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第十二話「失敗の後にするべきこと」

倒せた...


強すぎだろ...、もう魔力がすっからかんだ...体に力が入らねぇ...。

・・・ゼノさん、大丈夫だろうか?

おっ、おっさん集団が呼びかけてくれてる...。

朝とは大違いだな...まあ、こんなに波乱万丈な目にあったんだ...

少しくらい人が良くなってもおかしくはないか...

ああ...意識が薄れる...。


そこで俺の意識は途切れた


____



...なんだ?いつもの干し草のゴワゴワした寝心地じゃない...。

これはまさか!

目を開けると、中々な感触のベッドの上で俺は寝転がっていた。

ああ...ベッド君...久しぶり...。


ベッド君との再会を喜びたいところだが...ここ、どこ?

・・・机や椅子にベッドがあるということは街の宿だろうか?

リザードマンを倒したところから記憶がない...、

おっさん集団がここまで運んでくれたのだろうか?


混乱していると、あることに気づいた。

俺のベッドから少しだけ間隔をあけて設置してあるもう一つのベッドに、

我らが天使が眠っているということにだ...。


・・・・・・ほほう、なるほどなるほど。

これはあれか...俺の疲労を吹き飛ばせという神からのメッセージなのだろうか。


・・・いかんいかん、真摯な心を忘れるな俺!

...っていうか寝てるみたいだけど、大丈夫だろうか?

不安になっていると、机の上に手紙のようなものが置いてあることに気づいたので、内容を確認した。


『 冒険者へ


 魔物から守ってくれたことは一応礼を言っておく、


 だが、お前みたいな坊主にかりを作るつもりはねぇ、


 リザードマンの換金で出た金はお前にやる。


 これで貸し借りはなしだ。


 宿代は自分で払え。

                         』


とのことだ。

・・・なんか、中途半端に捻くれてるな...。

まあ、宿まで運んでくれたのは感謝しておこう、そして、おそらく今度からすがすがしい朝に

カツアゲされることはなくなるということに安堵しておこう...。


・・・しかし、ゼノさんは大丈夫だろうか、一応包帯で治療はしてあるみたいだが、毒が心配だ...意識もまだ戻ってないみたいだし...。


・・・まだ完全復活ってわけじゃないけど、やってみるか。


俺は指を噛み、小さな傷を作り、彼女にガイアを発動させた。

これで目を覚ましてくれるといいんだが...どうだ。


「・・・ん」

やった!...我らの天使がお戻りになられた。

「ゼノさん、おはようございます」


「・・・・・・っ!」

ゼノさんはすぐに、寝起きの顔からショックを受けた顔になった。


「そうか...私は...負けたのか...

・・・すまなかった...お前を危険な場所に連れて行ってしまった挙げ句、冷静に戦うこともできなかった...。本当にすまなかった...」


「・・・ゼノさん、俺は別に迷惑だなんて思っていませんよ、

それに、ゼノさんがリザードマンを引きつけてくれなきゃ、今頃おっさん集団は

土の中です。

ゼノさんは、人を助けたっていう立派な行動をしたんです。

むしろ、誇りを持ってもいいと、俺は思いますが...」


「・・・そう言ってくれるとありがたい、だが...」

「次に生かせばいいんですよ、

さあ、討伐金でぱぁーと飲み食いしましょう!」


「・・・・・・そうだな」


ゼノさんは確かに失敗したのかもしれない、でも、失敗しない人間なんていない、

誰でも失敗から成長していく、そういうもんだ。

俺が言えた口じゃないが...。


・・・まあいいや、とりあえず食いまくるぞ!



その後、ヤケ酒をした我らが天使に酒を飲まされ、俺の一日は幕を閉じた。



____



俺は、宿に泊まった翌日、いつもの森の家に帰ってきた後、二日酔いの頭をなんとか起こし、昨日できなかった分の魔術の特訓を始めた。


そろそろ中級魔術に挑戦してみようと思う。


この前のリザードマン戦で、初級魔術を使いながらの戦闘はできた。

今度はレベルを上げて、四段階のうちの二段階目の中級魔術だ。


中級魔術からは初級魔術と違い、詠唱が必要になるものが

多くなってくる。

今の所は、火、水、風の三種類を伸ばしていこうと思う。

・・・この三種類しか使えなかったというのは内緒だ。


魔力総量はこの半年で徐々に増えてきているようだし、魔力の消費量は

あまり気にしなくてもいいだろう。


森の中だし、とりあえず風からやってみよう。

手のひらに傷を作り、詠唱を唱えた。


「広大な大地より生み出されし疾風よ、我が願いに応じ、顕現せよ!

 『風魔刃(ゲノガイラ)』!」


詠唱を言い終わると同時に、傷口から溢れ出ている魔力が、強力な疾風となり

目の前に放出され、あまりの勢いに俺自身が吹き飛ばされてしまい、

後ろにあった木に激突した...。


いってぇ!勢い強すぎだろ!


これは練習が必要だな、自分が吹き飛ばされないように踏みとどまれるようにしないと...。

・・・しかし、中級魔術でもこんな威力なのに、さらに上に、上級と絶級があることに驚きだ...。

全部習得するのに何年かかることやら...。

っていうか、今の一発撃っただけで二割くらい魔力消費したんだが...。

詠唱とこの魔力消費、ガイアの使用も考えると...戦闘で使う場面は選ばないとな...。


まあ、今後も魔力総量が増える見込みはあるし、いつかは連射できるように

なるかもしれない。


・・・しかし、この厨二病全開の詠唱をいちいち唱えなきゃいけないとは...

なんとも複雑な気持ちだ...。


「ミナミ!そろそろ鍛錬を始めよう!」

おっと、我らが師匠がお呼びだ。

「はい」


ゼノさんは、いつもより早く起き、剣術の練習をしていた。

昨日は死ぬほど飲んだのにすごい元気だ。


「今日から、もっとハードな練習をしようと思う、

 もう負けないためにな...。」


おっふ...ゼノさんが燃えている...。


「一緒に付き合ってくれるか?」


「もちろん!」


さっすが我らが姉さん!どこまでもついていくっす!


_____



そして、三時間の鍛錬が終わった。

いやー...かなりキツイ、以前よりスパルタだ...。

俺の師匠がゴリゴリのおっさんだったら、とっくに心が折れていただろう。


だが、そんな世界は存在しない!

俺の師匠はゼノさんだ。

彼女の鞭なら喜んで受けよう、なんか変態みたいだが...。


まあいいや、旅に出るまで、とことん彼女にしごかれることにしよう。


あっ、別に俺エムじゃないからね、勘違いしちゃダメよそこの君。

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