッサリと弾き返されるマーセルの突進。


「なっ!?」


「【雷鳴怒涛(らいめいどとう)】!!!!」


大層な技を名乗っちゃいるが、ただ単に全速力で移動し魔力を乗っけた鬼哭でぶん殴るだけ。

単純(シンプル)、故に、強い。


「ガッ!?」


いつ殴られたのか知覚できてないだろうマーセルの鎧と槍は粉々に砕け散り、そのまま地に倒れ伏した。

だが、ゆらりと立ち上がる。


「まだだ…まだ、私は…負けてないッ!!!!」


そしてさっきよりも膨大な魔力が放出される。


「【海の魔王(クラーケン)】…!!」


マーセルの姿が水のドレスに変わっていく。

なんだ?鎧の方が強そうだったが…試してみるか。


「【鬼葛(おにかずら)】!!」


金棒を振るい圧縮された空気弾を放つ。

すると、水のドレスにぶつかるが飲み込むかのように衝撃を吸収してしまった。


「ほう…面白ェ!!」


俺は鬼哭に魔力を一気に流し込む、すると鬼哭が蒼白い光沢のある黒に変色する。


「コイツはどうだァ!?」


「ッ!!【海蛇(シーサーペント)】!!」


足元の海水から何体もの巨大な水の蛇が出現する。

コイツの反応…魔力を纏ったモンなら効くっぽいなァ…

俺は周りの蛇どもを魔力を乗せた鬼哭で叩き伏せるとただの海水に戻った。


「くっ!」


マーセルは悔しそうに呻くと水の上を滑るように洞窟の外へ向かって行った。


「(逃げじゃねェ…戦い方から見るに水の多いところで本領発揮ってタイプなんだろうなァ…)」


俺はマーセルを追いかけて洞窟の外へ向かう。

そして洞窟の外へ出ると、先程より数倍も巨大な蛇を作り出したマーセルが待ち構えていた。


「私は【海魔】のマーセル…!!(ここ)なら絶対に負けはしない!!!!」


「チッ…海の上、か…めんどくせェ…」


こりゃァ、()()()()()()()大丈夫そうだなァ…

面倒な相手だと思った時は不愉快だったが、本気で戦えることに俺は思わず口角が上がる。


「おい、ちゃんと守れよ。」


「なっ!?舐めッ!?」


マーセルが何か言う前に海に叩き落とされる。

ど派手な着水と巨大な飛沫が上がる。

だがすぐにマーセルは海中から飛び出してきた。


「クソ…!!【龍の咆哮(ドラゴン・ロア)】ァああ!!」


マーセルの魔力で海水が龍の頭に変化すると口から極大の水のレーザーを撃ち放った。


「フン!」


片手で鬼哭を振るい真っ向から迎え撃つも鬼哭がレーザーとぶち当たった瞬間、大爆発が起きた。


マーセルは滝のように汗を流し、顔は疲弊の色に染まっていた。


「はぁ…はぁ…これで生きてたら…悪夢だな…」


「あァ〜…今のは効いたぜ。」


俺はボロボロになった服が邪魔になり、ビリビリと破りながら水煙の中から出てくる。


「本当に怪物だな…」


顔に諦観の年が滲む、だがマーセルの表情は晴れやかだった。


「次は必ず勝つぞ。」


「ああ…楽しみにしてるぜ。」


俺はニヤリと笑って、海岸まで思いっきり鬼哭で殴り飛ばした。


ーマーセルsideー


大広間で目にした時から強いとは思っていた。

魔力も、佇まいも、並ではない。


だが


だが


「(これほどまでなのか!?!?)」


有り得ない、なんなのだこの男は私の槍による攻撃を反撃することなく防御し続けている、それも素手で!!

攻めているのはこちらなのになぜ私だけ疲弊している!?


奥の手の一つである【海神の三叉槍(トライデント)】を使うしかあるまい…

奴も武器を取り出す。

王都に放った偵察隊からは奴は武器を使って戦ったことないと聞いたが…まさか…!この期に及んで遊ぶつもりか…!?

許せない…!!絶対に討ち取ってみせる!!!!


私の槍にありったけの魔力を注ぎ込み、必殺の刺突をお見舞する。


「なっ!?」


馬鹿な!?!?片手で無造作に振るわれた鉄の棍でこんなにもあっさりと!?!?!!


「ガッ!?」


なんだ…!?何を受けた!?何をされたんだ…!?

クソ…こんなバケモノがBランクだと…!?なんて

タチの悪い冗談だ…!!


だが、負けられない…!!


私は【海魔】の由来となった戦闘装束(ドレス)を身に纏う。

そして海蛇を生み出して応戦するが、如何せんここは水が少ない…

私は急いで洞窟の外へ抜ける。


ここなら負けない!!ここなら…勝てる!!!!

そう思ったのも束の間、奴は私の攻撃を尽く潰し、そして私のなけなしの魔力を振り絞って放った一撃も服を吹き飛ばす程度…か。


完敗だな…


だが、私の心はむしろ晴れやかだった。

ここまでして勝てない相手がいる、自分がどれほど井の中の蛙だったことか…フフ…次は正々堂々と戦い勝つぞ、リューゴよ。


最後に奴の金棒を受け止めて、私の意識は闇に沈んだ。


ーside outー


マーセルが倒れ、俺は鬼哭をバッグに仕舞いながら、もう少し出し入れを楽にしてェなァ…などと考えていた。


「あん…?」


腕からチクッとした痛みを感じ、見てみれば小せェ切り傷ができていた。


「……くだらねェマネしなくてもやりゃできるじゃねェか。」


そう言って俺はニヤリと笑うと、上機嫌に王都(ホーム)へと歩き出した。



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― 新着の感想 ―
[一言] よく、戦いで相手の心に触れる、とか言うけど、今回の話はそんな感じなんだろうな。 最終的に互いが互いを認めあう感じが凄く良いな、と思いました。 てか、“本気”に耐えられる人間がいたとは…。
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