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笑わない魔女は光の聖女に憧れる  作者: 悠里愁
第一章 聖女試験
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最初の授業

「こいつマジで何も考えてないんだよ!何だよ扉が爆発って!もっと焦ろ!」

「ああ、もう少し身の危険に注意した方がいいだろう」


ジュリのダメなところに花をさかせているのは、カルロとカレンだった。なんかこの二人、気があっているようで、いつの間にか仲良くなっていた。


今日はちゃんと起きて忘れ物もしていない、良い子のはずなのになぜか怒られていた。なぜ…。


「一時限目は座学だね?というかほとんど座学じゃない?」


ジュリは話を変えようと今日の時間割について、みんなに話してみる。笑顔で答えてくれたのはライだった。


「一年は基礎的な知識が足りませんからね、実践は全くないわけじゃないですが、二年になってからが多いようですよ」

「へー!私、勉強するって機会がなかったからちょっと楽しみだよ」

「なら、楽しそうな顔しろって言っただろ?だいぶマシになってるけど、変な顔になってるぞ」


変な顔って何!?


村から出て、今まで体験したことのない様な楽しい事が多くて、自分では沢山笑っているつもりだったけどそうでもなかったらしい。


「チビは笑った方が絶対可愛いんだろうから笑っとけよ」

「え?」

「ん?」


カレンとライが目を丸くしてカルロを見ると、なんだよと居心地悪そうに聞き返した。


「無自覚か?奴には思春期と言うものはないのか?」

「いや、彼だけ春が遅れてるだけかもしれませんよ」


ひそひそ話すふたりの傍らで、ジュリは笑顔トレーニングを手でぐにぐにやっていた。


最初の授業は主に歴史に関することを学ぶようだった。が。


どうしよう、私、字が読めない…


教科書を開いて、当たり前に進められても、口頭では限界がある。貴族の人達は、学院に入る前にある程度の一般教養は終えているようで、字の読み書きもできるようだった。


おろおろしていると、カルロが手を挙げた。


「すみません、まだ字をならってないので読めません」


一瞬ざわっとなった後に、くすくす笑い声がした。教師は、ああ平民がいるのかと言って、まず字を習うグループを別教室にわけることにしてくれた。他の者と同じ授業内容はまだ無理だろうという事だった。


ジュリとじゃあ僕もとなぜかライが挙手した。


「ごめんね、カルロ…」


多分ジュリがひとり文字が読めないので、付き合ってくれたのだ。彼は字が読める。


「別にお前の為じゃねーよ。俺も自己流で覚えただけでまともに習ってはないんだよ」

「僕も他国生活が長かったので、こちらに戻ってまだ日が浅いですから」


ライも字が読める事も、物の名前に詳しい事も、彼と買い物をしたので知っていた。一人で別授業だと、やっぱり心もとなかったと思うので、もう一度二人にありがとうと言っておいた。


「よろしくねぇ~」


文字を教えてくれる教師はかなり小柄な女性だった。学生と言われてもわからないくらいだ。


「えっ!?ガキ!?」


思った事を口にしてしまうカルロにびっくりして、ジュリは慌ててカルロの口を塞ぐ。


「ふふ若くみえる~?これでもレヴィンちゃんより年上なんだよ」


魔術師長はそこまで歳がいってるわけでもなさそうだったが、若いというわけでもなさそうな青年だった。師長よりも年上…!?


「魔術開発技術のミハエルです。すごいでしょ~テロメアを操作して若さを保ってるのよ」

「それは魔術で、ですか?魔術はそんな使い方もできるので?」


興味深げにライが質問すると、誰でもじゃないけどねとミハエルは笑った。


「普通の魔力の使い方は精霊の力を借りて、属性の力を引き出すんだけどね~魔術師は術式ってものも使えるの。これは授業で習うと思うよ~魔術の術式ってのは無限の可能性があって、例えば水と土の術式を組み合わせると命の属性ができるようにね」


それを応用して色々できるのと楽しそうにミハエルが言うと、ライは少し思案していた。ジュリは何を言っているかわからず、なんかすごいんだなという感想しかなかった。


「まあ、ひよっこはまず、基礎からだね~文字も書けないならお話にならない~。まずはエナからディオを目指してね」

「えな?」


ジュリが不思議そうに質問すると、ミハエルはバッジを指さした。そういえば、これ何なんだろう?カレンが普通につけてたし、ローザが指摘してたのを見ても案内書には書いてありそうだ。


「まあ、目に見える熟練度みたいなものだけどね~エナは今の君たちのような最初の状態で、種になってるでしょ~?」


確かに水晶の中に種が入ってるように見える。


「種、芽、葉、蕾、花と君たちの成長に従って変化していくのよ~」


ミハエルのバッジをみると、水晶の中に淡い花のような物が見えた。魔術師の階級みたいなものかな?


「実はもうひとつ上にミデンって変化があるんだけど、これはレヴィンちゃんしかいないのよね」


国一番の魔術師は他の魔術師より頭一つとびぬけている様だった。詳しく教えてくれたミハエルについでにもうひとつ聞いてみたい事があった。


「あの、じゃあこの懐中時計は何なんでしょうか?」


長針がなく、短針しかない謎の懐中時計だ。


「それは、個人の魔力量の総量をみるようなものかしら?」


魔力量は天性のもので増える事はないと言う。そして端的に調べる術が今の所ないので、個人個人に持たせて図るのだと言う。量が多い方が様々な大魔術を使えるが、少ないと使える魔術は限られるのだと言う。多いに越したことはないって事かな


「これってどうやって見るんですか?」


ジュリは1、カルロやライは2の数字を示している。多い方がいいの?少ない方がいいの?


「う~んとね、学んでいくうちに数字は増えていくし、増やさなければいけないんだけど、すぐに針が回ってはいけないっていうかね~」


ジュリ達はよくわからなくて???となった。


「針がひと回りするとそれがその人の魔力量の最大値って事なの~どんなに増やそうとしても、魔力量に関しては伸びしろがないって事になるのよ~。濁った水の中から見てると思って、思い浮かべてみて~魔術を学んでいくと、どんどん水の透明度は増してくる。そして、底が見えた時、その人の魔力の器の大きさがはっきりわかるってわけ~」


わかったような、わからないような…?


つまり、今のジュリはまだ何も学んでいない状態で、どれだけの速さで針が回るかも、魔力が増えるかもわからないって事だろうか?


「よしっじゃあ文字を覚えようね~」


ミハエルの授業は思いのほか、わかりやすかった。ジュリは初めて自分の名前を書くことができた。


授業が終わって戻る途中に、薄緑の髪の少女と会って睨まれた。この子にはかなり嫌われている気がする。通りすがりにジュリにこっそり話しかけてきた。


「貴方、あのお三方と知り合いだからって調子に乗らないで下さいね」


あの三人って誰?もしかしてアルスたちのことかな?


そういえば、この少女に初めて話しかけられたのもあの三人が寮に送ってくれた直後だった。


「カイル様もアルス様もちゃんと婚約者がいるのだから、貴方なんてお呼びじゃないのよ」


そういって、こちらを振り返りもせず通り過ぎて行った。


「婚約者?貴族って十二歳で婚約するの?」


近くにいるカルロやライに聞いてみると、まあ一般的だろと返ってきた。


「親が決めた階級同士の顔見世のようなものですけどね?在学中に別の方を見繕う方もいますし、結局仮のようなものです。本当に婚約するのは学院卒業後になるのが一般的です」

「詳しいな?」


カルロが関心していうと、ライは年の功ですと笑顔で返答をしていた。貴族は大変なんだなと思いながら、なぜそれが自分に関係あるのかなとジュリは不思議に思った。

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