第十四話「砂漠地帯の旅」
「はぁ!」
ギラギラと輝く太陽の下で一人の冒険者が舞い、飛びかかるモンスター達を研ぎ澄まされた剣技で倒す、なんとも美しい光景だ。
その冒険者に続き、俺も加勢する。
手のひらに傷をつけ、中二病全開の詠唱を始めた。
「広大な大地より生み出されし赤き力よ、我が願いに応じ、顕現せよ!」
「『炎豪』!」
中級炎魔術を魔物めがけ放った。
炎が直撃した魔物達は絶命した。
「援護が遅れてすみません」
「いや、助かった。荷車に戻って、昼飯にしよう」
_______
あの街を出発して一週間が経過した。
今現在、目的地のコエダ村までの道のりの砂漠地帯を横断中だ。
予定通りに進むことができれば、三週間程度でつくはずだ。
・・・このクッソ暑い生活といち早くお別れしたところだ...。
今は道中見つけた洞穴で、さっき討伐した蛇型の魔物の肉を焼いている。
砂漠地帯には食べることができる魔物が多く生息しているとのことだったので、
食料はあまり買わなかった。
「焼けたぞ」
「ありがとうございます」
砂漠に生息している魔物を討伐し、その肉を食べる。漫画好きの男なら
一度は夢見る瞬間だ。
ほな、いただきましょうか。
がぶっと噛みつくと同時に、口いっぱいに苦みと塩味のハーモニーが
広がっていく...いつもの魔物の味だ。
・・・はぁ、ホントに不味い、いやホンっとに不味いのよ...お世辞にも美味いとはいいがたい味なのよ。
「この味には馴れないな...」
「ですね...まあ、我慢するしかありません」
と言っても不味いので、水で一気に流し込んだ。
コエダ村に行く途中にも村があるみたいだし、そこならまともな飯も食えるはず、
それまで我慢だな。
「さて、行くか」
昼飯を済ませたので、出発だ。
_______
「・・・あれは」
進行方向の先から、仲間であろう二人を担ぎながらこっちに向かってくる青年がいた。
「おっ、お願いします!助けてください!」
青年が叫ぶと同時に、彼らの後ろの地面から大蛇が飛び出し、彼ら飛びかかった。
「ミナミ!」
「『火球撃』!」
ゼノさんに言われると同時に、彼らに襲い掛かる大蛇めがけて、
初級炎魔術を放った。
「乗れ!」
「は、はい!」
彼らを荷車に乗せ、進行方向を変え、来た道を戻った。
マズい...ピッタリ後ろをついてきてる。
このままだと追いつかれる。
「ゼノさん、運転頼みます」
「わかった!」
俺は荷車の入り口に行き、詠唱を開始した。
「広大な大地より生み出されし赤き力よ、我が願いに応じ、顕現せよ!」
「『炎豪』!」
奴めがけて中級炎魔術を放った。
奴の体が燃え、発狂しながらこちらに近づいてくる。
どんだけ執念深いんだ...。
そんなメンヘラ蛇に育てた覚えはありません!
・・・こうなったら、あれをやるしかない
荷物の中からあるものを取り出し、奴に投げた。
「『火球撃』!」
投げると同時に初級炎魔術を放ち、着弾と同時に爆発が起こった。
「キュラアァァァ!」
爆破に巻き込まれた後、見失ったのか、
奴は追いかけてこなかった。
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さっき投げつけたものは、街で購入した『ブロマイト』という熱を加えることで
爆発する鉱石だ。
かなり高価だったので手持ちは少ない。
いざというときの秘密兵器だ。
「ありがとうございます、助けていただいた上に治療まで」
今は、さっき昼飯を食べた洞穴まで撤退し、休憩している。
彼の仲間二人は、俺のガイアで治療した。
これで今日は魔術は使えないだろう、明日の昼ぐらいまでには回復するはずだ。
「礼には及ばない。それより、何があった?」
ゼノさんは、街にいたときと同様、黒いフード付きのマントを羽織り、
彼らに顔を見られないようにしている。
「僕らはこの先にあるクラムの村に住んでいる冒険者です。
今朝、調査依頼のクエストを受けて、
例の場所に行ったら、あの魔物に襲われたんです。
今まであの場所にあんな魔物いなかったのに」
なるほど、ヤバいな。
あのクソでか大蛇が居たら、そのクラムの村にも行けない。
行けないということはうまい飯が食える可能性が減る...。
何より、先へ進めない。死活問題だ。なんとか作戦を考えないと...。