第五話「剣術と魔術」
「剣術と魔術を?何のために?」
・・・やっぱり、怪しまれてしまっただろうか...。
「冒険者になって一人でも生きていける実力を身に着けることと、旅をするための金を稼ぐためですかね...」
「旅...、さっき言っていたことか...」
これでダメだったらどうするか...。
とりあえず、町に行ってみて教えてくれそうな適当な冒険者に...。
「教えることは構わない。」
いいんかい。
「だが、私は人に教えるということに慣れていないし、教えたこともないぞ」
「それでも、お願いします」
・・・ちょっとずうずうし過ぎたか?
「・・・わかった、そこまで言うなら教よう。だが、一つ条件がある」
条...件...だと?なんだろう...一生私の奴隷になれとかだろうか…。
だったらどうしよう...。いや、白髪美人の下僕になれるのなら悪くない…。
「まだ先のことだろうが、もしお前が冒険者になるのだとしたら、私とパーティを組んではくれないだろうか」
・・・・・あ、そういう感じね。いや別に期待してたとかじゃないよ...。
うん、いやマジだって、ホントだって...。
しかし、パーティへのお誘いか...。
効率よく金を稼ぐのだとしたらありがたい話だ、うん...。
いや別に下心は......ぶっちゃけ少しある...。いや、しゃーなくない?
俺ってば思春期まっただ中の高校生やぞ...。下心あってもええやん...。
って今はそんなことはどうでもいいんだよ。
なんで俺なんかとパーティを組むんだ?
この先、俺が剣術と魔術をどこまで習得できるかはわからないが、彼女にとって、
今の俺は見慣れない服装をしたただのよそ者。
そんな奴とパーティだなんて...何が目的なんだろう...。
・・・・・深く考えすぎか、パーティを組んでみたいっていう単純な頼みなのかもしれない。
「もちろん、俺からもお願いします」
「ありがとう、こちらこそよろしく」
こうして、ゼノコーポレーションとミナミコーポレーションの契約が成立した...。
_____
一年後
この一年間、ゼノさんは朝に剣術、夜に魔術を教えてくれた。
「もっと、両腕にバランスよく力をいれろ‼」
剣術は朝早くに起きて朝食を食べ、基礎トレやランニングをしてから、こうして俺に指導してくれたり、木刀で打ち合いの練習をしてくれる。とてもありがたい。
しばらく俺の特訓に付き合ってくれた後、
ゼノさんはフード付きの黒いマントを羽織り、冒険者ギルドの依頼を受けに町へ行く。これが日課になっていた。
魔術は、ゼノさんが町から魔術についての教科書のようなものを買ってきてくれた。
いわゆる魔術教本だ。
基本的にこの本に書かれていることを参考に練習している。
ゼノさんは魔術を感覚的に使っているみたいで、あまり教えられないらしい。
たまにアドバイスをくれる程度だ、それだけでも充分ありがたい。
剣術のほうは進歩してきていると思う。
問題なのは魔術だ。
まずは基本中の基本、魔力をコントロールする練習から始めたのだが、これがうまくいかない。体内の魔力は感じ取れるようになってきた。だが、魔力を体の外に出すという作業がまったくできないのだ。
ゼノさんが言うには、生まれた時から魔力をまったく使ってこなかったせいで、
本能的に体が魔力の入り口に鍵をかけてしまったとのことだ。
一種の障害のようなものらしい。
治療方法は二つ。
・一つ目は体内から魔力を押し出し、無理やり入り口をこじ開ける。
だだ、体が反動で耐えられない可能性があるらしい。
・二つ目はここらにはないが、教会にあるグリモア、つまり、魔導書を使用し、
新しい魔力の通り道を作って...。
まあ、ようは魔導書で魔術を使って、魔力の操作に慣れてきたら、
魔導書卒業という流れらしい。
うーむ...、どちらも時間がかかるな。
・・・・・そういえば、俺のガイアってなんなんだろう?
それも魔力がコントロールできるようになるまでわからないよな・・・・。
なんにせよ、魔術はまだ先のようだ...。
クソ、魔術、使ってみてえなあ。まあ、でも、今は剣術をメインにするしかないか...。
ある日の朝、剣術の練習を始めるとき、ゼノさんがある提案をした。
「そろそろ魔物を討伐してみるか」
・・・・・つ、ついにきた。だが、俺に倒せるのだろうか・・・・・。
いざやるとなると、ここに来た時のトラウマが...。うっ、頭が......。
「そんなに緊張しなくていい、なんでも慣れだ」
そうだよ...な、うん、いつまでもおどおどしているわけにもいかない。
「はい、やります、魔物の討伐。」
そして、俺とゼノさんは森の奥へ進み、一匹の魔物を見つけた・・・。
狼だ...。
「あいつは...ゲルクだな。素早い動きで襲ってくる狼の一種だ」
ああ、知ってる。最初に追い掛け回されたからな。
「あいつと戦ってみよう。あの狼に思うところもあるだろうが、できそうか?」
「・・・はい、やってみます」
トラウマは早めに克服した方がいい、そうじゃないとずっと引きずることになる。
「私は遠くから見ている。もしダメそうなら、私も手伝おう。
さあ、行ってこいミナミ」
そうして俺は背中をおされた。
「はい、いってきます。」
俺は初めて、正真正銘の敵と戦う。もう怖がってる場合じゃない。
俺は、この世界で生きるために、仲間を見つけるために『たたかう』。
そして、俺は最初の敵の前に立った。
「よし、リベンジマッチだ‼」




