第六話「リベンジマッチ」
俺は腰へ右手を移動させ、剣を抜き取った。
この剣はゼノさんが持っているいくつかの剣の中から、一番使いやすい物
を譲ってもらった。
彼女からはもらってばかりだ...、いつか、必ず恩返ししよう。
・・・あの時と同じだ、こいつは鼻息を荒げ、俺に襲い掛かる構えをとっている。
俺も剣を構え、目の前の敵だけを見て...殺気を飛ばした。
一瞬沈黙があった。
だが、次の瞬間...
「ガアアアアアルルアアッ‼」
咆哮とともに突っ込み、鋭い爪を振り下ろしてきた。
俺はその一撃を受け流し、足を軸に回り込み、カウンターを叩きこんだ、
確実に奴を倒した......はずだった。
「グルァァァァァッ‼」
態勢を立て直し、瞬時にくりだされたタックルによって、俺は吹き飛ばされた...。
おかしい...、斬った感触はあった。だが、奴の体には傷ひとつついていない...。
疑問が渦巻く中、あることに気づいた。
奴の体から黒いモヤのようなものが出ていたのだ。
なんだ...あれ...、あれは魔術の一種だろうか...。だが、魔物は魔力はあっても
魔術は使えないはずだ。魔術教本にも書いてあったし間違いない...。
ん?魔力?あ、そうか、『ガイア』か。
元から魔力に備わっているガイアなら、魔力をただ体の外に出すだけで発動することができる。
・・・・・どう戦えばいい......、さっきのカウンターを無傷でしのがれたということは...それだけ強力な力だといことだ...。
どうすれば...、わからない...。
このまま負けるのか...。
下を向いていると、声が聞こえた。たった一人の師匠の声が。
「なにを迷っている‼下を見るな‼目の前の、自分の敵を見ろ‼
相手が自分より上だとわかっても、がむしゃらに食らいつく、
それが今のお前にできることじゃないのか‼」
・・・ああ、そのとおりだ、うじうじしてた自分が情けねえ...。
背中を押されたからには、絶対に負けられない。
そして、俺は叫んだ。
「来いやッ‼クソ狼が‼」
すると、奴はまとっていたモヤを形作り、自分と同じ大きさの狼を二体作り出した。
これが奴のガイアなのだろう。
さっき無傷だったのも、俺が斬る瞬間、咄嗟に分身を作り、囮に使った、ということだ。この世界の魔物はこんなクソ強いのがゴロゴロいるのか?
二体は、両サイドから襲い掛かってきた。
俺は体をひねり、回転切りをくりだした。それに直撃した分身二体は粉々になり、本体へと戻っていった。
分身は一撃で崩れるらしい。
本体の狼は次々と分身を作り出した。
「グルラァッ‼」
と叫び、何匹も飛びついてくる。
「はぁぁぁぁ‼」
目をそむけるな‼常に自分の相手を見るんだ‼
自分に言い聞かせ、ひたすら剣を振り続けた。
「グルラァァァァァァァァッ‼」
突然、本体の狼が咆哮し、散らばった黒いモヤが奴の体を覆うように集まっていった。
そして、火事場の馬鹿力と言わんばかりに突進してきた。
でも、さっきより動きが鈍い、魔力が枯渇しているんだろう。
飛びついてきたと同時に右側に避け、
「はぁぁぁぁあ‼」
モヤの装甲ごと、こいつの体に刃を押し込んだ。
すると、モヤは消え、狼は絶命した...。
やっ......た。
俺は一気に力が抜け、その場に倒れこんだ。
しばらくして、ゼノさんが来た。
「お疲れ様、よくやったな。」
「はい、ありがとうございます」
彼女は微笑んでいる。
・・・・・てえてえ。
「それにしても、よく無傷で倒せたな。大きな怪我はないにせよ、
擦り傷は一つぐらいできると思っていたのだが...。」
確かに言われてみると、どこも痛くないし、傷一つないみたいだ。
タックルされた時の痛みもない...。
まあ、しばらくしたら痣ができるだろうけど...。
「まあ、なんにせよ。お前は自分の力で魔物を倒したんだ、祝杯をあげよう。
街に行って...」
・・・・・どうしたんだろう?狼の死体を見ているのか?
「・・・危ない‼」
ゼノさんが叫んだ直後に狼が起き上がり、俺の肩に嚙みついてきた。
「痛っ...た‼」
瞬時にゼノさんが剣を抜き、狼を斬り刻んだ。
「大丈夫か!?」
痛い...。
・・・あれ?痛みが引いていく...。
ゼノさんが治癒魔術を使ってくれたのか?
「・・・・・・・」
彼女は驚いた表情で俺を見ていた。
どうしたのだろうか......。
自分の傷口を見てみると、噛み切られた服の布や、飛び散った血が傷口に戻っていき、
最終的に、怪我をする前の状態に戻ってしまった......。
なんなんこれ?




