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第19話 強者の意地

俺は歓喜に打ち震えていた。

まさかあの時見逃したアリンコがカモになってネギ背負って来るたァなァ!!!


「ハッハハハハァ!!良いぜ!おめェ最高だぜェ!!!!」


「ふはははは!!死に物狂いで鍛えた甲斐があったというものよォ!!!!」


何度もぶつかり合いながらもお互いに笑みが消えることはない。

意識が飛びかけたが、ギリギリ気絶しなかった面々も呆気に取られこの戦いに魅入っている。


俺はエンジの大上段からの振り下ろしを魔力で覆った手で掴もうとする。

だが、掴んだと思ったらエンジが刃を引くと滑るように手から抜けた。


「あ!?」


その隙をエンジは見逃さなかった。

素早く納刀するとそのまま突っ込んでくる。


「ッ!?(コイツ!抜刀術か!!間に合わねェ!!)」


「【我流抜刀・炎刃】ッ!!」


エンジの刀は鯉口から火を噴き、それを刀に纏って俺に迫る。

俺は咄嗟に()()()()()()()()

エンジの凶刃が俺の首に迫る、だがその刃は振り抜かれることは無かった。


「何ィ!?!?」


「ヘッハハハハハ!」


俺は歯で刃を止めたのだ。

魔力纏衣で歯を覆い、咄嗟に刀に噛み付き文字通り食い止めた。

俺はそのままエンジを首の力で投げ飛ばした。

エンジは宙で身を翻し着地する。


「まったくデタラメな奴だな。」


「おめェも我流で抜刀術モノにするたァ大概だろうが。それにその刀…絡繰りか?」


「ほう…この刀の仕組みを見破れたのはお前が初めてだぜ。その通り、刀身には刃毀れする度に強靭に再生する"トゥースドラゴンの歯"を使い、(こじり)に油を無限生成する"火鉢ガマの胃袋"、鯉口には高速で擦ると火花を散らす"灼血砥石"が仕込まれている、この『絡繰り刀・炎獅子』は俺の故郷に祀られていた宝だ。」


「盗んだのか?」


「いいや、違う。故郷を焼き払い()()()のさ。」


「イカれてんなおめェ…」


「売ってしまおうとも思ったんだけどよ、こんな世界広しと言えどもコイツほどの逸品は早々お目にかかれねぇからな。それならいっそ俺が使おうと思ったわけよ。」


ベラベラと聞いてもねェ自分語りを話し続けるエンジ。

コイツは俺と似たヤツだと思った、仲間を心配する素振りは嘘じゃなかった。

ただ戦いに飢え、それしか知らぬ上での盗賊業だと思っていた。

だがどうやら…それは俺の勘違いだったみてェだなァ…

俺の怒りが沸々と湧き上がり爆発的な速度でエンジに向かっていく、そして再びぶつかり合う。

だが、炎を纏った刃とぶつかった俺の拳に切り傷が入った。

俺は咄嗟に後退する。


「…どうした?リューゴよ。」


エンジはニタニタと嫌な笑みを浮かべ俺を煽る。

ムカつく野郎だ…だがこれはまじィな…

俺の拳は縦にザックリ切り傷が入っていた。


「テメェ…その刀、ただ頑丈になるだけじゃねェな?」


「鋭いなぁ…お前は。そうだ、この刀はトゥースドラゴンの歯を使っているって言ったろ?トゥースドラゴンの歯は炎で熱することで更に鋭利で頑丈になるのさ。」


「チッ…」


道理で殴った感触がさっきと違ぇわけだ…

すると、またしてもエンジが自分語りを始めた。


「俺はよ、勝つのが好きなんだよ…殺しの次くらいにな?でもお前に負けてからど〜〜もツキが悪くてよぉ、だから絶対にお前だけは殺そうと決めてたんだよ。」


最初の義賊然とした雰囲気はもう何処にもない。

俺をここに誘い込むまでの演技ってわけか…


「俺はおめェみてぇな裏でチマチマ考えるヤツがはらわた煮えくり返るくれェには嫌いだァ…」


地の底から響くような声、だが自分の優勢は変わらないでかエンジは余裕の笑みを崩さない。


「だったどうするよぉ?俺の炎獅子はお前がどれだけ攻撃しようが無駄どころか強化させちまうぜぇ???」


「しゃらくせェ。」


先程以上の速度で俺が目の前に迫るとエンジは刀の刃でガードをする。

切断は出来ねぇが切り傷はできる、その上俺の拳の威力のカウンターだ効かないわけがない。

だが今の俺は頭に血が上っているからか痛みをまるで感じなかった。


「なんだよそれ…」


するとエンジが困惑の色を滲ませた声を出す。


「なんでもう傷が塞がってんだよ…!?」


俺はエンジの言葉を聞き自分の手を見る。

確かに…傷が塞がっている。


「次は俺の(ターン)だな。」


ムカつくぜ…あんな小細工だらけの刀に俺の1番信頼する(武器)が斬られただァ?

許せねェ…何より弱ぇ自分が許せねェ。

俺は拳に魔力を集中する。

どんどんと魔力を集めていくと、どういうわけか拳が変色を始める。

まるで金属のような蒼白い光沢のある黒色になっていく。


「な、なんだそりゃ…なんなんだよ…クソォ!!!!」


痺れを切らしたエンジが突っ込んでくる。


「【我流抜刀・焔】ぁぁあああ!!!!」


俺の目には全て見えていた。

エンジの動きも刀の軌道も、これが所謂ゾーンってやつなのか?

俺はエンジの刀を手で掴む。

エンジはニヤリと笑いすぐに刀を引こうとするが動かない。


「っ!?な、なんで!?!?」


「バカが…もう逃がさねェよ。」


俺は刀を握り潰し、砕き折る。

エンジは刀を折られたのを見て完全に顔が恐怖の色に染まる。


「ひぃ!?まま待て!冗談だって!!お前を殺すわけないだろ!?な!?俺が強くなるきっかけをくれたんだからよぉ!」


俺はエンジの胸倉を掴み上げて拳を握り込む。


「歯ァ…食いしばれや。」


そして、エンジを思い切り上に投げ飛ばす。


「うわあああああ!!?!?!!」


そして落ちてくるエンジに合わせて拳を振り抜いた。


「【神穿(かみうが)ち】…!!!!!」


エンジの胴のど真ん中に拳が炸裂すると、エンジの胴体は元から無かったかのように微塵も跡形なく吹き飛び、エンジの背中の方角にあった山にどデカい風穴が空いた。


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