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第23話 五大ギルド

 翌日の朝、俺は宿の中庭で鬼哭を振り回していた。

 上半身は裸のまま、いち早くこの金棒に慣れるためにブンブンと空を切る音を鳴らしながら幾度も振るう。

 両手で振る、片手で振る、縦、横、袈裟、様々な角度、方向に振るう。

 俺はひたすら無心で金棒を振っていた。

 すると、腹が盛大に鳴った。

 俺はハッとして空を見る、太陽がいつの間にか俺の頭の上まで昇っていた。


「気付かねェうちにもう昼か…」


 中庭にある井戸から水を汲んでバケツからガブ飲みする。

 そのまま頭から水を被る。

 思い付きで魔力を放出するとパンと水が弾かれ、一瞬で身体が蒸発する。


「腹減った…」


 そう呟いてシャツを着てそのまま宿を出る。

 足に違和感を感じふと足元を見る、愛用のクロックスがとうとう限界に達し先の方が横にバックリ割れていた。


「そういや、この世界に来てから靴買ってなかったな…」


 クロックスを脱いで中庭の隅に埋めて墓を立てた。


「じゃあな相棒、世話ンなった。」


 …愛用していただけあって少しだけ寂しかった。


 俺は裸足のまま冒険者ギルドまで来ていた。

 中に入りカウンターのクロエに声をかける。


「よう、なんか手頃な依頼あるか?」


 クロエは俺の顔を見るとホッとしたような表情になった。


「おはようございます、リューゴさん…少しお時間よろしいですか?」


「あん?」


「実は…南方ギルド『ノアの方舟』からレイド参加の誘いが来ているのですが…」


 ノアの方舟??レイド参加???


「なんだそりゃァ…?」


「そうでしたね、リューゴさんが規格外過ぎて基本的な説明をまるでしていませんでしたね。では改めて、ギルドについてご説明致します。このギルドは大陸の中央に位置する中央ギルド、名を『真実の太陽(ファクト・ソレイユ)』、そして特殊な文化と技術を以て数多の良質な武器を作る東方のギルド『天叢雲(あまのむらくも)』、少数精鋭の強大な魔力を有する者達を選びスカウトして作られた西方のギルド『インドラの矢』、質より量、5大ギルドの中で傘下のギルドとギルドに属する冒険者の数が最大である今回のレイド参加の誘いをかけてきた南方のギルド『ノアの方舟』、そして完全実力主義、強さこそが力の圧倒的武力を誇る北方のギルド『アスガルド』、この5つが大陸を代表する五大ギルドと呼ばれています。」


 俺は説明を聞きながら、全部聞いたことのある名だなァと思いながらも口を閉ざしていた。


「実はギルド自体はほかにも沢山あるのですが、その全てがどれかの五大ギルドの傘下に属しています。」


「じゃあこのギルドにも傘下のギルドがあんのか?」


「…いえ、当ギルドはご存知の通り火の車です。故に、他の中小ギルドも手を組みたがらないのです。」


「全部前任のギルマスが撒いた種ってことかァ…」


「仰る通りです。」


「で?なんでその弱小ギルドをレイドなんてモンに誘うんだ?」


「レイド戦は五大ギルド定例会議にて、討伐以外の余地無しと判断された大型モンスターを複数パーティと共闘して討伐にあたる大規模戦闘です…今回我々のギルドが誘われたのは恐らく見せしめと格付けかと…」


「なるほどなァ…」


「レイド戦はAランク以上のパーティでの参加が規則です。ですが我々のギルドには…」


「それだけの余裕がねェ、と…良いぜ、俺が行ってやる。」


「よろしいのですか!?」


「構わねェ、強ぇヤツとやれるんだろ?願ったりだぜ、けどランクはどうするよ、俺ァまだBだぜ。」


「『戦力として投入できる者がBランク冒険者リューゴただ1人ではあるが、その力は既にAランクを凌ぐとのこと故、特例として認める。』らしいです、ギルマスがかなり頑張ってくれました。」


 クロエはそう言って眉を下げる。


「で、いつどこでやんだよ、そのレイド戦。」


「明日正午に、ギルド『ノアの方舟』の前に集合、とのことです。」


「フン、誘っといて来い…ねェ。」


「リューゴさん、すみません…」


「おめェが謝ることじゃねェよ、とりあえずメシだメシ。」


 そう言って俺は食堂の方へ歩いて行った。


「詫びはキッチリ向こうに入れてもらうぜ…」


 俺のその呟きは誰にも聞こえなかった。


 いつものように何十枚も大皿を重ねた塔が幾つもできあがり、俺が満足したところで俺はギルドを後にした。

 俺は東方のギルド…いや、その土地柄に興味が惹かれていた。


()()()()()()()()、ねェ…」


 正直、和服と草履が欲しかった。

 この王都だと靴はブーツ系のものがほとんどだ。

 服もカッチリしたようなのばかり、俺が着てもいいと思えるのは今着てるようなただのTシャツくらい。


「やっぱり俺の心はどこまで行っても日本人なんだろうなァ…」


 そう言えばクズ野郎ことエンジは東の生まれだろ、間違いなく。

 刀持ってたし、名前も如何にもだしなァ…


「とりあえず不便はねェし、裸足でいいか。それより明日が楽しみで仕方ねェ、どんだけ強ぇヤツらがいるんだろうなァ…五大ギルドの一角ってんだ期待しちまうぜ。」


 俺はそう言いながら上機嫌に宿に戻った。

 そして酒瓶を()()()5()()()()()()()と、早々に寝入った。

 俺はワクワクしながら眠った、昔遠足前日に眠れなくなったあの頃を思い出した……まぁ今回は眠れたが。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり規格外だ(笑) いつも楽しく読ませて貰ってます、これからも頑張って下さい!
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